妊婦はアルコール厳禁!赤ちゃんへ影響がある時期や量についても解説

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

妊婦はアルコールをとってはいけない」と聞いたことがありますか?おそらくこの記事にたどり着いた皆さんは、1度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

結論から言うと、妊娠中のアルコール摂取は絶対にダメです。

そこで今回は、「妊娠中のアルコール摂取がなぜダメなのか?」「少量でも良くないのか?」「こんなときはどう乗り切ったらいい?」といったことを中心にお伝えします。

正しい情報を知って、お腹の赤ちゃんを守ってあげましょう。

スポンサードリンク

1.妊娠中のアルコール摂取は「胎児アルコール症候群」を招く

赤ちゃんはアルコールによる影響をとても受けやすい状態にあるのです。というのも、赤ちゃんの肝臓は未熟で、アルコールを分解する肝臓がうまく働かないからです。

お母さんがとったアルコールは、胎盤を通して赤ちゃんへも運ばれます。赤ちゃんへの影響全般は胎児性アルコール症候群と呼ばれ、様々な障害を引き起こし、奇形や低体重の原因となることが知られています。

胎児性アルコール症候群は特に海外での症例数が多く、アメリカ合衆国保健福祉省は、「妊娠しているなら飲まないで。飲むなら妊娠しないで。」という強いメッセージを発しています。

また妊婦のうつ状態の悪化にもつながる恐れがあると示唆されていることもあり、妊娠中のアルコールはやはり厳禁です。

1-1.胎児性アルコール症候群とは

胎児性アルコール症候群は、奇形、脳障害などの機能障害、精神障害など、妊娠中のアルコール摂取によって赤ちゃんに引き起こされるあらゆる障害のことです。

最近では子どもの成長段階での発達障害や精神障害の原因となることも知られるようになり、胎児性アルコールスペクトラムと呼ばれることもあります。胎児性アルコールスペクトラムは、非遺伝性の精神発達障害の原因としては最多となっています。

また、過去の実際の症例を集めてまとめた研究(国立保健医療科学院生涯保健部が実施)では、妊娠中の飲酒による障害が非常に多岐にわたることを明らかにしています。

実際の研究報告の中では、

妊娠中の母親の飲酒の影響は、成長遅滞、先天奇形、脳の形成異常、睡眠障害、神経学的機能障害、認知力低下、IQ・学習能力の低下、言語発達遅滞、注意欠陥、問題行動と多岐にわたり、さらに子どもが思春期を迎えるまで、長期間にわたり影響することが分かった。

と結論付けられています。

なお、この研究は、

①これまでの研究で観察された、妊娠中の飲酒が子どもに及ぼす影響
②飲酒量のレベルを純アルコール14gの少量飲酒に限定した場合でも、障害が認められるかどうか

の2点を調べることを目的とし、全57編の論文を分析しています。

そのうち、以下の論文で報告されています(1つの論文で複数の障害が報告されているケースが多いため、重複あり)。

・ 成長遅滞 20編
・ 先天奇形 7編
・ 脳の形成異常 2編
・ 睡眠障害 1編
・ 神経機能障害 6編
・ 認知力低下 11編
・ IQ・学習能力低下 7編
・ 言語発達遅滞 5編
・ 注意欠陥 4編
・ 問題行動 5編

このように、出産直後に現れる奇形などの障害と、成長過程で現れる発達遅延や精神障害などがあります。妊娠中のアルコール摂取による影響は本当に幅広く、まだわかっていないことも多いのも現状です。

2.アルコールの影響がある時期と量

妊婦はいつからアルコール摂取に気を付けるべき?少量なら大丈夫?といった内容についてお伝えします。

2-1.妊娠初期こそ気を付けるべし

アルコールを摂取ことは妊娠初期から厳禁です。

妊娠初期の4~12週は脳や心臓、肝臓、腎臓などの臓器や血管・神経が作られる時期で、12~16週はそれぞれの器官の機能が発達します。妊娠初期は、赤ちゃんの身体が作られる大切な時期で、特に赤ちゃんが影響を受けやすい時期でもあります。

妊娠初期は妊娠に気づかない可能性があるため、妊娠を考えている方はあらかじめアルコール摂取を控えておく必要があります。

これを読むと、「妊娠に気づくまでにアルコールを飲んでしまった、どうしよう・・・」と不安に襲われる妊婦さんもいらっしゃるかもしれません。

ですが、アルコールは胎盤を通して赤ちゃんへ運ばれるため、胎盤ができる4週未満であれば影響は比較的少ないと考えられています。妊娠に気づいた時点ですぐにお酒を止めるようにしましょう。

2-2.少量のアルコールでも絶対にNG

少量のアルコール摂取でも胎児性アルコール症候群を引き起こすことがわかっています。

以前は「少量なら大丈夫」などといわれることもありましたが、少量でも胎児性アルコール症候群の報告例があるため、少量でも大丈夫という考えは絶対にNGです。

3.こんなときどうする!?妊娠中のアルコールの対処法

3-1.飲み会はノンアルで乗り切ろう

妊娠中でも飲み会に参加する機会はあるかと思いますが、飲みたい気持ちはグッと我慢。ノンアルコールカクテルや、アルコール0.00%のビール、お茶などで乗り切りましょう。

「一口なら大丈夫だよ」と勧められることもあるかもしれませんが、お腹の赤ちゃんを守れるのはお母さんだけ。強い気持ちを持って、きっぱりと断りましょう。

3-2.ノンアルコールビールは0.00%のものを

ノンアルコールビールは0.00%と表示されたものを選びましょう。ノンアルコールとは、酒税法上「含有アルコール量が1%未満の飲料」を指すため、単なるノンアルコールビールではアルコールを含んでいる可能性があります。

アルコールが全く含まれていないものは、パッケージや缶に「アルコール0.00%」という風に表示されています。この表示を確認してから飲むように気を付けましょう。

3-3.食品・お菓子にアルコールが残っているものは避ける

アルコールが含まれています」「お子様やアルコールに弱い方はご注意ください」といった表示がされている食品やお菓子は避けましょう。

通常の料理や食品に使われるアルコールであれば、加熱する段階で揮発するため食べても問題ありません。しかし、アルコールの風味を生かした食品は、食品中にアルコールが残っているため避けましょう。具体的には以下のような食べ物です。

奈良漬、酒粕を使った甘酒、ウイスキーボンボン、洋酒を使ったパウンドケーキやチョコレート…など

3-4.アルコール消毒は使ってOK

手を消毒するためのアルコール消毒は妊婦さんにとって必要なものです。とくに新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症予防にはアルコール消毒が欠かせません。

感染症は赤ちゃんに影響する可能性が十分に考えられるため、予防のためにも手指の消毒は積極的に行いましょう。

3-5.授乳期もアルコールに注意!

妊娠中だけでなく、授乳期のアルコールもNGです。授乳期には母乳を介して赤ちゃんへアルコールの影響が起きる可能性があります。このアルコールを含んだ母乳によって、赤ちゃんが急性アルコール中毒になったり、障害を起こしたりすることが知られています。

また、アルコールを摂取することでプロラクチンというホルモンが抑制されます。プロラクチンは母乳産生を増加させる働きをするホルモンであるため、これが抑制されると母乳が減る原因にもなりかねません

お酒を楽しむのは、授乳期を無事に乗り越えたあとに取っておきまよう。

4.まとめ

妊娠中のアルコール摂取がいかに危険か知っていただけたでしょうか?

長くなってしまったので、内容を簡単にまとめます。

【妊婦のアルコール摂取について】

    • 妊娠中のアルコール摂取は奇形や障害を起こす可能性があるため厳禁
    • 妊娠初期は特に奇形を起こしやすい
    • ノンアルコールビールは0.00%のものを
    • 食品やお菓子にお酒の風味が残っているものは避ける
    • アルコール消毒は使ってOK 

妊婦がアルコール摂取することの危険性をお伝えしました。正しい知識を持ち、元気な赤ちゃんが産まれてくるのを楽しみに待ちましょう。

 

【参考・参照】

厚生労働省 e-ヘルスネット 

日本産婦人科医会 

胎児期のアルコール曝露の影響に関する前向きコホート研究の動向と少量飲酒が子どもの身体発育に及ぼす影響についての系統的レビュー 国立保健医療科学院生涯保健 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSで簡単に医療の正しい情報をを受け取ることが出来ます。

Related Posts

質問・感想はこちらから