「妊婦検診で貧血と言われてしまった」「貧血気味なので貧血にならないか心配」などと、妊娠中の貧血に悩む方は多いのではないでしょうか。
妊娠中は血液の量が増えるため貧血になるリスクが高く、妊婦さんの約4人に1人が貧血 というデータもあります。貧血気味の方と合わせると、かなりの割合の方が気を付けなければいけません。
貧血は食べ物に気を付けることで対策が可能です。今回は、妊婦さんへの貧血指導を行ってきた管理栄養士が、おすすめの食べ物15つを厳選して紹介していきます。
1.妊娠中の貧血について知っておきたいこと
妊娠中に貧血になりやすい理由
貧血の中で最も多いのが「鉄欠乏性貧血」ですが、女性は月経による鉄の損失があるため、もともと貧血や貧血気味の方が多い傾向があります。
妊娠中は血液の量が増えて血が薄まった状態になるため、ヘモグロビンの濃度が低下してしまいます。
さらに、赤ちゃんが鉄を蓄えるのに使われるため必要量が増し 、貧血気味の方が貧血になったり、貧血の方は貧血がさらに進んでしまったりするリスクがあります。
貧血の改善は母子の健康を守る
ヘモグロビンの大きな働きは酸素を全身へ運搬することで、赤ちゃんへも酸素を運搬しています。妊娠中の貧血で気を付けなければいけないことは、貧血により早産や、出産時の大量出血のリスクを高めてしまう ことです。
また、出産後も、低出生体重児、赤ちゃんの貧血、母乳分泌不全なども関連があると報告されています。
妊婦さんのためにも、赤ちゃんのためにも貧血の対策が大切です。
貧血を改善するには
妊婦検診で貧血や貧血気味を指摘されたら、鉄剤などで治療が行われる場合もあります。心配な方は医師へ相談してみましょう。
貧血の進行を防ぐためには食べ物から意識して鉄を摂っていく必要があり、鉄欠乏貧血の場合は食事で改善が期待できます。鉄分の多い食事や、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
2.鉄の基礎知識
2-1 妊娠中に必要な鉄の量
妊娠中に必要な鉄の量は、妊娠前より多めに設定されています。妊娠初期ではプラス2.5㎎で合計9.0㎎、妊娠中期~後期となると、プラス9.5㎎となり合計16.0㎎もの鉄が必要です。
これは、かなり意識しないとすぐに不足してしまう量ですが、食べ物の工夫でしっかりと補給することが可能です。
また、鉄には吸収率の高い鉄である「ヘム鉄」と、吸収率の低い鉄「非ヘム鉄」があるため、違いを知っておきましょう。
ヘム鉄と非ヘム鉄 の違い
「ヘム鉄」は吸収の良い鉄で、主に<strong>動物性の食べ物</strong>に含まれます。具体的にはレバーやあさり、赤身の魚などです。
反対に「非ヘム鉄」は植物性の食べ物で、ほうれん草などの野菜や卵に多く含まれています。
非ヘム鉄の吸収率は15%ほどですが、ヘム鉄の吸収率はその3倍以上の50%とされています。
また、非ヘム鉄は吸収される際に還元物質と呼ばれるビタミンCなどと一緒に摂る必要があります。
このため、妊娠中は「ヘム鉄」の方を積極的に摂る方が効率的に鉄を補給することができますよ。
3.妊婦さんが貧血対策に摂るべき食べ物15選
3-1 ヘム鉄が多い食べ物
牛肉
肉類の中でもダントツに鉄分が多いのが牛肉です。鶏肉や豚肉に比べ3~9倍 も鉄を含むため、妊娠中は意識的に増やしたいですね。
ヒレやモモの赤身の部位を使うようにすると、脂身が少なくカロリーカットできる上に、鉄も多く含まれますよ。
あさり
あさりは缶詰を利用すると手軽に食べることができます。缶詰のあさり10粒ほど(約30g)で8.9㎎もの鉄を補給できるので、これだけで妊娠中期~後期に付加したい鉄がほとんど摂れてしまいます。
バターで炒めてあさりバター、シチューの素でクラムチャウダー、味噌汁に入れてもおいしく食べられ、様々なアレンジができます。
いわし
100gあたり鉄が2.3㎎と、普段よく食べる魚の中では一番多く鉄が含まれています。さばくのが苦手な方は下処理済みのいわしを探してみましょう。
また、いわしのすり身を利用するのも手軽でおすすめです。いわしハンバーグやつみれ汁などもおいしいですよ。
かつお
いわしに次いで鉄が多い魚です。刺身用のサクを買ってきて、ステーキや竜田揚げなどにするのが簡単でおすすめです。
また、ツナ缶に似た「かつおフレーク」という缶詰も売っています。味付けされているので、パスタに利用したり、野菜炒めに入れたりとアレンジが可能です。
さば
さばには鉄だけでなく、妊娠中に摂りたいDHAも豊富に含まれます。
さばの切り身は下処理済みのものがスーパーで手に入りやすいため、煮たり焼いたりとさまざまな調理ができます。
さばの水煮や味付け缶を利用しても良いでしょう。ただし、缶詰は塩分が多いため、汁気を切ったり野菜と一緒に食べたりするなどの工夫も必要です。
3-2 非ヘム鉄が多い食べ物
卵
1個(約50g)ほどで0.7㎎の鉄が含まれます。使いやすい食材でタンパク質も補えるため、毎日食べたい食べ物ですね。
納豆
1パック(約50g)で1.7㎎と豊富に鉄が含まれます。
身近な食べ物でこれだけ鉄が補給できるのは嬉しいですね。朝食などに取り入れて毎日でも食べましょう。
豆乳
牛乳は鉄がほとんど含まれていないのですが、豆乳はコップ1杯で2.4㎎も補給することができます。小腹が空いた時のおやつの代わりにも良さそうですね。
ただし、甘い豆乳飲料は砂糖が多く含まれるため、摂りすぎには注意しましょう。
小松菜
100g中に2.8㎎と、普段よく食べる野菜の中でトップクラスの含有量です。さっと炒めたり、味噌汁に入れたりと使い勝手も良いため、常備しておきたい野菜です。
ほうれん草
小松菜に比べると少ないですが、ほかの野菜に比べると鉄が豊富です。
ほうれん草は生のものを利用しても良いですが、冷凍のものだと下茹での手間が省けるので楽ですよ。冷凍庫に常備しておき、味噌汁や卵とじ、炒め物などに活用しましょう。
焼きのり
大きな焼きのり1枚(約3g)で0.3㎎の鉄が含まれます。食物繊維も同時に摂ることができるため、便秘対策にも役立ちます。
おにぎりを選ぶなら、のり巻きのものを選びたいですね。
ココア
ココア1杯分で鉄0.6~0.7㎎を補給できます。飲み物で手軽に摂れるのはうれしいですね。
牛乳でなく、鉄が含まれる豆乳を利用しても良いですし、糖分が気になる方はピュアココアを利用するなどの工夫をすると良いですよ。
きなこ
大さじ1杯(約5g)と少ない量で鉄0.4㎎が含まれます。食物繊維が豊富なのもおすすめできるポイントです。
きなこヨーグルトやきなこ牛乳など、ちょっとしたおやつに最適です。
ブランパン
小麦ふすま(ブラン)を使ったパンですが、低糖質で食物繊維や鉄が豊富です。
体重増加が気になる方でも取り入れやすく、朝食などに手軽に食べることができます。コンビニやスーパーなどで売られていますので、一度探してみてくださいね。
3-3その他の食べ物
鉄分入り牛乳
本来の牛乳には鉄が含まれませんが、鉄分を強化した牛乳が販売されています。
商品によって違いますが、コップ1杯で3.4~4.5㎎もの鉄が入っているため、手軽に鉄を摂りたい方におすすめです。
味も違和感なく飲めるので、口に合うものを探してみてくださいね。
鉄強化食品
野菜ジュース、ヨーグルト、ウエハースやゼリーなど、手軽に食べられるもので鉄分を強化している食品が様々売られています。
自然な食品から摂るのが理想ではありますが、どうしても不足する時は上手に利用しましょう。
3-4 鉄の吸収を高める食べ物
吸収率の低い「非ヘム鉄」も、ビタミンCや動物性のタンパク質を一緒に摂ることで吸収率を高めることができます。
毎食、鉄の多い食材とともに、肉や魚、卵などのおかずと、野菜も一緒に摂ることで効率的に鉄を補給できますよ。
4.貧血対策の食事の選び方
4-1 朝食の選び方
<ご飯派の方>
海苔巻きおにぎり、目玉焼きなどの卵料理、納豆、味噌汁(小松菜やあさり入り)など
<パン派の方>
きなこがけトーストやブランパン、卵料理、野菜スープなど
さらに、バナナやりんご、キウイなどのフルーツでビタミンCを補給して、鉄の吸収を良くしてあげましょう。
4-2 昼食の選び方
<外食>
パスタやうどんなどの単品メニューではなく、ごはん+おかず+野菜が揃った定食を選ぶことで栄養バランスが整いやすく、鉄も摂ることができます。
<コンビニや弁当など>
おにぎりやパンだけ、ではなく動物性タンパク質や野菜も一緒に摂りましょう。おかずがいろいろ入っている幕の内弁当のようなものがおすすめです。
おにぎりやパンを選ぶ時も、スープやサラダをプラスしてあげましょう。
4-3 夕食のメニューの決め方
<メイン料理>
牛肉は最低でも週に1回以上取り入れましょう。脂身の少ない部位を選んでカロリーカットすることも忘れずに。
ほかはいわし、かつお、さばなどの魚料理を2日に1回は選ぶようにしましょう。
ほかの日は、あさりを取り入れたり、小松菜、ほうれん草などの緑黄色野菜などを積極的に使ったりするように心がけると良いでしょう。
5.妊婦の貧血対策のNG食べ物
5-1 レバ ー
貧血といればレバー、というイメージを持つ方も多いかと思いますが、妊娠中はレバーを食べないことが勧められています。
なぜなら、レバーにはビタミンAが大量に含まれており、摂りすぎにより赤ちゃんへの悪影響が懸念されているからです。
焼き鳥1本分程度のレバー の量でも、1日に必要な量の6.5倍ものビタミンAが含まれており、少量でも過剰摂取に繋がってしまう食べ物なので注意が必要です。
5-2 緑茶や紅茶に含まれるタンニン
緑茶や紅茶に含まれるタンニンには、鉄の吸収を妨げてしまう作用があります。
食事前や食事中、食後30分~1時間程度は緑茶や紅茶は避け、麦茶や水などを選ぶようにしましょう。
何か取り入れられそうな食べ物やメニューはありましたか?
貧血の対策は、妊娠中だけでなく産後のカラダの回復や、授乳中にも必要です。妊娠中から鉄分をしっかりと摂る習慣を身に付けておきましょう。