病院で低カルシウム血症と言われ、先生は大丈夫と言ったものの不安にお思いではないでしょうか。
低カルシウム血症とは、血液中のカルシウム濃度が低くなった状態(血清補正カルシウム濃度8.5mg/dl未満)のことです。症状が出ないことも多いですが、重度になると感覚異常やテタニーといった症状が現れることもあります。
この記事では、低カルシウム血症について、一般の方でもわかるようにわかりやすく解説しました。
ぜひ、ご自身の状態を正確に把握し、不安をなくしていただけると幸いです。
1.低カルシウム血症の症状
カルシウムは、からだの中で細胞の機能を調節したり、筋肉の収縮、血液凝固や骨の形成など様々な役割を担っています。カルシウムが不足することで、これらの働きに影響が現れ、さまざまな症状が現れます。
1-1.軽度の場合
軽度の低カルシウム血症の場合、症状が出ないことが非常に多いです。一部の人で背中や足の筋肉のけいれんが見られることもあります。
特に病気があるわけでも体調が悪いわけでもないのに、検査などで指摘された方は軽度の低カルシウム血症であることが多いです。
この場合は、カルシウムを食事で積極的に摂取したり、カルシウムのサプリメントを利用することで改善します。そのため、特に怖がる必要はないでしょう。
1-2.重度の場合
病気や薬などが原因で、カルシウムの濃度(7mg/dL未満)がとても低くなると感覚異常やテタニーだけでなく、痙攣,脳症,心不全が起こることもあります。
代表的な重症低カルシウム血症の症状
筋肉系 |
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精神・神経系 |
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心臓系 |
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消化器系 |
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その他 |
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(参考:year note 2016)
テタニーとは
テタニーとは手足におきるしびれのことで、軽症ではくちびるや舌、手指や足の感覚異常、重症になると手足のけいれんや、全身の筋肉痛、顔面筋のけいれんなどが特徴です。
テタニーの治療
グルコン酸カルシウム10~20mlをゆっくり静脈注射することで改善します。
クボステック徴候やトルソー徴候
テタニーではこのように症状がはっきり表れることもあれば、潜在性の場合もあります。潜在性テタニーを確認する方法として、クボステック徴候やトルソー徴候というものがあります。
クボステック徴候
クボステック徴候とは、外耳道の直前で顔面神経を軽く叩くと、鼻の左右両端(鼻翼)やまぶた、口角などで筋肉が収縮する反射のことを言います。ただし、急性低カルシウム血症の患者さんだけでなく、健康な人でも10%程度で見られることに注意が必要です。
トルソー徴候
トルソー徴候とは、上腕を止血帯やマンシェットで圧をかけたときに、手が助産師手位を示す現象のことを言います。助産師手位とは以下の画像のような状態です。
1-3.低カルシウム血症の検査
低カルシウム血症は血液検査で、血漿補正カルシウム濃度が8.8mg/dL未満になることで診断されます。
不安な場合は、一般的な内科で血液検査してもらうのが良いでしょう。どうしても何科か選ぶとしたら、副甲状腺機能の低下などを考える必要があるため、内分泌科が最善です。
2.低カルシウム血症の原因
低カルシウム血症になる原因としては、副甲状腺の病気や腎臓の病気、薬やビタミンDの欠乏、カルシウムの摂取不足などが挙げられます。
病気 |
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薬 |
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その他 |
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2-1.副甲状腺機能低下症
副甲状腺機能低下症により、副甲状腺ホルモンが低下し、それにより低カルシウム血症となることがしばしばみられます。
低カルシウム血症になるメカニズム
副甲状腺ホルモン(PTH)は体の中で、腎臓でのビタミンDの活性化を担っています。活性化したビタミンDは腸管でカルシウムを吸収したり、腎臓でのカルシウム再吸収を促進するといった、血液中のカルシウム濃度を上昇させる作用があります。そのため、副甲状腺ホルモンが不足すると、活性型ビタミンDが不足し、カルシウム濃度の上昇を抑え低カルシウム血症になってしまうのです。
また、PTHは腎尿細管でのカルシウムの再吸収の作用もあります。PTHが低下することでカルシウムの再吸収を抑え、さらに低カルシウム状態となると考えられています。
副甲状腺機能低下症の原因
甲状腺摘出手術や副甲状腺摘出手術の後に低カルシウム血症が見られることがあります。多くは手術後1~2日後に見られますが、人によっては数か月や数年先に見られることもあります。
また、特発性副甲状腺機能低下症という子供で起こる遺伝病では、副甲状腺が無かったり、小さかったりするため低カルシウム血症をきたすことがあります。
2-2.偽性副甲状腺機能低下症
偽性副甲状腺機能低下症では副甲状腺ホルモンは正常であるものの、臓器で副甲状腺ホルモンに対して抵抗性があることにより、副甲状腺ホルモンが正しく働かず低カルシウム血症になってしまいます。非常に珍しい病気ですので、一般の方は気にする必要はないでしょう。
2-3.ビタミンDが欠乏することによっておこる低カルシウム血症
ビタミンDは血液中のカルシウム濃度と深くかかわっているため、不足すると低カルシウム血症になることがあります。
ビタミンDの働き
ビタミンDは血液中のカルシウム濃度を上げる働きがあります。
- 腸管でのカルシウム吸収促進
- 腎臓でのカルシウム再吸収促進
- 骨からのカルシウム放出を促進
これらのメカニズムを通して、カルシウム濃度を上昇させます。
ビタミンDが欠乏する原因
- 食事からの摂取不足
- 日光にほとんど当たっていない
- 肝臓・胆道の病気
- 腸管での吸収不良
- 薬(抗けいれん薬(フェニトイン、フェノバルビタール)、リファンピン)
- 腎不全
- Vit.D依存性くる病
- 偽性Vit.D欠乏性くる病
などが挙げられます。
病気に関してはどうしようもありませんが、食事からの不足や日光に当たっていないなどは予防することができます。カルシウム不足になりがちで病気がない場合はしっかりと予防するのが重要でしょう。ビタミンDは鮭やシラスなど魚に多く含まれます。
また、薬については該当する薬を使用している場合は、医師と相談して別の薬に変えてもらうことを検討しましょう。
3.低カルシウム血症の治療
低カルシウム血症になるとどういった治療を受けることになるのか、解説していこうと思います。
原因に応じてカルシウムやビタミンDの補充が行われます。低カルシウム血症は適切に治療を受ければ、手術などもないため、比較的改善しやすいです。
予後も良好ですので、低カルシウム血症になっても安心して治療を受けるとよいかと思います。
軽度の低カルシウム血症で病気がない場合 | カルシウムのサプリメントや食事の見直しで改善することが多いです。病院に行くと、カルシウム製剤を処方され、経口摂取する事が多いです。(ビタミンDはカルシウムを十分に摂取できている場合に有効です。) |
テタニーがある場合 | グルコン酸カルシウム10~20mLを10分かけて静脈注射します。ただし、数時間しか効果が続かないため、グルコン酸カルシウム20〜30mLを5%ブドウ糖液1Lに溶かし、半日から1日かけて追加注入します。 |
テタニー+低マグネシウム血症 | マグネシウムを補充することになります。カリウム、カルシウムに一時的に反応することもあるりますが、マグネシウム製剤での補充が改善のための近道です。 |
甲状腺や副甲状腺の摘出術後 | カルシウムを経口摂取すれば十分なケースが多いです。ただし、腎不全の患者の場合は重症の状態が長引く可能性があるため、手術後に静脈注射によりカルシウムを補充します。基準となるアルカリホスファターゼ濃度が低下するまで、1g/日カルシウム元素の補給を5〜10日間が必要になることもあります。 |
腎不全 | 合成カルシトリオールを投与することが多いです。腎臓での代謝変換が必要ないためです。 |
副甲状腺機能低下症 | 0.5〜2μg/日の経口カルシトリオールを経口摂取することになります。 |
偽性副甲状腺機能低下症 | カルシウムの経口摂取のみで改善するケースが多いです。 |
ビタミンD欠乏症によるくる病 | 10μg/日のビタミンDの摂取を行います。骨軟化症がある場合は、125μg/日のビタミンDを1~3か月投与し、改善してから10μg/日のビタミンDの摂取を行います。 |
日光に当たっていない場合 | 日光に当たることや紫外線ランプが唯一の治療です。それ以外の治療は根本的な解決にならないことが多いでしょう。 |
4.まとめ
低カルシウム血症について症状や原因、治療法などを解説していきました。
検査などで指摘され、医師に問題ないと言われている場合は特別怖がる必要はないでしょう。ただし、重症の場合は危険ですので、重症にならないようにしたいところです。
特に、ビタミンDやカルシウムの摂取不足、日光、薬といったものが原因の場合、しっかりと生活を見直せば低カルシウム血症になることを予防できます。これらはしっかりと予防するようにしましょう。
低カルシウム血症について深く正しく知り、不安を解消していただけると幸いです。
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