葉酸の効果について正確に知り、生活に生かしたいと思いではないでしょうか?
葉酸は、ビタミンの一つで、健康の維持のために必要不可欠な栄養素です。そのため積極的に摂取してほしく思います。特に、妊婦さんや妊娠を考えている方は、赤ちゃんの生まれつきの病気を予防するため、是非摂取すべき栄養素です。
しかし、一部の健康食品やサプリでは、まったくの根拠のないものをあたかも効果があるように宣伝しています。
この記事では、正しく葉酸を利用してもらうために、葉酸の医学的な根拠のある効果と、効果的な活用法について説明しました。
葉酸の効果と利用法を正しく知り、健康を維持するために葉酸を利用しましょう!
1.葉酸の効果
葉酸の効果について、私たち医大生で100以上の医学研究を調査しました。その結果わかった、葉酸の効果をわかりやすく説明していきます。
- 赤ちゃんの生まれつきの病気(神経管閉鎖障害)のリスクを下げる
- 葉酸欠乏症の予防と治療
- 葉酸不足が原因の貧血の予防と治療(巨赤芽球性貧血)
- 高ホモシステイン血症の治療
これ以外の効果に関しても調査しましたが、医学的な根拠がありませんでした。よく勘違いされることとしては、赤ちゃんの発育に良い、頭の良い子が生まれるなどあります。それらについては5.効果のない葉酸の効果で詳しく説明しています。
それぞれの効果について詳しく見ていきましょう!
1-1.赤ちゃんの生まれつきの病気(神経管閉鎖障害)のリスクを下げる
葉酸が不足すると、赤ちゃんで生まれつきの病気(神経管閉鎖障害)の発生の危険性が上がることが医学研究によりわかっています。
そのため、厚生労働省により、妊婦や妊娠を考えている女性では葉酸を摂取することが強く推奨されています。2)
具体的な葉酸の活用法については2-1.目的別の葉酸の利用法を参考にしてください
神経管閉鎖障害とは
神経管が閉鎖する過程で生じる異常を総称して、神経管閉鎖障害と呼びます。
種類は様々なものがありますが、代表的なものの症状には下半身の麻痺や感覚障害、膀胱や直腸の障害、足の変形などが挙げられます。
葉酸不足以外の原因もあるため、葉酸を摂取することで神経管閉鎖障害にならないわけではありません。しかし、葉酸を摂取しておくことで神経管閉鎖障害のリスクを70%低減することができることが報告されています。
神経管閉鎖症の予防に関する研究
神経管閉鎖症と葉酸の関係を調べた2つのRCT研究により、葉酸を摂取することが胎児神経管閉鎖障害の予防に役立つことが明らかになっています。3) 4)
一方の研究は、1817名の神経管閉鎖症のハイリスクの女性を4グループ(葉酸+その他のビタミン、葉酸のみ、そのほかのビタミンのみ、どちらもなし)に分け、経過を観察しました。その結果、葉酸を摂取すると72%で予防効果が見られました。
神経管閉鎖症の予防のメカニズム
葉酸が神経管閉鎖症を予防することについて、作用機序は明らかになっていません。
葉酸の代謝物がタンパク質の合成に関わる成分の合成酵素として働いていること、葉酸が細胞増殖能に必要なDNAの生合成に必須であることが考えられています。
1-2.葉酸欠乏症の予防と治療
葉酸の健康効果として、いちばん代表的なものが葉酸欠乏症の予防と治療です。
葉酸不足が引き起こす症状
などが症状として起こります。貧血については1-2.葉酸不足が原因の貧血で詳しく解説しています。
症状で葉酸不足を判断するのは、ほぼ不可能です。葉酸が不足しやすいかどうかチェックするのが良いでしょう。次の項目で葉酸が不足しやすい人について解説しています。
葉酸が不足しやすい人
普通に食事を摂取している人では、葉酸が不足する事はまずありません。不足しやすい人は以下のような人です。
- 妊娠・授乳中の女性
- アルコール依存症
- 病気(セリアック病、熱帯性下痢、吸収不良症候群)
- 腎臓透析中の患者
- 薬(フェニトイン、プリミドン、バルビタール酸塩、葉酸代謝拮抗薬、抗痙攣薬)
1-3.葉酸不足が原因の貧血(巨赤芽球性貧血)の予防と治療
葉酸は赤血球を形づくるのを助ける栄養素です。
葉酸不足が原因の貧血に対しては、葉酸をしっかりと摂取することで貧血を予防、治療できることが研究により明らかになっています。
ただし、葉酸不足が原因の貧血は少ないため、葉酸の摂取では一部の貧血しか予防できないことは押さえておきましょう。
葉酸不足が原因の貧血は割合的には少ない
葉酸不足が原因の貧血は非常に少ないです。
葉酸の健康食品には、貧血の予防と書いてあるものが数多くあります。しかし、葉酸の摂取だけでは一部の貧血しか予防できないということをしっかりと知っておきましょう。
貧血そのものの予防をしたい方は2-1.目的別の利用法を参考にしてください。
貧血の予防に関する研究
思春期の女性15万人を対象に行った大規模な調査により、葉酸と鉄のサプリメントを摂取することで貧血を予防できるということがわかっています。1)
研究によると、鉄と葉酸のタブレットを毎週1回4年間継続させて摂取させた結果、ヘモグロビン値と貧血の有病率が73.3%から25.4%に低下しました。
1-4.高ホモシステイン血症の治療
葉酸を摂取することで、高ホモシステイン血症の患者で血中のホモシステイン値が低下することがわかっています。
高ホモシステイン血症における研究
高ホモシステイン血症の患者100人において、血中ホモシステイン濃度が減少することがRCT研究により報告されています。5)
研究によると、葉酸0.65mg/日を6週間摂取させた結果、41.7%で血中ホモシステイン濃度が低下しました。
ホモシステイン値の低下により動脈硬化の予防という誤解
高ホモシステイン血症と動脈硬化が関係しているため、葉酸を利用すれば動脈硬化の予防になるという誤解が広まっています。
葉酸には、動脈硬化を予防するという根拠はありません。
というのも、健康な人でホモシステイン値が下がるという研究がないためです。あくまで、高ホモシステイン状態の人でホモシステイン値が下がるということしかわかっていません。
健康な人では、動脈硬化を予防するということについては飛躍しすぎのように思います。
1-5.ガンの予防について
癌の予防に効果があるということが一部でいわれています。
大腸がんの予防については、効果があるという研究と効果がない研究の両方の研究があります。しかし、そのほかのガンの予防については効果があるとは言えない状態です。
大腸がんの予防
大腸ガンの予防に関して、1つのメタアナリシスで葉酸の摂取量が多いと結腸直腸がんのリスクを低下させることが報告されています。6)
しかし、大腸ガンの予防に効果がなかったというメタアナリシスが2件7) 8)、3年以上の葉酸サプリの摂取で大腸腺腫の発症リスクが上昇したというメタアナリシスが1件9)見つかった。
大腸ガンの研究に関しては両方ありますが、効果がなかったという研究の方が多いことを踏まえると、私の意見としては、大腸がんの予防には効果がないかと思います。
その他のガン
その他のガンの予防については効果がなかったというメタアナリシスが6件見つかった。8) 10) 11) 12) 13)
1-6.葉酸の効果まとめ
効果あり |
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効果の有無について両方の研究がある |
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科学的な根拠がない |
|
2.葉酸の正しい活用法
健康を維持するために必要な葉酸ですが、正しい活用法をしっかりと実践している方は驚くほど少ないです。
この項目で葉酸の正しい利用法を知り、生活に効果的に取り入れましょう!
2-1.目的別の利用法
目的 | 活用法 |
---|---|
葉酸不足を回避し、健康を維持する |
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貧血を予防する |
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健康な赤ちゃんを産む |
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高ホモシステイン血症の治療 |
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葉酸不足の回避
まずは食生活から改善するのが最善です。葉酸を多く含む食事については3-1.食事で葉酸を効率よく摂取するコツで説明していますので、そちらを参考にしてください。
どうしても偏ってしまいがちの場合に、サプリメントを利用するようにしましょう。
葉酸のサプリメントを利用する場合は必ず「栄養機能食品」の表示があるものを選びましょう。
というのも、「栄養機能食品」の表示がある商品では、1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が、国が定めた上・下限値の規格基準に適合している必要があります。そのため、表示のないものに比べ安全性が高いです。
オススメとしては小林製薬の栄養補助食品 葉酸
貧血の予防
貧血の8割以上は鉄の不足による貧血です。また、葉酸不足が関わる巨赤芽球性貧血にはビタミンB12の不足も原因の一つです。
貧血を予防する目的ならば、葉酸だけでなく、鉄・ビタミンB12といった成分も摂取できるように食事を工夫したり、サプリメントを摂取するのが良いでしょう。
サプリメントでは小林製薬の栄養補助食品 ヘム鉄 葉酸 ビタミンB12
健康な赤ちゃんを産む
赤ちゃんの健康を守るためにも、妊婦さんや妊娠を考えている女性では、食事から480μg/日の葉酸を積極的に摂取しましょう。
サプリメントでの摂取は最終手段です。安全性がまだ明らかになっていないためです。
基本的には食事の充実、足りない場合には葉酸の加工食品で摂取すべきです。どうしても足りない場合に、医師や栄養士と相談のうえでサプリメントを利用するというのが良いでしょう。
詳しくは妊娠中の葉酸サプリに要注意!思わぬ副作用の危険性がありますの記事を参考にしてください。
3-1.食事で葉酸を効率よく摂取するコツで、多く含む食品や効果的な調理法を解説しています。妊婦さんや妊娠を考えている女性の方は是非参考にしてください。
厚生労働省によると、葉酸を積極的に摂取するべき時期は妊娠の1ヶ月前から妊娠3ヶ月までといわれています。お母さんはこの時期を目安に葉酸を摂取しましょう!
高ホモシステイン血症の治療
高ホモシステイン血症の人が、自分の判断で葉酸のサプリ等を利用するのはやめた方が良いです。
薬との相互作用などにより、薬の効果を強めたり、逆に弱めたりする可能性があります。その結果、病気が悪化する可能性があります。
高ホモシステイン血症の方が、葉酸のサプリメント等を利用する場合は、必ず医師の判断のもと、利用するか決定しましょう。
2-2.葉酸の摂取量の目安
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年度)」によると、
- 18歳以上の男女で200μg/日
- 妊婦での推奨量は480μg/日
- 授乳婦の推奨量は340μg/日
です。コレを目安に摂取しましょう。
3.具体的な葉酸の摂取方法
3-1.食事で葉酸を効率よく摂取するコツ
食事から葉酸を効率よく摂取するために、多く含む食材と葉酸を効果的に摂取する調理法について押さえておきましょう!
葉酸を多く含む食事
野菜 | 肉・魚 | ||
---|---|---|---|
食品名 | 葉酸(μg/100g) | 食品名 | 葉酸(μg/100g) |
枝豆 | 260 | 鶏レバー | 1300 |
あさつき | 200 | 牛レバー | 1000 |
アスパラガス | 180 | 豚レバー | 810 |
ブロッコリー | 120 | うなぎ きも | 380 |
ほうれん草 | 110 | うに | 360 |
オクラ | 110 | フォアグラ | 220 |
しゅんぎく | 100 | いくら | 100 |
具体的なメニューについては、国立栄養研究所のビタミンを多く含むメニュー紹介の葉酸の項を参考にしてみるとよいでしょう。
葉酸を効果的に摂取する調理法
葉酸は、調理法によっては食物の中から大部分が失われてしまいます。
コロンビア大学の研究者によると10分間野菜を強火で煮た結果、失われる葉酸の量はブロッコリーの69%、ほうれん草の65%、キャベツの57%、アスパラガスの22%という報告がされています。
具体的な調理法
- ステンレス製の多層構造鍋を用いて調理する
- 自家製の野菜ジュースの作成
といった工夫をすることで、葉酸を失うことなく効果的に摂取できます。
市販の野菜ジュースでは多くの栄養素が失われています。市販の野菜ジュースに含まれる葉酸は、平均するとだいたい40μgほどです。ブロッコリー100gで葉酸120μgであるため、それをもとに自家製ジュースを作った方が遥かに効率的に葉酸を摂取できるのでお勧めです。
3-2.サプリメントの選び方と具体的なサプリメント
葉酸のサプリメントを選ぶ際には栄養機能表示がされている商品を選びましょう。
というのも、栄養機能表示がされている商品の方が安全に利用できるからです。
栄養機能表示とは
1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が、国が定めた上限・下限値の規格基準に適合している場合のみ、その栄養成分の機能が表示できます。
そのため、製品の用量・用法を守れば、過剰摂取による副作用の可能性を減らすことができます。
具体的な葉酸のサプリメント
葉酸不足にならないため・日々の健康維持を目的とする場合
葉酸の栄養機能表示のある商品はいくつかあります。はっきりと言ってしまえば、栄養補給目的ですので、栄養機能表示のある商品ならどの商品でも大差はないというのが私の意見です。
個人的な意見としては「小林製薬の栄養補助食品 葉酸
貧血を予防したい場合
貧血を予防する場合は「小林製薬の栄養補助食品 ヘム鉄 葉酸 ビタミンB12
鉄と葉酸などの栄養機能食品は数多くありますが、ビタミンB12も含んでいる商品は非常に少ないです。
ビタミンB12の不足も貧血の原因として葉酸不足と同じくらいの頻度で見られるます。そのことを考えると、貧血の予防のためにはビタミンb12も入っている栄養機能食品が良いでしょう。
サプリメントは医薬品と異なり、治療には適していません。健康の維持・増進のためのものです。葉酸欠乏症、巨赤芽球性貧血になってしまった場合には、必ず医師に医薬品を処方してもらい、治療してもらいましょう。
4.副作用について
推奨量(200~480μg/日)の摂取ならほとんどの人で安全です。
しかし、医師の指示なく480μg/日使用してはいけません。というのも、高容量の葉酸では副作用の危険性が考えられているからです。
葉酸の過剰摂取による副作用
葉酸の過剰摂取はさまざまな副作用が現れることが考えられています。代表的なものとしては下痢、発疹、気管支痙攣、喘息、睡眠障害、胸やけなどです。
特に長期間過剰摂取すると命にかかわる病気の危険性が上がることが指摘されています。
一部の研究では、800~1200μgの葉酸を摂取すると、心臓発作のリスクを高める可能性が示されています。また、他の研究では葉酸の過剰により肺がん、前立腺がんのリスク上昇が示唆されています。14)
5.根拠がない葉酸の効果
- 心臓病の予防
- 母乳の出を良くする
- 動脈硬化の予防
- 不妊症
- 子供の成長促進
- 大腸がん以外のガンの予防
これらの効果については科学的な根拠が十分ではありません。これらを目的に葉酸を摂取するのはやめましょう。
魅力的な言葉で効果があるように謳っている健康食品やサプリメントもありますが、ほぼ効果がないと考えた方が良いでしょう。
6.まとめ
これまで葉酸の効果と活用法を説明してきました。意外と一般に正しく知られていないものがほとんどだったのではないかと思います。
正しく効果と活用法を理解し、しっかりと健康維持のために活用しましょう!
- 葉酸欠乏症の予防⇒食事・健康食品から200μg/日の葉酸を積極的に摂取する
- 貧血の予防⇒鉄・葉酸・ビタミンB12を積極的に食事や健康食品で摂取する
- 赤ちゃんの病気(神経管閉鎖障害)のリスク低減⇒480μg/日を食事で葉酸を摂取する
- 高ホモシステイン血症の治療⇒必ず医師の判断のもと治療を受ける(葉酸サプリなどで治そうとしない)
- 葉酸欠乏症・貧血の治療⇒必ず医師の判断のもと治療を受ける(葉酸サプリなどで治そうとしない)
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参考文献
- 1)Weekly iron and folic acid supplementation with counseling reduces anemia in adolescent girls: a large-scale effectiveness study in Uttar Pradesh, India.
- 2)神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について
- 3)Double-blind randomised controlled trial of folate treatment before conception to prevent recurrence of neural-tube defects.
- 4)Prevention of neural tube defects: results of the Medical Research Council Vitamin Study. MRC Vitamin Study Research Group.
- 5)Vitamin requirements for the treatment of hyperhomocysteinemia in humans.
- 6)Dietary supplement use and colorectal cancer risk: a systematic review and meta-analyses of prospective cohort studies.
- 7)Folic acid supplementation for the prevention of recurrence of colorectal adenomas: metaanalysis of interventional trials.
- 8)Folic acid supplementation and cancer risk: a meta-analysis of randomized controlled trials.
- 9)Folic acid supplementation and colorectal cancer risk: a meta-analysis.
- 10)Folate and risk of breast cancer: a meta-analysis.
- 11)Folate intake and the risk of prostate cancer: a systematic review and meta-analysis.
- 12)Meta-analysis of cancer risk in folic acid supplementation trials.
- 13)Effects of folic acid supplementation on overall and site-specific cancer incidence during the randomised trials: meta-analyses of data on 50,000 individuals.
- 14)ナチュラルメディシン・データベース