タウリンにどのような効果があるのか疑問をお持ちではないでしょうか。
タウリンは、エナジードリンクやサプリメントで利用され、疲労回復や脂肪肝に良いなどとして様々な効果が一般に知られています。
しかし、医学書や医学論文をもとにタウリンの効果について調べると、多くの人に知られている効果はどれも医学的に根拠のないことが明らかになりました。
タウリンの効果について正しい情報を知り、不必要なものにお金を使ってしまわないようにしましょう。
1.タウリンの医学的根拠に基づく効果
医学書・医学論文をもとに、タウリンの効果について調べた結果を表としてまとめました。
効果の可能性がある |
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科学的な根拠がほとんどない |
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上のように、一般に知られているタウリンの効果のほとんどは科学的な根拠が見られませんでした。科学的な根拠がなかったものについては4.科学的根拠のほとんどないタウリンの効果でまとめています。興味がある方はそちらからご覧ください。
それぞれの効果について簡潔に見ていきましょう。
1-1.うっ血性心不全
うっ血性心不全に対してはRCTという信頼性の高い研究で、効果が明らかにされています。1)ただし、なぜタウリンが効果を発揮するのかについてははっきりとわかっていません。
うっ血性心不全に関する研究
実験者 | うっ血性心不全の患者14名 |
実験種別 | ランダム化比較試験(RCT) |
実験方法 | 従来の治療法に加え、4週間タウリンを添加した |
実験結果 | 患者全体の治療応答はp<0.05で、プラセボよりもタウリンを添加したほうが治療結果が良かった |
特に医薬品として用いられます。そのため、うっ血性心不全の改善を目的とする場合はサプリなどで自分の判断で利用するのではなく、必ず医師と相談するようにしましょう。
1-2.高ビリルビン血症での肝機能改善
65名の高ビリルビン血症の患者で肝機能が改善されることがRCTという信頼性の高い研究により明らかになっています。2)
高ビリルビン血症での肝機能改善に関する研究
実験参加者 | 血清ビリルビン5mg/dL以上の急性肝炎65名 |
実験種別 | ランダム化比較試験(RCT) |
実験結果 | 肝機能改善度「改善」が49例、「軽度改善」は全員で見られた。 AST、ALTの改善が見られた。 |
特に医薬品として用いられます。そのため、肝炎などの改善を目的とする場合は、サプリなどで自分の判断で利用しないでください。必ず医師と相談するようにしましょう。
健康な方での肝臓の機能を改善するものではありません。
2.タウリンの正しい活用法
タウリンの効果や体の中での役割を考えると、タウリンの活用法のポイントは3つあります。
- 「うっ血性心不全」「高ビリルビン血症で肝機能の改善」を目的とする場合は、医師との相談の上で利用する
- それ以外の効果を目的とする場合は、科学的根拠がないためサプリや健康食品を利用しないほうが良い
- どうしても頼ってみたい場合は食事からタウリンを摂取する
2-1.病気の治療目的の場合は必ず医師と相談する
「うっ血性心不全」や「高ビリルビン血症での肝機能改善」といった、病気を治療する目的の場合は、必ず医師に相談しましょう。
というのも、自己判断でサプリメントなどで摂取してしまうと、いま利用している薬の効果が弱められたり、効果が出すぎたりします。その結果、命にかかわる副作用が起こることがあります。
2-2.それ以外の効果を目的とする場合にサプリ等を利用すべきじゃない理由
- 効果がない可能性が高いものにお金を使うのはもったいない
- 過剰摂取による副作用の可能性が高まる
という二つの理由があります。
特にサプリメントは満腹感が感じられないため、過剰摂取になってしまいがちです。過剰摂取による副作用については3.タウリンの副作用で解説しています。
健康になるためのサプリメントで、逆に健康被害が出てしまうのはもったいないことではないでしょうか。
2-3.どうしても頼りたい場合は食事から摂取する
食事から摂取することで、満腹感が得られるため過剰摂取のリスクが大きく下がります。どうしてもタウリンの効果を期待する場合は食事から摂取するようにしましょう。
タウリンは海鮮系の食材や貝などに多く含まれます。
タウリンを多く含む食材
食材名 | タウリン(100gあたりの含有量) |
---|---|
真ダコ | 900~1670mg |
サザエ | 1500mg |
ホタテ | 670~1100mg |
牡蠣 | 70~1180mg |
ミル貝 | 730mg |
ヤリイカ | 700mg |
カツオ | 160~830mg |
ハマグリ | 550mg |
3.タウリンの副作用
タウリンは食事などから適切に摂取する分においては基本的に安全な成分です。しかし、サプリメント等により過剰に摂取した場合、安全であるかについてはわかっておりません。
副作用としては吐き気、下痢、便秘、発疹などが報告されています。
また、1日14gという非常に高容量のタウリンの摂取で、脳症という非常に危険な病気との関係が報告されています。
3-1.特に注意が必要な人
以下の人では特に注意が必要です。
- 妊婦・授乳中の方
- 双極性障害(躁うつ病)
妊婦・授乳中
食品での摂取はほとんど安全と考えられていますが、濃縮したものについては十分に信頼できるデータがありません。
妊婦や授乳中の方ではタウリンのサプリメントは避けたほうが良いでしょう。
双極性障害(躁うつ病)
抗精神病薬の一部に含まれるリチウムと相互作用が起こる可能性があります。
薬の効果が効きすぎてしまい、思わぬ副作用の可能性があります。
4.科学的根拠のほとんどないタウリンの効果
- 疲労回復
- 脂肪肝
- 糖尿病
- 高血圧
- コレステロールの低下
- ダイエット
これら6つでは医学的な根拠がほとんど見られませんでした。
それぞれの効果に関して簡潔に説明します。
4-1.疲労回復
タウリンは疲労回復に関して効果があると多くの人に認識されていて、エナジードリンク等にも含まれています。
しかし、タウリンに疲労回復効果があるとは言えないのが現状です。
タウリンと疲労の関係を調べた研究
タウリンは疲労回復に効果がなかったという報告があります。3)
実験参加者 | 239名の大学生 |
実験方法 | 男子生徒は102.5mg/日、女子生徒は98mg/日のタウリンを摂取させ、 自己報告疲労スコアを記入してもらった。 |
実験結果 | 自己報告疲労スコアとタウリンの摂取量に関して有意な相関関係はみられなかった。 |
エナジードリンクで疲労回復効果があったという研究は多くあります。しかし、エナジードリンクはタウリン以外にもカフェインなど様々な成分が含まれており、疲労回復にどの成分が効果的なのか明らかになっていません。タウリンだけを摂取して疲労回復に効果がある可能性は限りなく低いでしょう。
4-2.脂肪肝
タウリンは脂肪肝に効果があるといわれています。しかし、根拠についてはまだ質の低い研究しか存在せず、脂肪肝に効果があるとは言えません。
また、効果があったとする論文を調査してみたところ、「単純性肥満の児童」での限定的な効果でした。4)
もし、あなたが成人の場合、脂肪肝に対する根拠は皆無であることを知っておきましょう。
4-3.高血圧
タウリンの血圧を下げる効果については十分な科学的な根拠がありませんでした。
効果があるとする研究は2件見つかりましたが、どちらも研究の質が低く、高血圧に効果があるとは言えません。5)6)
また、ラットを用いた動物実験では、高血圧を改善することがわかっています。しかし、ラットで効果があっても人間で効果がないというのはよくあることです。
当サイトでは高血圧の改善目的でタウリンを利用することはお勧めしません。
4-4.糖尿病の予防
タウリンは糖尿病の予防については、効果があるとは言えないでしょう。効果があるとする信頼できる研究は見当たりませんでした。
それどころか、効果がないとする信頼性の高い研究が存在しました。7)
糖尿病の予防をタウリンには期待しないほうが良いでしょう。
4-5.ダイエットや血中コレステロールの低下について
ダイエットや血中コレステロールの低下には、科学的な根拠が見つかりませんでした。
動物実験でダイエット効果が見られたという報告がありますが、動物で効果があるもので人では効果がないケースは多くあります。タウリンは、ヒトでの研究でそれらの効果が見られたという信頼できる研究はありません。
動物実験で効果があったことを根拠にしている商品等に騙されないようにしましょう。
まとめ
- タウリンの効果は2つだけ。「うっ血性心不全」と「高ビリルビン血症で肝機能の改善」
- それ以外の効果に関しては科学的な根拠がありません
- 基本的にタウリンはサプリメントなどで摂取する必要はありません。どうしても頼ってみたい場合は食事で摂取すること
- 妊娠中・授乳中・躁うつ病の人では特にタウリンのサプリメントを利用してはいけません
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参考論文
- natural medicine database
- 1)Therapeutic effect of taurine in congestive heart failure: a double-blind crossover trial.
- 2)医薬品添付文書「タウリン散98%『大正』」
- 3)Relationship among self-reported fatigue, dietary taurine intake, and dietary habits in Korean college students.
- 4)Effect of taurine on the fatty liver of children with simple obesity.
- 5)Effects of increased adrenomedullary activity and taurine in young patients with borderline hypertension.
- 6)Decrease of urinary taurine in essential hypertension.
- 7)Effect of taurine treatment on insulin secretion and action, and on serum lipid levels in overweight men with a genetic predisposition for type II diabetes mellitus.