妊娠中で、葉酸を摂取するためにサプリメントを利用したいと思っていませんか?
葉酸は妊娠中であれば積極的に摂取したい栄養素です。
しかし、妊婦さんではサプリメントで摂取するのはおすすめしません。できるだけ食事を充実させることで、葉酸を摂取するべきです。
というのも、私たち医大生で医学論文等を調査したところ、葉酸のサプリメントは赤ちゃんにどんな影響を与えるか明らかになっていません。それどころか、妊娠中にサプリメントを摂取したことによる被害事例も明らかになってきました。
ぜひ、元気で健康な赤ちゃんを産むために、今日から葉酸のサプリと妊娠について正しい知識を身につけて実践して欲しく思います。
1.葉酸サプリの危険性
妊娠中に葉酸サプリは安易に摂るべきではありません。一番良いのは食事の充実で葉酸を摂取することです。次に葉酸を含む加工食品などです。
健康な赤ちゃんを産むために、どうして葉酸サプリを妊娠中に安易に摂るべきではないのか説明していきます。
1-1.なぜ葉酸サプリを妊娠中に摂らない方が良いの?
サプリメントを安易に摂取しない方が良い理由は主に3つあります。
- 安全性のデータ不足
- 複数の成分による副作用
- 過剰摂取
これらをそれぞれ解説していきます。
赤ちゃんへの安全性は証明されていません
サプリメントが安全かどうかを調べるためには、妊婦さんに協力してもらいそのサプリメントの臨床試験を行わなくてはならなりません。
しかし、倫理的な問題があるので、妊婦さんを臨床試験の対象として試験することはできません。そのため、胎児にどのような影響があるのか、サプリメントでは全く分かっていないのです。
妊婦にも安全と書いてあるサプリメントであっても、それを裏付ける実験は行っていません。妊婦にも安全と書いているからといって安心しないようにしましょう。
複数の成分でできているため、成分の相互作用やその他の副作用の可能性がある。
サプリメントに含まれているのは一つの成分だけではありません。様々な成分が含まれています。それらの成分同士の相互作用は否定できません。また、ほかの添加物によるアレルギー反応などの副作用の可能性もあります。
成分の過剰摂取がおきやすい
サプリメントは手軽に摂取できるため、1日で過剰に摂取してしまう例も珍しくありません。葉酸は過剰摂取によりさまざまな副作用を引き起こすことがわかっています。
Natural medicine Database(アメリカの栄養研究のデータベース)によると、「葉酸の高用量摂取は肺がんおよび前立腺がんのリスクを高める 」ということが報告されています。いくら必要な成分だからといって過剰摂取はさけましょう。
1-2.実際に日本で起きた葉酸サプリによる健康被害
実際に日本で健康被害が起きたことがあるのか気になる方もいるかと思います。現実に起きた事例を二つ挙げます。
事例①
約2年前の妊娠中に2ヶ月間葉酸サプリメントを摂取していた経験のある42歳女性 (日本) が、葉酸380μgを含むサプリメントを摂取した2時間後にアナフィラキシー症状をおこしたという報告がある。プリックテストにてサプリメントとその成分の葉酸に陽性反応が出たが、食物中の葉酸には無反応であった。また、メトトレキサート (葉酸代謝拮抗剤) も陽性で交差反応と考えられた。
この事例は葉酸そのものにはアレルギーがなかったものの、サプリメントに含まれる何かしらの成分がアレルギーを引き起こした事例です。
事例②
30歳妊婦 (日本) が妊娠5週目まで葉酸サプリメントを0.4 mg/日、3ヶ月以上摂取したところ、妊娠6週目より吐き気、嘔吐、1.5 kgの体重減少が生じ、2週間後に黄疸および肝酵素値 (直接ビリルビン値、AST値、ALT値、LDH値、γ-GTP値) の上昇、肝生検により肝小葉に小壊死を伴う胆汁うっ滞が認められた。葉酸サプリメントの摂取中止により回復し、正期産にて健康な新生児を出産した。DLSTが陽性であったため、葉酸あるいは添加されていた他の成分かは不明だが、摂取していた葉酸サプリメントが原因と想定される肝障害と診断されたとの報告がある。
摂取していた葉酸サプリメントにより、肝障害を引き起こしたという事例だ。特にこちらの事例の方は下手をしたら命にかかわる病気である、肝硬変にまで進行したかもしれない事例です。
葉酸のサプリメントは、これまでいくつかの危険事例が報告されています。子供の命を預かっている妊婦さんでは避けた方がいいのではないでしょうか。
1-3.食事だけじゃどうしても不足してしまう場合は?
食事だけでは葉酸欠乏症の疑いが見られる場合など、どうしても摂取しなければならない場合もあるかと思います。
その場合は、必ず医師に相談しましょう。決して自分の判断でサプリメント等を摂取するのはやめましょう。自己判断で摂取して損をしてしまうのはあなたなのです。
2.正しい葉酸の摂り方
前項目で、葉酸のサプリメントを安易に摂取すべきではないという話をしました。この項目では実際にどれくらいの量を、どの時期に、どうやって摂取するべきかの解説をしようと思います。
2-1.葉酸の必要量
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年度)」によると、
- 妊婦での推奨量は480μg/日
- 授乳婦の推奨量は340μg/日
です。コレを目安に摂取しましょう。
2-2.葉酸を多く含む食事
葉酸は多くの食材に多少なりとも含まれています。ここでは特に多く含まれる食事を紹介しようと思います。
文部科学省の発表する「五訂増補日本食品標準成分表」によると
野菜
食品名 | 葉酸(μg/100g) |
---|---|
枝豆 | 260 |
あさつき | 200 |
アスパラガス | 180 |
ブロッコリー | 120 |
ほうれん草 | 110 |
オクラ | 110 |
しゅんぎく | 100 |
アボガド | 84 |
肉・魚
食品名 | 葉酸(μg/100g) |
---|---|
鶏レバー | 1300 |
牛レバー | 1000 |
豚レバー | 810 |
うなぎ きも | 380 |
うに | 360 |
フォアグラ | 220 |
いくら | 100 |
レバーはビタミンAの過剰になることもあるので注意が必要です。
この表を参考に、具体的な食事を考えてみると良いかと思います。
2-3.葉酸を効率よく摂取する調理法
葉酸は調理法によっては食物の中から大部分が失われてしまいます。しっかり食物から葉酸を効率よく摂取するための調理法の正しい知識を知りましょう。
先に結論から言うと
- ステンレス製の多層構造鍋を用いて調理する
- 自家製の野菜ジュースの作成
がおすすめです。
葉酸は水に簡単に溶け出してしまいます。
コロンビア大学の研究者によると10分間野菜を強火で煮た結果、失われる葉酸の量はブロッコリーの69%、ほうれん草の65%、キャベツの57%、アスパラガスの22%という報告がされています。
また、水の量が多いと、葉酸さらに水中に溶け出してしまうので注意が必要です。
そのため、水なしで蒸す必要があるので、ステンレス製の多層構造鍋を使って調理することをおすすめします。コレを用いると葉酸を始め他の栄養素も損失が少なくてすみます。
また、コレ以外にも自家製の野菜ジュースを作成するのも一つの手です。水中に溶けてもジュースなので栄養素を逃がすことなく摂取できます。
市販の野菜ジュースではだいぶ栄養素が失われています。伊藤園の「1日分の野菜」にはコップ1杯(180g)で葉酸は4~75μgと記載されています。平均するとだいたい40μgほどです。
ブロッコリー100gで葉酸120μgであるため、それをもとに自家製ジュースを作った方が遥かに効率的に葉酸を摂取できるのでお勧めです。
2-4.葉酸を積極的に摂取するべき時期
厚生労働省によると、葉酸を積極的に摂取するべき時期は妊娠の1ヶ月前から妊娠3ヶ月までといわれています。
この時期に摂取することによって赤ちゃんが「神経管閉鎖障害」という病気を発症するリスクが下がることがわかっています。詳しくは厚生労働省の「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」を見ましょう。
妊娠を計画している女性、妊娠中の女性にはぜひ押さえておいていただきたい知識です。
3.妊娠中の食事についてその他気をつけるべきこと
健康な赤ちゃんを産むために、妊娠中の食事に関して注意が必要なことは葉酸だけではありません。不足しがちな栄養素や摂り過ぎに注意が必要な栄養素、気をつけるべき食中毒などもあります。
妊婦さんの健康のために、そして赤ちゃんの健康のためにぜひ正しい知識を知っておきましょう。
3-1.葉酸以外で不足しがちな栄養素
葉酸以外で不足しがちな栄養素として鉄があげられます。
鉄は妊娠の中期や末期で普段の倍量摂取する必要があります。通常の食事だと10mg前後だが、妊娠時は20mgほどが推奨されている。下に鉄を多く含む食材を掲載しておくので参考にして食事を摂取してください。
野菜
食品名 | 鉄(mg/100g) |
---|---|
ほしひじき | 55 |
海苔 | 11 |
ごま | 10 |
切り干し大根 | 10 |
パセリ | 7 |
あずき | 7 |
肉・魚
食品名 | 鉄(mg/100g) |
---|---|
あさり | 38 |
豚レバー | 13 |
鶏レバー | 9 |
卵黄 | 6 |
しじみ | 5 |
(五訂増補日本食品標準成分表のデータより引用抜粋)
基本的には厚生労働省の「妊産婦のための食事バランスガイド」を参考にバランスの良い食事をしながら、鉄をしっかりと食事から摂取しましょう。
3-2.摂り過ぎに注意が必要な栄養素
妊婦で摂り過ぎに注意が必要な栄養素はビタミンAです。厚生労働省より「ビタミンAの過剰摂取は胎児に奇形を起こす可能性が高くなる」ということが報告されています。
日本人の食事摂取基準2015によると18~29歳の女性で2700μgRAE/日を超えると危険と言われています。また、推奨量は650μgRAE/日です。
食事による女性の平均ビタミン摂取は平均すると750μg/日と報告されているので、通常の食事だけで十分摂取できています。しかし、サプリメント等を摂取している方はビタミンAサプリ1粒500~600μgであるので、健康のために、と安易に摂取し続けると危険値を超える恐れがあるので注意しましょう。
ビタミンAに関しても安易にサプリメントを摂取せずに食品から摂取するように心がけてほしく思います。
3-3妊娠中に気をつけるべき食中毒
妊娠中はリステリア菌と水銀に気をつける必要があります。
妊娠中は一般の人よりもリステリアという食中毒菌に感染しやすくなっています。リステリア菌は食品を介して感染する菌で、また塩分にも強い上に、冷蔵庫でも増殖してしまいます。加熱によって予防できるので、その点を押さえておいてほしくおもいます。
リステリア菌による食中毒で主な原因食品として
- ナチュラルチーズ
- 肉や魚のパテ
- 生ハム
- スモークサーモン
などがあげられます。これらの食品は妊娠中は避けるようにしよう。
水銀は魚をよく食べる人で食中毒を起こしやすいです。偏って魚介類を食べないように注意しましょう。
厚生労働省のパンフレットの「これからママになるあなたへお魚について知っておいてほしいこと」は非常にわかりやすく簡潔に食生活をチェックできます。ぜひ参考にしてほしくおもいます。
4.健康な赤ちゃんを産むために
健康な赤ちゃんを産むために葉酸は必要不可欠です。しかしながら安易にサプリメントに頼るのではなく、ステンレス製の多層構造鍋を使ったり野菜ジュースを作ったりしつつ、しっかりと食品から摂取していってほしく思います。
また、ビタミンAの摂り過ぎや鉄分不足、リステリア菌や水銀量など妊婦さんが気を配るべきことは多いです。それも健康な赤ちゃんを産むためであると思って、しっかり正しい知識を学んで実践していきましょう!
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