DHAやEPAの効果を正しく知り、自分の健康のために役立てたいという方は多いのではないでしょうか。
DHAもEPAも健康に役立つ栄養素として考えられています。
しかし、DHAやEPAの効果については間違った情報も数多く一般に知られています。
正しくDHA・EPAを利用してもらうために、私たち医大生で100を超える医学研究や医学書を調べ上げました。
そして、正しい効果はどれなのか、どう活用したらよいのか科学的に解説しました。これらの知識を知ることで、より健康に生活していくサポートとしてDHAやEPAを最大限活用できるようになるでしょう。
是非、記事を読んで、DHAとEPAについて効果があるものと証明されていないものをはっきりと知り、正しい活用法を実践することで生活に役立ててほしく思います。
- 科学的に根拠のある効果は2つだけ!「中性脂肪を減らす」「血小板凝集を押さえる」
- 頭が良くなる、うつに良い、ダイエットに良いといった宣伝には科学的な根拠がないので要注意!
- DHA・EPAは合計して男性は2.0-2.4g/日、女性は1.6-2.0g/日摂取するのが良いです。
- 効果的な摂取のために多く含む食材を知ったり、健康食品を組み合わせよう!詳しくは2.DHA・EPAの効果的な摂取法で説明しています。
1.DHA・EPAの科学的に証明されている効果
DHAやEPAに関して科学的に効果があることが証明されているものは
- 中性脂肪を減らす
- 血小板凝集を抑える
の二つです。
とはいうものの、実際に中性脂肪が減るとどんなメリットがあるのか、血小板凝集をおさえることはどんないいことがあるのかうまく想像がつかないのではないでしょうか。
以下ではDHAやEPAが健康に及ぼすメリットを解説していきます。
1-1.中性脂肪を減らす
中性脂肪を減らすことに関しては複数の信頼性の高い研究で効果があることが証明されており、特定保健用食品などのための国の審査でも明らかになっています。
18歳から37歳の健康な324名を対象に二重盲検無作為化プラセボ比較試験を実施した。実験群にはDHA1.6 g/日+キャリアオイル2.4 g/日を、対照群にはオリーブオイル4.0g/日を16週間摂取させた。
血中のトリグリセリド(中性脂肪)、VLDLコレステロール濃度の有意な低下が認められた。中性脂肪は平均値で-28%、95%信頼区間で-15%~-40%の減少が見られた。
DHAを摂取したグループは何も摂取していないグループに比べ、平均28%の中性脂肪が減少したという報告がされています。EPAも同様に中性脂肪を減らすことがわかっています。
このような実験結果が他の優良な実験でも多数見られました。中性脂肪を減らすサポートとなるということに関しては非常に信頼性の高い効果であるように思います。
では中性脂肪を減らすと私たちの生活にどのようないいことがあるのでしょうか。
1-1-1.中性脂肪が減ることのメリット
中性脂肪が減ると、動脈硬化や高血圧といった生活習慣病になるリスクが低くなります。これらは命に関わる病気の原因になるものです。つまり、中性脂肪が減ることで、長く健康に生きていられるようになります。
中性脂肪が増える
→悪玉コレステロール(LDL)が増える
→血管の壁にコレステロールが取り込まれ、血管の壁が分厚くなる(動脈硬化)
→高血圧へ
さらに進行していくと血栓ができて心臓の血管に詰まって心筋梗塞を起こしたり、脳の血管に詰まって脳梗塞を起こしたりします。そんな命に関わる生活習慣病を予防するため、厚生労働省でもDHAやEPAの摂取を勧めています。
1-1-2.中性脂肪は生活習慣病の原因の一つでしかないという点には注意
高血圧や動脈硬化の原因の一つの大きなものとして中性脂肪が挙げられますが、他にも脂質異常症や肥満などが原因としてあげられます。
積極的にDHAやEPAを摂っているからといって、過剰に脂肪分の多い食べ物を食べたり、お酒を飲みすぎたりするのはやめましょう。せっかく日々それらの栄養素をとっても逆効果になりかねません。
1-2.血小板凝集をおさえる
EPA・DHAともに体内でプロスタグランジンという物質に変化し、血小板凝集を抑える作用があります。
健康な成人94名を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、EPA 1000 mg/日+ DHA 200 mg/日またはEPA 200 mg/日+ DHA 1000 mg/日を4週間摂取させた。その結果、EPAでは-11.8%の血小板凝集がみられ、DHAでは-14.8%の血小板凝集がみられ、プラセボ群と比べ有意に血小板凝集の抑制効果を示した。
また、性別で検討した場合、男性では高EPA油摂取群、女性では高DHA油摂取群で血小板凝集能の低下が認められた。男性では、EPA投与群において、血小板凝集が偽薬群(P = 0.005)および女性(P = 0.011)に比べて、有意に低下(-18.4%)していました。一方、女性では、DHA投与群において、血小板凝集の低下が顕著(-18.9%)であり、偽薬群(P = 0.001)および男性(P = 0.017)に比べて有意な低下となっています。
DHAとEPAを摂取することで何もしなかったグループに比べ血小板凝集が抑制されることが報告されています。
また、男性ではEPAの方が女性ではDHAの方が血小板凝集を抑える効果があることがわかっています。自分に合わせてどちらが良いか選ぶとよいでしょう。
1-2-1.血小板凝集をおさえると何にいい?
血小板凝集を抑えると血が固まりにくくなり、血栓ができにくくなります。これによって脳梗塞や心筋梗塞を予防することにつながります。
中性脂肪を減らすのと同じように、命に関わる病気を予防することで、長く健康に生きることができるようになるのです。
1-2-2.過剰摂取に要注意
DHAやEPAを過剰に摂取することは避けた方が良いです。
というのも、血小板凝集を抑えすぎると、出血した際に血が固まりにくいため、かさぶたができにくくなってしまいます。場所によっては出血が続くと貧血になったりすることも考えられます。内臓系では死につながることもあるでしょう。
そのため、過剰に摂取することなく、正しいDHAやEPAの摂取法を正しく守り生活に取り入れるようにしましょう。
1-3.DHAとEPAの違い
DHAとEPAはどちらもω-3脂肪酸という栄養素で、その働きも効果もよく似ています。
違いとしては
- EPAは男性の、DHAは女性の血小板凝集を抑えやすい
- EPAは脳に存在しない
ということくらいです。
ただし、DHAは脳に必要な成分だが、摂取したからといって頭が良くなる訳ではないので注意しましょう。
2.DHA・EPAの効果的な摂取の仕方
DHA・EPAを摂取しておくことで、高血圧や動脈硬化といった生活習慣病の予防が考えられています。
しかし、残念なことに、「何を」「どれくらい」食べれば良いのかということについてはあまり知られていません。ここでは効率の良い摂取法をわかりやすく説明していきます。
- 普段の食事から青魚を積極的に食べる
- DHA・EPAを含む健康食品・サプリを利用する
- 男性は2.0-2.4g/日、女性は1.6-2.0g/日摂取するのが良い
- 多く含む食品や調理法を知っておく
- 過剰摂取に要注意
2-1.DHA・EPAを含む健康食品・サプリを利用する
DHAやEPAを含む健康食品やサプリメントは数多くあります。しかし、商品ごとに規格が異なり、効果が出にくかったりするものもあります。
そこで、DHAやEPAを手軽に摂取するためには特定保健用食品(トクホ)をおすすめします。
特定保健用食品は、商品ごとに有効性や安全性が科学的な実験で国により調査されています。そのため、そのほかの健康食品やサプリメントよりも効果や安全性に信頼がおけるからです。
DHA・EPAを含むおすすめトクホ
DHA・EPAを含む特定保健用食品として代表的なのは「イマークS
ニッスイの「イマークS」はEPAやDHAが多く含まれており、中性脂肪の減少の効果があることが厚生労働省の審査によりわかっています。また、安全性に関しても審査されており、副作用がほとんどないことがわかっているので、私としてはDHAやEPAの健康食品では最もお勧めです
購入は、ニッスイのイマークS公式サイトで買うことができます。
イマークSの効果に関する医学研究
イマークSを用いて113人の男女で行った実験によると、摂取してから4~12週後に中性脂肪が20%低下したという研究結果が発表されています。
実験者 | 中性脂肪値が120 mg/dLから200 mg/dLの男女113名 |
実験種別 | ランダム化比較試験 |
実験方法 | イマークSとプラセボ飲料を1日1本、12週間連日摂取させ、イマークSとプラセボで比較を行った |
実験結果 | イマークS摂取群では血中の中性脂肪が摂取前と比較して、4週後 20%、8週後19%、12週後20%、さらに摂取終了4週後12%、それぞれ有意に低下した。一方、対照食群ではどの時点でも摂取前からの有意な変化は見られなかった。 |
日本臨床栄養学会雑誌33(3,4) 120-135
購入は、ニッスイのイマークS公式サイトで買うことができます。
2-2.普段の食事から青魚を積極的に食べる
DHAやEPAはサケやサンマ、サバといった青魚に多く含まれています。
普段の食事から魚を意識的に食べるようにしましょう!それだけで、特に栄養価などを計算しなくても、1日に必要な量のDHAやEPAを摂取することができます。
おすすめとしてはサケフレークです。手軽に取ることができ、毎日続けやすいからです。
さらに詳しく知りたい方のために、特に多く含む食材を紹介します。
DHA・EPAを多く含む食べ物(可食部100gあたりの含有量)
DHAを多く含む食材 | EPAを多く含む食材 | ||
---|---|---|---|
アンコウ(肝) | 3650mg | クジラ(皮) | 4300mg |
本マグロ(トロ) | 2880mg | アンコウ(肝) | 2300mg |
ブリ(焼き) | 2284mg | やつめうなぎ(干し) | 2200mg |
ブリ(生) | 1780mg | すじこ | 2100mg |
サバ(生) | 1780mg | しめさば | 1600mg |
うなぎ蒲焼 | 1490mg | やつめうなぎ(生) | 1500mg |
さんま(生) | 1400mg | みりん干し | 1400mg |
さんま(焼き) | 1140mg | かずのこ | 1300mg |
アジ(焼き) | 1107mg | 焼きのり | 1200mg |
効率的に摂取する調理法
最も効率よく摂取できる方法は刺身など生で食べることです。そうすることで栄養素が調理で溶け出さず、しっかりと摂取できます。
生で食べることができない場合
- ホイル焼きにする
- ムニエルにする
- 煮魚の場合、煮汁も取る
といった調理法を心がけましょう。というのも、魚を焼いたり煮たりすると、流れ出る脂とともにDHAやEPAは減ってしまいます。
そこで、ホイル焼きやムニエルにすることで、溶け出した脂を野菜や小麦粉が吸ってくれるので無駄なくDHAを摂取することができます。
2-3.1日に摂るべきDHA・EPAの摂取量
DHA・EPAをはじめとするn-3脂肪酸について、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2015」によると18歳以上では男性は2.0-2.4g/日、女性は1.6-2.0g/日摂取することが推奨されています。
DHA・EPAの摂取すべき量(DHAとEPAの合計)
年齢 | 男性(g/日) | 女性(g/日) |
---|---|---|
0歳 | 0.8-0.9 | 0.8-0.9 |
1-2歳 | 0.7 | 0.8 |
3-5歳 | 1.3 | 1.1 |
6-7歳 | 1.4 | 1.3 |
8-9歳 | 1.7 | 1.4 |
10-11歳 | 1.7 | 1.5 |
12-14歳 | 2.1 | 1.8 |
15-17歳 | 2.3 | 1.7 |
18-29歳 | 2.0 | 1.6 |
30-49歳 | 2.1 | 1.6 |
50-69歳 | 2.4 | 2.0 |
70歳以上 | 2.2 | 1.9 |
妊婦 | 1.8 | |
授乳婦 | 1.8 |
また、多く摂取したからといって効果が強く表れるということではないので注意してください。
2-4.副作用
DHAもEPAも基本的に安全な成分です。しかし、過剰摂取(1日3g以上)すると副作用が起きることがあります。
出血等の場合に血が止まらないということなどが起きます。出血の部位が内臓だと死に至る可能性もあります。非常に危険ですので、必ず3g/日以上摂取しないようにしましょう。
また、その他の副作用として悪心(吐き下しの前の胸のムカムカ)、お腹の膨満感などが挙げられます。
3.科学的根拠のないDHAやEPAの効果と悩みの解決法
- 頭が良くなる
- ダイエットに良い
- アトピーに効く
- うつに効く
これら4つに関しては科学的な論文等が全くなく、効果がない可能性が高いです。
この項目ではこれらに関して効果がないという科学的根拠を示しています。興味がある分野があれば是非参考にしていただく思います。私個人の意見としてはこれらの効果を謳っている健康食品は利用すべきではないと思います。
3-1.DHAを飲めば頭が良くなるというは迷信!
DHAを取れば頭が良くなるなどといわれているが、効果がない可能性が高いです。頭が良くなるという表示の商品などには注意が必要かと思います。
健康な小児88名 を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、DHA 400 mg/日または1,000 mg/日を8週間摂取させた。その結果、認知機能に影響は認められなかった 。
7~9歳の小児362名 を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、藻類由来のDHA 600 mg/日を16週間摂取させた。しかし、全体では言語能力、作業記憶、行動評価のいずれにも影響は認められなかった。
このように、DHAを2~4ヶ月摂取させた結果では認知機能や言語能力、記憶力など頭が良くなるといった結果は見られませんでした。
3-2.うつ病に効果なし
DHAはうつに効果的とする意見があります。しかし、ランダム化比較試験という優良な研究によると科学的に効果がない可能性が高いです。この効果を謳っている商品は購入しない方がいいのではないかと思います。
高齢者302名 を対象とした二重盲検無作為化比較試験において、DHAとEPAを合計400 mg または1,800 mg/日、26週間摂取させた。
しかし、不安・抑うつ尺度 (評価指標:CES-D、MADRAS、GDS-15、HADS-A) には影響しなかった。
周産期ではうつになりやすいといわれている。
妊婦126名を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、EPA 1,060 mg + DHA 274 mg /日 または、DHA 900 mg + EPA 180 mg/ 日を妊娠初期から出産後6~8週間まで摂取させたところ、うつの評価 (BDI、MDD) に影響は認められなかった。
参考論文:The Mothers, Omega-3, and Mental Health Study: a double-blind, randomized controlled trial
では手軽にうつを治す方法はないのでしょうか。残念ながら、今のところ存在しないというのが私の意見です。それどころか、間違った方法を試してうつを悪化させるケースも多いので注意してほしく思います。
うつを改善するためには
- 信頼できる医師にみてもらう
- ストレスの元となる生活環境を変える
という2つのことが改善のための最短コースです。
3-3.アトピーに効果なし
アトピーにDHAは効果がない可能性が高いです。400人を対象にした信頼性の高い科学実験においてアトピーに影響がみられなかったという報告があります。アトピーで効果があると書いてあるものには注意した方が良いでしょう。
遺伝的にアトピーになりやすい乳児420名 を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、DHA 280 mg/日、EPA 110 mg/日を含むサプリメントを生まれてから6ヶ月目まで摂取させた。
6ヶ月および12ヶ月の時点で喘息、食物アレルギー、皮膚炎、アレルギー感作といったアトピー二関連するものの発症率に有意な差は認められなかった。
3-4.ダイエットに有効ではない
ダイエットに対してもDHAやEPAは効果がない可能性が高いです。ダイエットに効果的といわれている商品を使う場合は、DHAやEPAを主体とする健康食品を用いない方がいいのではないかと思います。
低エネルギー食の指導を受けている肥満の成人63名を対象とした無作為化プラセボ比較試験において、
- 低カロリー食の指導+偽薬
- 低カロリー食の指導+脂肪の多い魚の摂取+偽薬
- 低カロリー食の指導+脂肪の多い魚の摂取+EPA 420 mg/日+DHA 210 mg/日
にグループ分けし、12ヶ月間摂取させた。
- 低カロリー食の指導のみのグループでは-4.5kg
- 指導に加え魚を摂取したグループでは-4.3kg
- 指導+魚+DHA・EPAのサプリでは-3.3kg
という結果となり、群内の体重および体脂肪率の低下は p<0.001で有意だったが,群間には有意差がみられなかった。
魚を余分に摂取した場合も、DHAやEPAのサプリメントを摂取した場合でも体重が減少したものの、DHAを加えたからと言って余分に体重が減少するわけではないことが明らかになっています。
4.DHAやEPAは健康でいるために必要な栄養素です
DHA・EPAは正しく摂取することであなたの将来の健康のために非常に役に立つ栄養素です。正しく理解して普段の生活にぜひ取り入れてほしくおもいます。
また、科学的に効果が示されていないものに関しては、DHAやEPAを試すよりもその他の解決策を実践してみてほしく思います。全く根拠がないものにお金を使ってしまうのはもったいないのではないでしょうか。
この記事を読んで、あなたが適切にDHAやEPAを摂取し、長く健康でいてくれることを願っています。
- 科学的に根拠のある効果は2つだけ!「中性脂肪を減らす」「血小板凝集を押さえる」
- 頭が良くなる、うつに良い、ダイエットに良いといった宣伝には科学的な根拠がないので要注意!
- サバなどの青魚にDHA・EPAは多く含まれます。意識的に食べてみましょう。
- DHA・EPAの健康食品については、国に個別に効果と安全性の審査を受けたトクホの「イマークS」がおすすめ!審査を通過している分、トクホ以外のサプリよりも信頼性が高いです。
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