亜鉛は髪に効果的だと言われています。効果があったというような記事もいくつか見るけれど、本当に効果があるのか気になる!といった方も多いのではないでしょうか。
亜鉛と髪の関係性について、医学生として複数の論文を調査してみました。
結論から言うと、亜鉛が育毛に効果があるということは実証されていません。ただし、亜鉛不足による亜鉛欠乏症が原因の脱毛の場合、亜鉛を摂ることで原因をなくすことができるので髪が戻ってくる可能性が考えられています。
当記事では亜鉛の効果の科学的根拠や、どういう人に効果があるのかを簡単にまとめました。また、科学根拠のあるおすすめの育毛法も調べ、わかりやすくまとめました。
どれもすぐにあなたの生活に生かせるものばかりとなっているので、是非実践していただきたく思います。
目次
1.すぐにわかる!亜鉛の髪への効果
亜鉛が本当に育毛に効果があるか知りたい方は多いかとおもいます。
亜鉛を摂取すると髪が生えるということで様々な健康食品に利用されています。しかし、亜鉛は亜鉛欠乏症の場合を除いて育毛に効果があるという科学的根拠はありません。私の意見としては、育毛を目的とするならばそ科学的な根拠のある方法を試す方がいいように思います。
この項目では亜鉛の髪に対する効果と科学的根拠をはじめ、自分が亜鉛欠乏症かどうかを判断する方法、副作用といった正しい亜鉛の知識を知ってもらおうと思います。
1-1.髪への効果と科学根拠
亜鉛が髪に効果があるのかどうか
- pubmed(世界中の論文を検索できるサイト)
- natural medicine database(アメリカの成分データーベース)
で調べてみました。
しかし、亜鉛が育毛に効果があるとする論文は見当たりませんでした。また、国民健康・栄養研究所には「脱毛症には効果がないことが指摘されている」との記述もあります。
このことから考えて、亜鉛欠乏症の方以外では亜鉛は育毛には効果がないでしょう。
1-2.亜鉛欠乏症の脱毛には効果ある
亜鉛欠乏症では脱毛をはじめ、下痢や味がわからなくなる味覚障害などといった症状を示します。亜鉛欠乏症は亜鉛をしっかり食べることで改善します。
もしかしたら自分は亜鉛欠乏症なのかもしれない、と気になる方も多いでしょう。簡単に自分が亜鉛欠乏かどうかわかるよう解説していきます。
自分が亜鉛欠乏症かどうか
まず、普通に食事を摂取している場合は亜鉛欠乏症になることはまずないでしょう。
日本人の食事摂取基準2015によると、亜鉛の必要量は男性では8mg/日、女性では6mg/日であるとされています。そして、厚生労働省の平成25年の国民・栄養調査によると20歳以上で男性は平均8.9mg/日、女性は平均7.2mg/日摂取しています。そのため、健康で普通の食事をとっている人では亜鉛不足ということにはめったになりません。
亜鉛欠乏症の方で多いのは
- 無理なダイエット中の人
- インスタント食品のみなど偏った食生活の人
- 糖尿病
- 慢性腎不全
- 肝不全
- 利尿薬を飲んでいる患者
などです。
特にあまりにも不摂生な食生活を送っている方は、亜鉛欠乏症の可能性があります。
1-3.亜鉛の吸収率が悪いから大量に摂るべきって聞いたけどどうなの
インターネット上のサイトでは、亜鉛の吸収率は非常に悪いため食事摂取基準での調査よりも多く摂るべきだというサイトなどを見かけます。実際どうなのか調査してみました。
たしかに、亜鉛の体内への吸収率は30%程度とされています。しかし、厚生労働省はそれも踏まえた上で食事摂取基準を算定していました。
体内に必要な量というのは男性3.450mg/日、女性3.015mg/日です。量によってかわる吸収率を計算に含めた結果男性では8mg/日、女性では6mg/日という必要量が算出されています。
参照:日本人の食事摂取基準2015の296-297ページ
そのため、吸収率が悪いからといって過剰に摂取する必要はありません。それどころか、むしろ亜鉛の過剰摂取による副作用がでる可能性があります。
1-4.亜鉛の副作用
亜鉛は過剰に長期間摂取することにより、重篤な副作用があることが報告されています。多量に飲むと、下痢や吐き下し、胃の痛みや発熱などが起こるといわれています。
特に、サプリメントとして1日100mg以上摂取した場合に、前立腺がんを引き起こす可能性が上昇することが報告されています。
普通の食事ではこれらは起こりません。しかし、亜鉛を過剰に長期的に摂取すると腸で銅を吸収するのを邪魔するようになります。これにより銅欠乏や活性酵素除去酵素が増えすぎるなどが起き、その結果、銅欠乏による貧血や、活性酵素が過剰になり細胞を傷つけることでガンになったりするのです。
気分が悪くなるだけでなく、最悪死に至るガンを引き起こすので過剰摂取には十分注意が必要です。必ず用量を守るようにしましょう。
安全に摂取できる量ってどれくらい?
安全に摂取できる量は、厚生労働省によると男性は40-45mg/日、女性は35mg/日であると報告されています。食事だけで10mg程度摂取していることを考えると、1粒15mg含まれているサプリなどは2粒以上摂取しない方が良いかと思います。
2.科学根拠のあるおすすめ育毛法
私の意見としては亜鉛で育毛を目指すより、しっかりとした科学的な根拠のある方法で育毛を目指す方が良いように思います。
この項目では
- 育毛剤
- 病院で貰う薬
- 植毛
のそれぞれについて科学的根拠のあるものをわかりやすく解説しました。ご自身に合ったものを選んでいただきたく思います。
簡単に特徴を説明します。
メリット | デメリット | |
育毛剤 | 手軽に自宅でもできる 副作用がほとんどない | 時間がかかる |
病院でもらう薬 | 飲むだけで良い 医師に管理してもらえる | 時間がかかる 診療費がかかる |
植毛 | すぐに効果を発揮する | 上二つに比べ科学的根拠のレベルが下がる 値段が高い |
一番おすすめなのは科学根拠のある育毛剤による育毛です。ドラッグストアなどで手軽に買うことができ、用量を守れば副作用がほとんどないからです。
2-1.科学的に効果がある育毛剤
育毛に効果があるとしてミノキシジルという成分があります。この成分には複数の実験で効果が示されており、非常に信頼性の高い科学的根拠があります。
また、これらの実験で副作用は報告されていません。安全な成分と言えるでしょう。
日本では大正製薬の「リアップX5」という商品にのみ、ミノキシジルが含まれる育毛剤として発売されています。薬剤師のいるドラッグストア等で買うことができるので手軽です。
とはいうものの、4ヶ月〜1年は続けないと効果がでないことがわかっています。ほんの数ヶ月使っただけでやめてしまわないよう、おすすめします。
科学的根拠については、ランダム化比較試験(非常に科学的な信頼性の高い試験)で9件ミノキシジルと育毛の関係を調べた研究があります。
2%、3%ミノキシジルを用い約150例の男性患者を対象とした12週間の3件のランダム化比較試験とそれに引き続き24ヶ月の前後比較試験でプラセボと比較し、1年以上の長期投与において有意に発毛を促進させ、毛髪量が増加させ、重篤な副作用は生じなかった。
2%及び5%ミノキシジルを用いた12カ月及び24カ月までの2件のランダム化比較試験において、5%ミノキシジルは2%ミノキシジルと比較して有意に発毛を促進させ毛髪量が増加したが、全身的な副作用は生じなかった。
さらに国内における男性患者を対象とした1%及び5%ミノキシジルの24 週までのランダム化比較試験では、1% と比較し5% ミノキシジルの有意な発毛効果が示され,副作用発現率に有意差はなかった。
引用:日本皮膚科学会「男性脱毛症診療ガイドライン」
2-2.病院で貰う薬
病院で貰うことができるフィナステリド(商品名ではプロペシア)も科学的に効果があることがわかっています。ただし、こちらは女性では利用できないということと、まれに肝臓に障害が起こる副作用があることには注意して欲しく思います。
飲むだけでよく、また医師の管理を受けながらの治療になる点が最大のメリットです。
フィナステリドの実験では海外で8件、日本で1件の非常に良質な研究が見つかりました。これらによると、1mg/日投与した際の頭頂部の写真評価で、軽度以上の改善効果が58%以上、何かしら改善か見られたというのは実に98%であったことが報告されています。
これも6ヶ月以上の時間を有することがわかっています。続けることが肝心です。
2-3.植毛
植毛には自然植毛と人工毛植毛があるが、自然植毛の方をおすすめします。
自然植毛について
自然植毛は即効性があるものの、値段が20-100万と高く、外科手術であるため体に負担も大きいです。また、植毛での改善効果のエビデンスレベルはフィナステリドやミノキシジルに比べて低いです。そのため、上記の二つを試してみてもどうにも効果がなかった場合のみに選ぶにとどめていただきたく思います。
人工毛植毛について
人工毛植毛はおすすめしません。拒絶反応による頭皮環境がさらに悪化することをはじめ、多くの副作用が報告されているからです。アメリカでは既に人工毛は有害機器として禁止されています。
3.生活の改善
育毛をする上で脱毛の進行を遅らせることは非常に重要です。脱毛の進行を遅らせることは生活を改善することで容易に達成できます。生活を改善するのは面倒かもしれないが、髪のためだと思ってしっかり取り組んでみてほしくおもいます。
ポイントは3点です。
- 食事
- 運動
- 頭皮環境を整える
3-1.育毛に良い食事について
食事に関してはタンパク質・ビタミン・ミネラルが髪の成長に重要です。
タンパク質は肉や魚に多く含まれ、普通の生活で十分に足りています。しかし、ビタミン・ミネラルは不足しがちなときがあります。これらは多くの食物に含まれるため、たいてい不足分はほんのわずかです。そのため、ビタミンは野菜を意識的に取ること、亜鉛は牛肉(特にレバー)やカキなどを意識的に摂るようにするのがいいでしょう。
3-2.育毛のための日々の運動
運動に関しては数十分ほどのウォーキングをするのが良いでしょう。いちいち時間を取るのが面倒な方は、階段を積極的に利用したり、自転車で行動していた範囲を歩いてみる、など日常生活に取り入れると効果的です。
3-3.頭皮環境を整える
頭皮環境を整えるコツは
- 日の光を浴びすぎないようにすること
- シャンプーしすぎないこと
の二つです。
日の光を浴びる時間が長いと頭皮が紫外線でぼろぼろになってしまいます。長時間外に出る際には帽子などを着用しましょう。
シャンプーについては1日1回で爪を立てないように気をつけるのが良いでしょう。
4.まとめ
亜鉛は髪への効果がない可能性が高いこと、代替案としての科学的根拠のある育毛法3つをお話ししてきました。
育毛までの道はなかなか時間がかかるものであるため、せっかくなら効果が実証されているものを選ぶ方が良いのではないだろうかとおもいます。そして、良いことを聞いたなあ程度で終わらせるのではなく、しっかりと実践して効果を出していって欲しく思います。
当サイトを読んでくれた方が髪のなやみから解放され、充実した生活に戻れるようになることを楽しみにしています。
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