妊婦さんは、チーズの種類によっては注意が必要です。それは、チーズが原因の「リステリア菌食中毒」により赤ちゃんへの影響が知られているからです。
「知らずに食べてしまった!」「このチーズってどうなの?」「チーズケーキは大丈夫?」などと不安や疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
この記事では、妊婦さんがOKなチーズ、またはNGなチーズを一覧表にして解説しています。さらに、チーズの赤ちゃんへの影響についても詳しく解説していきます。
■目次
1.妊婦はなぜチーズがNGなの?
そもそも、なぜ妊婦にとってチーズがNGなのでしょうか。理由や赤ちゃんへの影響を解説します。
1-1.チーズが原因の“リステリア菌食中毒”のリスクがある
リステリア菌食中毒は、チーズ、生ハム、スモークサーモンなどが原因の食中毒です。妊娠中は免疫力が下がりやすく、一般の人よりリステリア菌食中毒に感染しやすくなっており、そのリスクは20倍ともいわれています。(*1)(*2)
リステリア菌食中毒は加熱することで予防できるのですが、チーズ、生ハム、スモークサーモンなどの食品は、加熱せずに食べることが多いですよね。
また一般的な食中毒菌とは違い、リステリア菌は塩分に強く、冷蔵庫の中でも増殖します。そのため、塩分が多く、冷蔵庫に入れているので大丈夫と思われがちなチーズ、生ハム、スモークサーモンが原因となっているのです。
さらに気を付けたいのがリステリア菌が増殖した食べ物でも、味や風味は変わらないということ。「変なニオイがしないからOK!」などという判断はあてにしないようにしましょう。
1-2.リステリア菌に感染することで流産や早産などの原因にも
リステリア菌に感染すると、赤ちゃんが感染した場合、流産や早産、死産の原因になったり、髄膜炎や水頭症、精神・運動障害がみられたりすることが知られています。(*4)
松本市立病院の市立病院通信(*5) にて、産婦人科科長の塩沢功先生が以下のように記載しています。
妊娠している場合、この病気(※)で最も注意すべきことは、仮に母体の症状が軽くても、胎児や新生児に重篤な影響を及ぼす可能性があるということです。
例えば、母体が感染すると20%に流産や死産が、また新生児敗血症が68%に起こるという報告があります。※…リステリア症
さらに、とくに妊娠後期に注意が必要ともされています。
妊娠中の感染では、通常妊娠の初期程胎児が影響を受けやすいものですが、リステリアの場合は妊娠後期の方が早産や死産を起こしやすいのも特徴です。
このような悲しいことが起こらないためにも、リステリア菌食中毒の対策が必要です。
2.妊婦がOK・NGなチーズの種類は?
具体的に、妊婦さんはどのようなチーズを避ければいいのでしょうか。また食べてもいいチーズは?という疑問を解消するために、一覧表をもとに解説します。
2-1.チーズのOK・NG一覧表
妊婦さんがOK、またはNGなチーズは以下の通りです。
種類 | NG | OK |
ナチュラルチーズ | プロセスチーズ =リステリア菌食中毒のリスクが低い | |
違い | 生乳を加熱せずに、乳酸菌や凝固剤でそのまま固めたもの | ナチュラルチーズを加熱して再度冷やし固めたもの |
具体的なチーズ名(※6) | モッツァレラチーズ カッテージチーズ カマンベール ブリ―チーズ ゴルゴンゾーラ(ブルーチーズ ) ゴーダ マリボー チェダー パルミジャーノ・レッジャーノ パルメザン マロワル …など | スライスチーズ 6Pチーズ キャンディーチーズ ブロックタイプチーズ …など |
では、それぞれのチーズについて詳しく解説します。
2-2.NGなチーズは「ナチュラルチーズ」
妊婦さんが気を付けたいNGなチーズは「ナチュラルチーズ」です。というのも、ナチュラルチーズは乳を加熱せずに加工して作られるため、リステリア菌が繁殖してしまいやすいのです。
一般の方は、ナチュラルチーズに多少リステリア菌が繁殖していても、免疫力があるためリステリア菌食中毒になりにくいのですが、妊婦さんは少量のリステリア菌でも感染するリスクがあります。
リステリア菌は熱に弱いため、どうしても食べたい場合は加熱して食べましょう。
海外では多いリステリア菌食中毒
リステリア菌食中毒は日本では件数が少ないと報告されていますが、ナチュラルチーズを食べる習慣がある海外では、リステリア菌による集団食中毒が発生しており、問題視されています。(*4)
日本では輸入されるナチュラルチーズについて、検査でリステリア菌が検出された場合の基準を設けており、リステリア菌の数が多いなどの食中毒のリスクがあるものに関しては輸入禁止などの措置が取られています。(*7)
それでもやはり、免疫力の低い妊婦さんはナチュラルチーズを避ける必要があります。
2-3.ただし、ナチュラルチーズでも国産なら大丈夫!
食品安全員会によると(*4)、国産のチーズは妊婦さんが食べても安全、とされています。
実際に、日本の乳製品メーカーである雪印メグミルク、森永乳業、明治でも、リステリア菌食中毒について「加熱殺菌しているので安全」と公式HPに明記しています。
- 雪印メグミルク チーズのリステリア菌が心配です
- 森永乳業 妊娠中にチーズを食べて大丈夫ですか。ナチュラルチーズのリステリア菌が心配です。
- 明治 妊娠中のチーズの喫食について
なぜ国産のナチュラルチーズが安全なのかというと、日本で製造・販売されている牛乳は殺菌が義務づけられているためです。リステリア菌は加熱することで死んでしまうため、加熱された国産の牛乳から作られたチーズはリステリア菌が繁殖するリスクが低く安全、ということです。
しかし、加熱が必要な「加熱用」と表示されているものは加熱して食べるようにする必要があるため、パッケージをよく確認しましょう。
2-4.ナチュラルチーズかどうかはパッケージ裏を確認
手元にあるチーズがナチュラルチーズかどうか見分けたい場合、製品パッケージの裏面を見てみましょう。原材料名の上に「種類別」という項目があり、ナチュラルチーズの場合は「ナチュラルチーズ」と書かれています。
これは食品表示法に基づいており、輸入品でも同様に記載が必要です。しかし、輸入品の場合は英語などで書かれていることもあります。その場合は販売されている名称(「モッツァレラチーズ」など)で判断するしかないでしょう。
また、海外ではあまりプロセスチーズを食べる習慣がないため、輸入品=ナチュラルチーズの可能性が高い、と考えてしまうのが手っ取り早いかもしれません。
どうしても輸入のチーズを食べたい場合は、しっかりと加熱してから食べましょう。
2-5.リスクが低いOKなチーズは「プロセスチーズ」
プロセスチーズは安心して食べられるOKなチーズです。
ナチュラルチーズを加熱して溶かし固めて作られ、加熱される工程が含まれているためリステリア菌食中毒のリスクは低くなります。(*3) プロセスチーズは、スライスチーズや、6Pチーズ、キャンディータイプのものなどがあります。
2-6.チーズを加熱する場合はしっかりと
厚生労働省による「これからママになるあなたへ」のパンフレット(*1) では、食中毒の予防のためには食品の中心部分の温度が75度以上で1分間以上の加熱が必要とされています。
「75度以上で1分間以上」というのは、正確には中心温度計というものがないとわかりませんが、国産のチーズであればもともと加熱されているのでそれほど気にしなくても問題ありません。
自分で火を通す場合は、中までしっかりと火が通るように火を強くしすぎないようにしたり、素早く火が通るように薄く切ったりするなどして工夫しましょう。
3.こんなチーズ料理やお菓子は大丈夫?
3-1.チーズフォンデュ
国産のチーズで作られているものとわかれば安心して食べて大丈夫です。ホームパーティーなどで手作りのものを食べる場合は、チーズの種類を選べるので安心ですね。
ただ、お店などで出てくるチーズフォンデュで使われているチーズの種類がわからない場合があります。加熱しながら食べる料理ではありますが、はじめのうちは十分に加熱されていない可能性があるため、しっかり火が通ったことを確認してから食べるようにしましょう
3-2.チーズケーキ
国産のチーズを使ったチーズケーキであれば、安心して食べられます。手作りのチーズケーキでも、国産のチーズを使っていれば問題ないでしょう。
国産のものかわからない場合でも、焼いて作られるチーズケーキはリステリア菌食中毒のリスクを下げることができます。
OK =加熱して作られるチーズケーキ | NG =加熱されていないチーズケーキ |
ベイクドチーズケーキ ニューヨークチーズケーキ バスク風チーズケーキ スフレチーズケーキ | レアチーズケーキ |
上OKである「ベイクド」「ニューヨーク」「バスク風」「スフレ」の4つは基本的に火を通して作られています。また、「半熟スフレ」や「レアスフレ」などと名前がついているチーズケーキもありますが、焼きあがった後にとろっと溶ける食感を指すことが多いため、基本的には火を通して作られています。心配な場合はお店の人に聞いてみましょう。
レアチーズケーキ、ティラミスは加熱せずにそのままチーズを使って作られるため、国産のチーズが使われているものかどうかわからない場合、妊娠中は避けておきましょう。ほかにも、チーズを加熱せずに作るクリームチーズのデザートなども、同様に控えましょう。
チーズ以外でも気を付けたい食べ物
リステリア菌食中毒の原因となるのは、チーズだけではありません。生ハムやスモークサーモンなどの、加熱してそのまま食べない製品もリスクがあるとして注意が呼びかけられています。
チーズにはタンパク質やカルシウムも含まれるため、妊娠中の栄養補給にはぜひ食べたい食品です。食べても安心なものを知り、上手に取り入れたいですね。妊娠中の食生活は不安に思う場面が多いかもしれませんが、正しい知識を身に付け、カシコク対策していきましょう。
【参考・参照】
(*1)厚生労働省 これからママになるあなたへ<https://www.forth.go.jp/topics/item/listeriosis_for_pregnant_woman.pdf>
(*2)横浜市 リステリア症について<https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/eiken/kansen-center/shikkan/ra/listeria1.html>
(*3)厚生労働省 「リステリア」による食中毒 に注意してください。<https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000070272.pdf>
(*4)食品安全委員会 【読み物版】 妊娠時に特に注意すること その2 平成28年1月29日配信 <https://www.fsc.go.jp/e-mailmagazine/mailmagazine_h2801_r2.html>
(*5)松本市立病院 市立病院通信 妊娠中に注意すべき感染症…リステリア症<https://osan-anshin.net/wp-content/uploads/2016/05/201602.pdf>
(*6)明治 チーズの種類<https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/know/lovable-milk/cheese/>
(*7)厚生労働省 リステリア・モノサイトゲネスに関するQ&Aについて<https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000070322.pdf >