血液検査でコレステロール値が高いと言われて不安だ、改善するためにも原因をしっかり知りたい!とお思いではないでしょうか。
コレステロール値が高いと、動脈硬化を引き起こし、脳梗塞や心筋梗塞などの命に関わる病態になることが知られています。
しっかり改善するためにも、何が原因でコレステロール値が高いのか判断して対処していきたいですよね。また、病気が原因ではないかという不安も何とかしたいのではないかと思います。
そこで、一般の方でもLDLコレステロールが高い原因を見つけられるよう、医学書やガイドラインをもとに、簡単に3ステップで解説しました。
ぜひこの記事を読んで、ご自身のコレステロール値が高い原因をしっかりと知り、改善していきましょう!
1.あなたのコレステロールが高い原因は何?原因を特定する3ステップ
原因を特定するためには、遺伝が原因でない事、病気でないことを確認した後に生活習慣のうちの何が原因か見ていくのが良いでしょう。
というのも、病気や遺伝が原因の場合は、完全に対処法が異なるためです(生活習慣の改善だけではどうにもならないことも多い)。そのため、まずは遺伝や病気が原因ではないことを確認しましょう!
Step1.遺伝が原因の場合の見分け方
実は、遺伝が原因の高コレステロールの方は珍しくなく、500人に1人、高コレステロールの治療を受けている人の8.5%を占めるという報告があります1)。治療法も普通の高コレステロール血症とは違うため、しっかりと見つけることが重要になります。
コレステロール値が230mg/dl以上で、以下の3つのうちどれか一つでも満たせば、遺伝が原因の「家族性高コレステロール血症」の可能性が高いです。
- アキレス腱や手の甲、ひざに、栗の粒くらいの大きさのできものを触ることができる
- 親や子に家族性高コレステロール血症と診断された人がいる
- LDL受容体遺伝子に異常があるという指摘を受けた
これらに思い当たる節がなければ、遺伝が原因の可能性は低いです。Step2.病気が原因の場合の見分け方に進むと良いでしょう。
しかし、これらに該当する場合は早めに病院にいき、診察を受けましょう。早くから治療を始めるかどうかで死につながるリスクが大きく変わります。特に、上記の条件のうちのどれかを満たし、子供のころからアキレス腱や手の甲でのできものがあり、心筋梗塞などになったことがある、総コレステロール値が550mg/dl以上といった方は今すぐにでも。
Step2.病気が原因の場合の見分け方
病気が原因の高コレステロール血症は、ものによっては見逃されやすい傾向にあります。治療法も異なるので、見逃さないことが重要になってきます。
- 甲状腺機能低下症
- 糖尿病
- ネフローゼ症候群
- 閉塞性黄疸
- 原発性胆汁性肝硬変
もうすでにこれらの病気があることがわかっている人は簡単ですが、病気があるのか不安な方にとってはこれらをずらっと言われたところで何のことやらとお思いではないでしょうか。
そこで、血液検査や尿検査からコレステロールが高くなる病気を見つける方法を表にまとめました。面倒かもしれませんが、血液検査の結果とひとつひとつ見比べてみると良いでしょう。(検査によっては調べられていない項目もあります。)
検査で見られる異常 | 考えられる高コレステロールの原因 |
---|---|
| 甲状腺機能低下症 |
| 糖尿病 |
| ネフローゼ症候群 |
| 閉塞性黄疸 原発性胆汁性胆管炎(PBC) |
遺伝にも、これらにも、当てはまらない場合は、生活習慣が原因です。step3.高コレステロールの原因となる生活習慣に進みましょう。
もし、これらの病気に当てはまりそうなものがある方は医師に相談しましょう。原因となる病気の治療を行うことが必要ですので、生活習慣を変えるコレステロールの下げ方は通用しないことも多いです。
Step3.高コレステロールの原因となる生活習慣
これまでおはなししてきた二つに当てはまらなかった場合は、生活習慣が原因です。また、生活習慣が原因の方が一番多いとも言われています。
高コレステロール血症は動脈硬化を引き起こし、脳梗塞や心筋梗塞などの命に関わる疾患を引き起こす可能性があります。たかだか生活習慣と軽視せず、しっかりと改善していきましょう!
原因として考えられている生活習慣
- 肥満
- 運動不足
- 食生活
- タバコ
- ストレス
- お酒
特に肥満が最も大きな原因ではないかというのが最近広く考えられています。肥満の方は優先的に食事制限と運動をしっかり行い、健康を目指しましょう。
2.遺伝が原因の高コレステロールとは
高コレステロールとなる遺伝病として、家族性高コレステロール血症が挙げられます。
家族性高コレステロール血症の人はかなり多い!
これまでは家族性高コレステロール血症は稀な病気だと考えられてきました。しかし、実際には遺伝病の中では最も多い病気だということが最近分かってきました。全国で約25万人が家族性コレステロール血症であると推定されています。
早期発見、早期治療が最重要
家族性高コレステロール血症は若いうちから動脈硬化が引き起こされるので非常に危険です。
また、しっかり治療を行えば、動脈硬化の発症や進行するのを予防することができます。そのため、疑ったら早く病院に行っていただきたく思います。
3.コレステロールを上昇させる病気
コレステロールを上昇させる病気が原因だとわかった場合の鉄則は、原因疾患の治療です。
甲状腺機能低下症
病気が原因の高コレステロールとしては最多です。しかも見逃されやすい傾向にあります。甲状腺機能が低下すると同時に、LDL受容体の合成が抑えられ、その結果高コレステロールとなります。
症状
症状としては全身の疲れた感じや皮膚の乾燥、便秘、声がかすれるなど非常に様々な症状を引き起こします。そのため、症状で判断するのは不可能です。
発見のために
血液検査でFT4、FT3のチェックが重要です。FT4が0.87 ng/ml 以下、FT3が2.35 pg/ml 以下なら甲状腺機能低下が原因と考えられます。ただし、通常の血液検査でFT3やFT4を検査することは多くないので見逃されやすいと言えるでしょう。
糖尿病
糖尿病もコレステロール値が高いことで指摘されることがあります。また、糖尿病の場合、中性脂肪が高い、HDLコレステロール値が低いという特徴もありますので、血液検査をみて発見しやすい傾向にあります。
ただし、糖尿病の場合、糖尿病の治療だけでは高コレステロールに対して十分じゃないケースも多いです。その場合は薬剤を追加することになります。
メカニズム
糖尿病では、小腸の粘膜細胞にあるNCP1L1の合成が促進されます。NPC1L1はコレステロールを体内に取り込むトランスポーターです。これにより、コレステロールの吸収が上昇し、高コレステロールとなります。
ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群とは、腎臓が障害されることにより、蛋白尿がでて、血液中からタンパク質が失われる病気の総称です。
血中からタンパクが失われるため血液の濃度が薄くなってしまうため、血液から細胞中に水分が移動し、全身でむくみを引き起こします。(正確には違いますが、わかりやすい理解のために簡潔に説明しました。)
また、タンパク質が体内から大量に出ることにより、タンパク質不足の解消手段の一つとして肝臓がコレステロール合成を盛んに行います。これにより高コレステロール状態となります。
発見のために
全身でむくみや胸水、腹水などがみられ、蛋白尿がでていること、血液検査でアルブミン3.0g/dl以下であることによって発見されます。これも一般の方が症状だけで発見するのはまず不可能です。
閉塞性黄疸
胆管がつまってしまうことで、本来腸の中に排出される胆汁が血液に逆流することでおこる黄疸のことを閉塞性黄疸と言います。
メカニズム
食事中の脂質が吸収されるために必要な胆汁が分泌されません。そのため食事からの脂質の吸収が不足いてしまいます。これにより小腸で酵素が減少し、HDLコレステロールが低下し、LP-Xという異常リポ蛋白により総コレステロール値が上昇すると考えられています。
発見のために
特徴的な症状として、皮膚や目が黄色くなったり、尿がコーラ色になる、白っぽい便などが見られます。また、血液検査ではビリルビン、γGTP、ALPの上昇が見られます。
その他の病気と違い、わかりやすい症状が見られるため、一般の方でも異常に気付きやすいと思います。
原発性胆汁性胆管炎
胆汁がうまく通過できないことにより、胆汁が通る管である胆管の細胞で炎症が起こり、肝臓内に胆汁が溜まってしまう病気です。進行すると肝臓の細胞が障害され、肝硬変、肝不全へと至ります。
多くの患者さんでは無症状ですが、一部の患者さんで皮膚のかゆみ、黄疸、静脈瘤、腹水などがおこります。
発見のために
血液検査でALP、γ-GTPの上昇、血清IgM値高値、抗ミトコンドリア抗体陽性が見られます。
どちらかというと明らかな異常な症状が見られた場合に、検査してみたら発見されるというケースが多いです。
まとめ
コレステロール値が高い原因を知ることは、改善を望む場合なによりも大切なことです。原因によって治療法も対策も全て異なります。
しっかり自分の場合の原因が何なのか、改めてこの記事を読んで見つけ、医師と相談しながらコレステロール値を改善していきましょう!
参考文献
- 1)家族性高コレステロールについて:日本動脈硬化学会
- 2)コレステロール-基礎から臨床へ-
- 3)動脈硬化性疾患予防のための 脂質異常症治療ガイド 2013年版