昼夜逆転が続くと学校や仕事にも影響を及ぼし、とても辛い状態ですよね。何としてでも昼夜逆転の生活を治したいのではないでしょうか。
私自身も昼夜逆転に半年間悩まされた経験があり、非常に辛かったことを覚えています。その経験もあり、医大生として昼夜逆転とその解決法に関して専門の医学書を読み、医師の先生にお話をお伺いしました。
この記事では医学的な立場から、解決のために必須の3つの具体的な解決法をわかりやすくまとめ、解説しました。また、治らない場合の対処法に関しても説明しました。
簡単に結論を述べると、以下の表のようになります。詳しい内容については、各項目で説明しています。
昼夜逆転の解決策は今日からできるものばかりです。ぜひ今日から実践して昼夜逆転の生活をからおさらばしましょう!
1.昼夜逆転を改善する最も効果的な3つの具体的な行動
この項目では昼夜逆転の改善のために必ずやっていただきたい3つの行動についてお話します。
- 朝に光を浴びる(無理にでも)
- 夜の強い光を避ける
- 昼寝をするなら15時より前に20~30分
これら3つは、科学的な実験により、効果があると考えられている方法です。
まずは、この3つを1週間続けてみましょう!ほとんどの場合、これだけで昼夜逆転が解消されます。
1-1.朝に光を浴びる
昼夜逆転を改善するためには、「光」が何よりも重要であることがわかっています。
そのため、具体的な行動としては毎朝おきてすぐに少し散歩するのがもっとも良いでしょう。朝まで寝付けない人は無理矢理にでも朝に光を浴びる癖をつけましょう。
というのも、昼夜逆転の原因は生体リズムが遅れることにあります。生体リズムに対して、光こそが最も影響を与えるということが、実験により明らかになっています。
寝る前の強い光は生体リズムを遅らせる作用があり、起きてすぐの強い光は生体リズムを早める作用があるということがわかっています。
生体リズムと光の関係を示す実験
時間から隔離した環境に被験者を置き、光が生体リズムに影響を与えるかについて実験が行われました。
結果は以下の表のようになりました。
生体リズムは約25時間であるため、時間から隔離すると徐々に就寝時間が遅くなっています。しかし、6日目以降、光を当てると起床時間、就寝時間共にほぼ同じ時間に保たれていることが表よりわかると思います。
この実験より、生体リズムは明暗サイクルに同調している、ということが明らかになりました。
参考論文:Entrainment of human circadian rhythms by artificial bright light cycles
生体リズムを整える光の強さ
生体リズムを整えるためには、2,500ルクス以上の光を1時間以上受けるのが最も良いとされ、病院での治療にも用いられています。
とはいえ、2,500ルクスと言われてもイマイチピンと来ないですよね。
朝受けるべき光の強さについて知っておいて欲しいことは2つです。
- 室内の明るさは外の明るさの1/10~1/20程度。外に出て散歩するのが最適!
- 起きてから暗い室内で2時間以上過ごすと生体リズムのリセットがおきない!
場所 | 光の強さ |
---|---|
晴れの日のひなた | 100,000ルクス |
曇りの日(外) | 30,000~50,000ルクス |
雨の日(外) | 10,000~15,000ルクス |
晴れの日の窓際 | 1000~3000ルクス |
室内 | 500ルクス |
上の表を見ていただいてもわかるように、外に出るのが最適です。
1-2.夜寝る前の強い光を避ける
強い光は、生体リズムをリセットしてしまうことが、先ほど紹介した実験によりわかっています。
そのため、夜寝る前の光は寝つきを悪くしてしまいます。夜寝る1時間前には強い光を出すものを避けましょう。
眠くなることに関わるホルモン「メラトニン」は500ルクス以上の光で、分泌が抑制されてしまうことがわかっています。スマホやパソコンといった強い光をだすものにより、メラトニンは抑制され、寝つきにくくなってしまいます。
具体的な行動として
- 寝る1時間前はスマートフォンやパソコンを使わない
- コンビニやガソリンスタンドなど光の強い場所は避ける
ということを意識しておきましょう。
1-3.昼寝をするなら15時より前に20~30分
昼寝をすることで夜寝付けなくなり、昼夜逆転してしまっているケースは非常に多いです。その場合は昼食後から15時の間の時間で30分未満の昼寝をするのが良いでしょう。
この時間帯の30分未満の昼寝は夜の睡眠に影響を与えず、日中のねむけを解消してくれるということが最近の研究で言われています。
実験方法
正常な睡眠状態の成人7人を2グループに分けて昼寝が与える影響について調べた。1グループは14時から20分間昼寝をし、もう1グループは睡眠をとらずリクライニングで休んだ。EGG記録、気分、パフォーマンスレベルと自己評価を10時から18時の間20分ごとに調べた。
実験結果
20分の昼寝は主観的な眠気、パフォーマンスレベル、タスクのパフォーマンスの自己評価を向上させた。また、昼寝は覚醒時の脳波のアルファ活性を抑制した。
参考文献The effects of a 20 min nap in the mid-afternoon on mood, performance and EEG activity.
どうしても眠くてつらい場合は、昼食後から15時の間に20〜30分だけ昼寝をしましょう。タイマーなどを使うとより効果的です。
30分以上の睡眠はからだと脳を眠る状態にしてしまいます。そのため起きた後もぼんやりとしてしまい、しっかりと起きにくくなります。
また、15時以降の睡眠は夜の睡眠に影響を与えてしまい、夜寝る時間が遅くなってしまいます。昼夜逆転を悪化させるのでやめておきましょう。
- 毎朝、起きてすぐに少し散歩する
- 寝る1時間前にスマホやパソコンを使わない
- 寝る前にコンビニやガソリンスタンドに行かない
- 昼寝する場合、15時までに20~30分だけにする
- これらの行動を1週間続ける
2.解消法を実践しても直らない場合の対処法
これまで説明した3つの行動を実践しても、昼夜逆転が治らないケースもあります。その場合、寝つきの生活習慣に問題があることが考えられます。
治らない場合は、寝つきをよくするための4つの生活習慣を取り入れましょう。
- アルコール・カフェイン・ニコチンを寝る前に摂取しない
- 食事・運動・入浴は正しい時間に
- 寝る時間にこだわりすぎない
- 睡眠環境を整える
参考文献:睡眠障害の対応と治療ガイドライン
睡眠学(日本睡眠学会)
プライマリ・ケア医のための睡眠障害
これら4つの生活習慣を取り入れることで、昼夜逆転の改善をより効果的に進めていくことができると考えられています。
ぜひ、しっかりと知識をつけて生活に取り入れてください。
2-1.アルコール・カフェイン・ニコチンは寝る前は禁止
実は、アルコール・カフェイン・ニコチンなどには眠りを妨げる作用があります。寝る前にこれらを摂取するのはやめておきましょう。これらを普段から摂取していることが、不眠の原因になっているケースも少なくありません。
アルコール
お酒を睡眠薬代わりに使うのは絶対にやめてください。
たしかに、アルコールは眠りやすくなります。しかし、逆にねむりが浅くなってしまい、新たに睡眠障害を引き起こしてしまいがちです。また、だんだん同じ量では眠れなくなってくるため、摂取量が増え、肝臓の病気やアルコール依存症になりかねません。
カフェイン
コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれるカフェインは目を覚ます作用があります。夜寝る前に摂取するのはやめておきましょう。
また、おしっこが出やすくなる作用もありますので、夜中に目がさめることがあります。睡眠の質が下がりますのででやめておきましょう。
どうしても夜お茶を飲んでしまいがちの人は、夜はハーブティを飲むようにしましょう。ハーブティはカフェインを含まないため、緑茶や紅茶の代わりとして向いています。
ニコチン
タバコの煙に含まれるニコチンにも目を覚ます作用があります。寝る前のタバコはやめておきましょう。
また、禁煙補助で使われるニコチンガムやニコチンパッチも目を覚ます作用があるのでやめておきましょう。
2-2.食事・運動・入浴は正しい時間に
食事や運動、入浴は時間によって眠りにくくなる原因となると考えられています。
正しい時間を知り、実際の生活に取り入れていきましょう。
食事
夕食は寝る3時間前に済ませておきましょう。
というのも、寝ようとするときに胃や腸が活動していると、眠りにくくなると考えられています。
運動
寝る1時間前に運動してはいけません。
体温が下がっている時期が眠りやすい時間として知られています。寝る一時間前などに激しい運動をしてしまうと、体温を上げ眠りにくい状態になってしまいます。
入浴
寝る30分〜1時間前に入浴するのはできるだけ避けましょう。もし入浴する場合は、40℃ほどのぬるめのお湯にしておきましょう。
というのも、入浴により体温が上がると交感神経が活発に働き、寝つきにくくなるからです。
2-3.寝る時間にこだわりすぎない
寝る時間にこだわらず、眠たくなったらベッドに入るというのが良いです。
というのも、寝ようと意気込むほど頭はさえてしまい、眠りにくくなってしまいがちだからです。科学的な根拠があるものではありませんが、寝る時間にこだわりすぎる人ほど、不眠や眠りが浅くなる傾向にあることが医師により報告されています。
2-4.睡眠環境の整え方
睡眠を障害する原因として、騒音、湿度、温度、照度などが考えられています。睡眠環境を適切な状態に整えることで眠りにつきやすくなり、昼夜逆転を解消するきっかけになるかもしれません。
睡眠環境の整え方については、科学的な根拠があるものではありません。とはいうものの、医学書等で推奨されている方法を中心としています。
騒音
車の音や、隣で寝ているの人のいびきなどの騒音は、眠りにつきにくくなる原因となっています。
騒音に悩まされている場合は、耳栓をする、部屋を変える、防音設備を整えるなどが必要になる場合があります。
部屋の室温と湿度
体温が下がらないと寝付きにくいが科学的に明らかになっています。
そのことを踏まえると、以下の2つを守るのが良いでしょう。
- 部屋を適温に保つ(夏28℃、冬20℃)
- 断熱性、保湿性が高い寝間着は避ける
部屋の明るさ
部屋は明るすぎても、完全な暗闇でも寝付きにくいということが報告されています。
基本的には暗闇の状態でありながら、ほんのわずかに光がある状態が理想的です。
快眠グッズやサプリメントに関しても調査しましたが、科学的な根拠が一つも見当たりませんでした。また、睡眠学の専門書にも推奨する記載は一つも見当たりませんでした。効果がない可能性が非常に高いことを知っておきましょう。
3.病院で行われる治療
昼夜逆転がひどい場合、これまでの方法では改善しないこともあるでしょう。その場合、病院に行くことになるかと思います。
この項目では、簡単に病院での昼夜逆転(睡眠相後退症)の治療について説明します。
非薬物療法
高照度光療法
起きてから1時間、2500ルクス以上の強い光を浴びせる方法です。
1-1朝起きてすぐ光を浴びるでも解説しましたが、朝に強い光を浴びることは生体リズムを正常に整えることがわかっています。入院等でこの方法をとることで、睡眠相後退症は多くの場合改善します。
ただし、強い光であるため、目の病気がある方では行えません。
時間療法
毎日3時間ずつ睡眠時間を遅らせ、1週間程度で望ましい時間での就寝になった時に、その時間で就寝・起床時間を固定するという治療法です。
目の病気がある方でも行うことができますが、効果は1か月ほどしか持たず、再発することが多いです。
薬物療法
メラトニンやラメルテオン(ロゼレム)などにより生体リズムを整えます。
メラトニンは睡眠に関係するホルモンです。摂取することで睡眠を誘導する作用が考えられています。ラメルテオンはメラトニンの受容体に働く薬剤です。これも摂取することで睡眠を引き起こすと考えられています。
メラトニンのサプリメントが一部で販売されていますが、昼夜逆転の場合、サプリメントで安易に利用してはいけません。というのも、メラトニンはうつ病を悪化させる危険性が考えられており、うつが原因の昼夜逆転では悪影響となります。必ず医師の処方の元、利用するようにしましょう。
4.昼夜逆転を改善するための具体的な行動のまとめ
昼夜逆転を治すためには、まずはこの通り行動していただくのが最善です。
ほとんどの場合
- 朝起きてすぐに陽の光を浴びる
- 夜の強い光を避ける
- 昼寝は15時以前の20~30分間のみ
を実践していただくだけで改善します。簡単なことではないかもしれませんが、1~2週間根気強く実践していただけたら良いかと思います。
この記事を読んで、昼夜逆転が治ったという報告を楽しみにしております。
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