アスタキサンチンは目にいい、老化を防止するなどといわれています。とはいうものの、本当に効果があるのか半信半疑にお思いではないでしょうか。
実は、アスタキサンチンの効果について私たち医大生で医学論文を基に調べてみると、世間一般で言われている効果の多くがまったく根拠がないことがわかりました。
というのも、目の調節機能の改善には効果がある可能性が一部の論文で示されていました。しかし、美肌効果やダイエットなどのそれ以外の効果についてはまったく根拠が見当たりませんでした。
当記事を読むことでアスタキサンチンについて正しく知ってもらい、生活に取り入れるか判断してほしく思います。そうすることで使う必要のないものにお金をかけすぎず、あなたの健康を守ることができるようになります。
1.アスタキサンチンの科学的根拠に基づく効果
アスタキサンチンの効果について科学的根拠を徹底的に検証しました。 検証元は世界中の医学論文が検索できるサイト(pubmed)とアメリカ最大の栄養データベース(Natural medicine comprehensive database)の二つを中心に調べ上げました。
アスタキサンチンの効果の可能性として考えられているのは目の調節機能改善です。
また、それ以外の効果に関しては信頼できる科学的な研究データが見当たりませんでした。それらについては6.科学的根拠のない効果でまとめてありますので、参考にしてみてください。
アスタキサンチンを目の調節機能の改善に用いるのは有効かもしれません。しかし、それ以外の効果に関しては利用しても効果がない可能性が高いことには注意しておきましょう。
- 1日6~12mgの摂取(12mg/日以上は副作用の可能性があるので摂取しない)
- 4週間ほど続ける
2.目の調節機能を改善するメリット
目の調節機能を改善することで、疲れ目や目のかすみ、近視などの一部を改善することができます。
疲れ目や目のかすみ、近視といった状態の原因の一つはピント調節機能が低下していることです。アスタキサンチンは目のピント調節機能を改善することが一部の研究により報告されています。
コンピュータ作業者26名への無作為ランダム化比較試験において、アスタキサンチン5 mg/日を4週間投与した。
この結果、疲れ目と視調節力の改善がみられた。
参考文献:Journal of Traditional Medicines 2002
眼精疲労の成人129人を対象とした二重盲検試験において、アスタキサンチンを6~12 mg/日を4週間摂取させた。
その結果、6 mg/日以上摂取すると、眼精疲労度検査で調節機能の向上および自覚症状の改善がみられた。
引用文献:臨床医薬 2005
これらの研究より、目の調節機能改善のためにアスタキサンチンを用いるのは一つの手段としては良いでしょう。ただし、このことについて一般の方が誤解しやすい4つの注意点が存在します。
目の調節機能改善について誤解しやすい4つの注意点
生活にアスタキサンチンを取り入れる前に一般の方が陥りやすい4つの誤解について知っておいてほしくおもいます。
- アスタキサンチンは目を良くするわけではない。
- 疲れ目や目のかすみの全てを改善するということではない。
- 即効性はない。
- 目の調節機能の改善が目的なら目薬のほうがよい
アスタキサンチンは目を良くするわけではない。
アスタキサンチンが視力をアップするということを示す研究結果はありません。
アスタキサンチンで効果が示されているのは疲れ目などで低下したピント調節機能の改善だけです。ピント調節機能が改善しても目はよくならないので注意しましょう。
というのも、アスタキサンチンについて目の調節機能改善と書いてあるため、目を良くすると勘違いする方がいます。また、そういう表記をしている健康商品もいくつか見られます。
しかし、目のピント調節機能が改善することで視力が上がったりするわけではありません。目が良くなる成分として勘違いしないようにしましょう。
疲れ目や目のかすみ、近視の全てを改善するということではない
アスタキサンチンを食べても疲れ目や目のかすみ、近視の全てが直るわけではありません。
というのも、近視の原因は複数あります。ピント調節機能の低下はその原因の一部にすぎません。そのため、原因が異なればアスタキサンチンを用いても症状は改善しません。
アスタキサンチンを摂取するだけで近視が治る、疲れ目が治る、などのような過度の期待はしないようにしましょう。
即効性はない。
アスタキサンチンの調節機能改善は即効性があるものではありません。もし、即効性を求めるのであれば目薬等の方が良いでしょう。
というのも、食事やサプリでの摂取の場合、消化管で吸収され肝臓にいたり血流に乗って全身をまわり目に至ります。このような過程を経るため、すぐに目まで至りません。
また、先ほど根拠として示した科学実験においても4週間という時間を要しています。 すぐに効果を求めるならば目薬等を使ったほうがはるかに効果的です。
目の調節機能の改善が目的なら目薬のほうがよい
目の調節機能を目的とする場合、科学的データがまだ少ないアスタキサンチンよりも、しっかりとした治験などにより効果が示されている目薬のほうがよいでしょう。
目の調節機能を改善する成分として
- ビタミンB12
- ネオスチグミンメチル硫酸
が挙げられます。
これらの成分を含む代表的な商品として「サンテアスティ」などがあります。どちらもドラッグストアで容易に買えるので、疲れ目などの時にはこれらの目薬を利用することがオススメです。
4.アスタキサンチンの副作用
アスタキサンチンは経口摂取では安全と考えられています。
ただし、
- 妊婦
- 12mg以上の過剰摂取
では研究データがないため、サプリ等で摂取するのは避けたほうが良いでしょう。
4.サプリで摂る場合の注意点
アスタキサンチンをサプリで摂取する場合、アンチエイジングや健康にいいといった抗酸化効果はない可能性が高いです。というのも、抗酸化物質を含む野菜などは健康にいいが、抗酸化サプリメントは健康に効果がないことがアメリカ国立衛生研究所により示されているからです。
45歳以上の約4万人の女性を対象とした女性健康調査では、ビタミンEサプリメントが心臓発作、脳卒中、がん、加齢黄班変性症や白内障のリスクを減らすことはないことがわかった。
女性の抗酸化物質に関する心臓血管調査では、ビタミンC、Eおよびベータカロチンのサプリメントが心血管系に対して有効ではないとわかった。また40歳以上で心血管系疾患のリスクの高い女性医療スタッフ8,000名以上を対象にした研究では、糖尿病やがんの発病を抑える効果もないとわかった。またこの調査で、65歳以上の女性の認知機能低下を遅らせることもないことがわかった。
14,000名以上の50歳以上の男性医師を対象とした試験を行った。この調査でもビタミンEサプリメント、ビタミンCサプリメントいずれも、主な心血管系イベントやがん、白内障のリスクを減らすことはないとわかった。実際、この調査では、ビタミンEサプリメントと脳出血リスクの増大に関連性があることが認められた。
35,000名以上の50歳以上の男性を対象として、セレニウムとビタミンEの癌予防効果試験を行った。この臨床試験では、セレニウムとビタミンEサプリメントを単独もしくは併用で摂取しても前立腺癌を予防することはないとわかった。この臨床試験の被験者を長期にわたり経過観察した結果、ビタミンEサプリメントを単独で摂取した男性は、プラセボを摂取した男性より前立腺癌の発症率が17%高かった。
参考元:Antioxidants and Health アメリカ国立衛生研究所
これらのことを考えると、抗酸化物質を含む野菜や果物による健康効果とサプリメントによる健康効果は大きく異なるでしょう。
健康やアンチエイジングなどの効果を期待する場合には、サプリメントよりも野菜や果物のような抗酸化物質を多く含む食材を食べる方が良いでしょう。
5.アスタキサンチンを多く含む食材
アスタキサンチンを多く含む食材としては鮭、いくら、エビ、カニなどの甲殻類や魚類などです。
食品名 | アスタキサンチン(100gあたりの含有量) |
---|---|
オキアミ | 4.0mg |
紅鮭 | 3.7mg |
いくら | 3.0mg |
金目鯛 | 3.0mg |
銀鮭 | 2.3mg |
毛ガニ | 1.1mg |
甘エビ | 1.0mg |
いくら | 1.0mg |
キングサーモン | 0.9mg |
また、抗酸化作用を考えると他の食べ物を検討するのも良いように思います。抗酸化物質はアスタキサンチン以外に多くの食材に含まれます。代表的なものとしてはビタミンEやビタミンA、リコピンなどがあり、野菜や果物に多く含まれています。
6.科学的根拠がない効果
以下の効果に関しても医学論文を検討しましたが、効果があったとする信頼できる研究が見当たりませんでした。
- 美肌
- ダイエット
- 疲労回復
- 病気の予防
- 脳の健康
- 運動機能上昇
- 加齢性黄斑症
- 消化不良
- 男性不妊症
- 更年期障害
基本的にこれらの作用を目的とする場合はアスタキサンチンを利用しない方がいいでしょう。
もし、科学的根拠がないものについて利用するなら、副作用やサプリで摂取する際の注意点を知っておくことが重要です。そうすることであなたの健康を守ることができるようになるでしょう。
7.まとめ
アスタキサンチンは目の調節機能改善の効果が一部で考えられています。
しかし、他の作用を目的とする場合はオススメしません。科学的根拠のないものであることを認識し、お金をかけすぎないようにしましょう。
この記事を読むことで、正しくアスタキサンチンに向き合い、生活に取り入れましょう!
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