妊娠後期の食事制限がつらすぎる!看護師が提案する悩み別の対処法

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妊娠後期からは、「体重が増えすぎてしまった」「血糖値が高いと言われた」などの理由から食事制限をするように言われる妊婦さんが増えてきます。期間限定の食事制限ではありますが、空腹感や、好きなものを食べられないストレスはかなりつらいものです。

 今回は産婦人科クリニックで多くの妊婦さんの悩みに関わってきた看護師である筆者が、食事制限による妊婦さんのストレスが少しでも和らぐよう、悩み別の対処法を提案します。食事や体重管理の方法、妊娠糖尿病になってしまったら?という解説もあるので最後までお付き合いください。

1.健康な赤ちゃんを生むために適正な体重増加は必要

妊婦さんがどれくらい体重増加してよいかは、妊娠前の体型によって決まります。基準の範囲内の体重増加であれば母子ともに健康障害が少ないことが分かっているため、適正な体重増加が大切といわれているのです。

非妊娠時のBMI全期間の推奨体重増加

妊娠中期~1週間ごとの推奨体重増加

18.5未満(やせ)9㎏~12㎏0.3㎏~0.5㎏/週
18.5以上~25未満(ふつう)7㎏~12㎏0.3㎏~0.5㎏/週
25.0以上(肥満)個別対応(5㎏程度)個別対応

※体格区分別の全期間体重増加量と妊娠中期からの1週間ごとの体重増加量(厚生労働省

体重増加は妊娠前の体格が「やせ」「ふつう」の方で全期間12kgまでが目安になっています。「肥満」だった方は個別対応か5㎏の体重増加が目安です。妊娠中期からは1週間ごとの体重増加の目安も決められています。

体重が増えることばかりが注目されがちですが、体重が増えなさすぎても「低出生体重児」の確率が高くなります。妊娠前に「やせ」だった方は最低でも9㎏以上の増加を目安に体重を増やしましょう。

2.つらい食事制限はこうやって乗り切る!悩み別の対処法

妊婦さんの体重管理は赤ちゃんのためにも安全なお産のためにも重要です。しかし、食事制限がつらい!と感じストレスになっている妊婦さんは多いです。ここからは、産婦人科クリニックで勤務経験のある看護師である筆者が、悩み別の対処法をQ&A形式で提案します。

Q.食事制限の具体的なやり方が分からない

A.食べすぎている分を減らして、必要な栄養素を増やしましょう。

体重管理のための食事制限には決まった形式はありませんが、基本的には、必要な栄養素は減らさない、不足しているものを増やす、間食やエネルギー量が多いものを控える方法になります。

また、体重コントロールがうまくいっていない妊婦さんは、下記の傾向があるようです。

  • お菓子や菓子パンの摂取が多い
  • 食事が炭水化物に偏っている
  • 野菜の量が少ない
  • こってりした料理が多い

お菓子や菓子パンでお腹を満たすのはやめて、主食、主菜、副菜の揃ったヘルシーな食事を心がけましょう!

Q.食事制限したら赤ちゃんに栄養がいかないのでは?

A.自己流のダイエットはNG。病院のアドバイスどおりに行えば大丈夫。

厳しめのカロリー制限を言い渡され「これで赤ちゃんに栄養はいくのか」と疑問や不安を持つ妊婦さんも少なくありません。

カロリー制限に関しては、あなたの妊娠前の体格、妊娠中の健康状態、赤ちゃんの発達状況などで異なるため、あなたの状況を全て把握している病院(産婦人科医院、クリニックなど)のアドバイスに従うべきです。

たとえば、非妊娠時に「肥満」だった妊婦さんは、適切な体重管理をした方が赤ちゃんへの悪影響を防ぎ安全な出産ができる確率は高くなるため、厳しいカロリー制限を言い渡されることが多いかもしれません。

または「やせ」や「ふつう」だった妊婦さんが太り過ぎてしまった場合は、体重の増加具合や妊婦さんの状況を見て制限する具合が決まります。

このように、カロリー制限に関しては、個別性が大きいところ。赤ちゃんの発育にも関わる大切な部分でもあるので、自己判断するよりは病院のアドバイスを聞き、できる限りそれに従う方が安心です。

Q.食事制限しているのに体重が増える

A.遅い時間帯の食事や無意識に食べているものをチェック。むくみが原因の場合も。

食事制限はできているのに、体重が増える一方で困っている!という妊婦さんも結構います。この場合はどうすればいいのでしょうか。2パターンに分けて解説します。

①食べてないのに体重が増える!場合はこの三つをチェックしよう!

食事制限しても体重が増える妊婦さんは、以下の三つをチェックしてみましょう!

  • 無意識に食べていないか
  • 夜遅い時間帯に食べていないか
  • 食事より間食が多くなっていないか

スマホやテレビを見ながら食べ物をつまんでいる、家族の帰りを待ってから夜遅い食事をしている、食事より間食でお腹を満たしている、などがないでしょうか。特に眠る前に食事をすると胃腸に負担をかけてしまう上、カロリーが消費されず太りやすいです。

家族と一緒に食べたいときは、自分だけ早めに夕食を済ませておいて、軽めのサラダやスープだけ飲むようにするなどで対処してみてください。

②急な体重増加はむくみが影響していることも

食事制限をしているのに、急激に体重が増えたときは「むくみ」が原因かもしれません。妊娠中期から後期のむくみは、生理的なもので心配いらないことがほとんどです。

しかし、血圧が高い、全身がむくむ、などの症状が出た場合は妊娠高血圧症候群になっている場合もあります。自宅でもマメに体重のチェックはした方がいいでしょう。

Q.検診で医師や助産師に注意されるのがストレス

A.話しやすい医療従事者を見つけて率直な気持ちを伝えよう

妊婦さんの悩みで意外に多いのが「検診のストレス」です。赤ちゃんが順調に育っているか、も気がかりだと思いますが、太り過ぎを注意されることにかなりストレスを感じているようです。

対処法としては、話しやすい人(助産師・管理栄養士・看護師など)を見つけて具体的な食事方法を教えてもらうのがおすすめです。

その際「食事制限でつらいこと、困っていること」について、いまの気持ちを率直に伝えるようにしてみましょう。病院内で一人でも分かってくれる人がいれば、検診のストレスは軽減されると思います。

他には「家族や友達に話を聞いてもらう」「妊婦さん用のSNSも活用する」という方法もあります。話を聞いてもらえるだけで、モヤモヤが解消されることも。一人でかかえこまず、うまく発散する方法を見つけていきましょう。

Q.空腹感に耐えられない

A.小分けにして食べれば空腹感は感じにくくなることも

空腹がつらいのは、かなり多くみられる悩みです。下記の方法で乗り切るのはいかがでしょうか。

  • こんにゃくゼリーなどカロリーと糖質の少ない間食をする
  • 3食にこだわらず、少量づつ間隔をあけずに食べる
  • 空腹を感じやすい行動を避ける(食事前にスーパーに行く・料理番組を見るなど)

少量づつ食べる時は、食べ過ぎにならないようにします。1食分を作ったら、それを半分に分けて食べるイメージです。そうすれば知らない間にカロリーオーバーになることは避けられます。

Q.好きな食べ物を我慢するのがつらい

A.「大好きな物」を厳選し、味わって食べるようにしてみては?

好きなものを食べられないストレスは相当つらいものです。その場合は我慢せず「食べていい日を作る」のはいかがでしょうか。食べ物を選ぶときは妥協せず「自分が本当に好きなもの」を厳選します。

「安売りしていたから」「健康に良いお菓子だから」といった理由で選んだものを食べるよりも満足感を味わえるかもしれませんよ。

ただし、トキソプラズマやリステリア菌が心配な食べ物、アルコールなど妊娠中はNGの食べ物があります。それらについてはしばらく我慢が必要です。

3.妊娠糖尿病になったらどうなる?

食事制限をするよういわれている妊婦さんの中には、妊娠糖尿病が心配な方も多いはず。

妊娠すると初期と中期に妊娠糖尿病の検査が行われます。血糖値が高めと言われ不安になった経験のある妊婦さんもいるのではないでしょうか。次は妊婦さんの1割がかかるといわれる妊娠糖尿病について説明します。

3-1.妊娠糖尿病とは妊娠中におこる糖代謝異常のこと

妊娠糖尿病とは妊娠期間中に発症した糖尿病には至っていない糖代謝異常のことです(*1)。妊婦さんは生理的にインスリンが効きづらい状態になるため、血糖値が上がりやすくなりますが、一定の基準を超えると(※下記の表を参照)「妊娠糖尿病」と診断されます。

妊娠中に発見された「明らかな糖尿病」や妊娠前から糖尿病と診断されていた「糖尿病合併妊娠」とは区別されます。

妊娠糖尿病

✓ブドウ糖負荷試験で以下の基準の1つ以上が当てはまる
①空腹時血糖  ≧92mg/dl
②1時間値     ≧180mg/dl
③2時間値     ≧153mg/dl

妊娠中の明らかな糖尿病

✓以下のいずれかが当てはまる
①空腹時血糖 ≧126mg/dl
②HbA1C値  ≧6.5%

糖尿病合併妊娠①妊娠前にすでに糖尿病が診断されている場合
②確実な糖尿病網膜症があるもの

※妊娠中の糖代謝異常と診断基準(産婦人科診療ガイドラインー産科編2017年p27)

※随時血糖(食事と関係なく測る血糖値)が≧200mg/dl、ブドウ糖負荷試験で2時間値が≧200mg/dlだった場合は「明らかな糖尿病」も念頭に入れる
※ブドウ糖負荷試験:75gブドウ糖溶液を飲み1時間後と2時間後の血糖値を測る検査

3-2.痩せていても妊娠糖尿病にかかるリスクあり

肥満・35歳以上の高齢妊娠・血縁者に糖尿病の方がいる場合は、妊娠糖尿病になりやすいといわれています。痩せていても体質的にインスリン分泌能力が弱いとかかる場合があります。

3-3.出産後は糖尿病発症率が高くなるという報告も

「明らかな糖尿病」や「糖尿病合併妊娠」とは違い、妊娠糖尿病の場合、出産後は正常に戻ります。

ただ、妊娠糖尿病にならなかった妊婦さんに比べると、糖尿病発症率が7.43倍高かったとする報告もあるため(*1)分娩後6週間~12週間の間に、糖尿病の再検査を行うことが推奨されています。

3-4.巨大児や難産のリスクなど赤ちゃんへの影響もある

妊娠糖尿病になると赤ちゃんが巨大児になりやすく、難産になるリスクが高まります。32週以降は子宮内胎児死亡の危険も高くなります。

糖尿病だったことを知らずに妊娠した場合、妊娠初期に赤ちゃんが高血糖に晒されることによる奇形率が高くなる事も分かっています。

3-5.治療-食事と運動療法だけで乗り切れる場合も

妊娠糖尿病の治療は食事療法と運動療法が基本です。血糖コントロールが出来ない場合はインスリン療法が行われます。

食事療法は、日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会による産婦人科診療ガイドライン(*1)では、血糖値を安定させるため食事を4-6回に分けて食べる「分食」が推奨されています。軽い妊娠糖尿病の妊婦さんは、食事と運動療法だけで乗り切れる場合もあるようです。妊娠糖尿病に関する食事療法については、個別のアドバイスが必要です。必ず病院でアドバイスをもらうようにしましょう。

3-6.自己流の糖質制限はNG

お菓子などの間食や、ご飯、パン、麺など主食となる炭水化物を極力減らして、おかずをたくさん食べる食事方法を糖質制限と言います。血糖値を上げる「糖質」を減らせば血糖値は上がりにくくなります。

しかし、妊婦さんが糖質制限をすると、赤ちゃんの発育に悪影響を及ぼすとする研究結果(*2)もあり、安全性は保障されていません。自己流の糖質制限はやめましょう。

3-7.血糖値の上昇を緩やかにするコツ

血糖値は急に上昇させてしまうのが一番よくありません。血糖値の上昇を緩やかにする以下の方法も普段の食生活に取り入れてみてください。

  • 野菜やたんぱく質のおかずから食べ最後にご飯(炭水化物)を食べる
  • 麦、玄米、そばなどGI値が低い炭水化物に変える
  • ご飯のおかわりはしない
  • 食事を抜かない
  • 一度にたくさんの量を食べない

4.出産まであと少し!ストレスをためこまずに頑張ろう!

妊娠後期は体重がぐんと増える時期です。お腹が張ったりすれば運動もままならず食事でコントロールしなければならない時もあるでしょう。しかし出産まであと少しです。ストレスを上手に発散して楽しく過ごしましょう!

参考文献
(*1)日本産科婦人科学会 日本産婦人科医会 産婦人科診療ガイドラインー産科編2017年 p29-30
(*2)第95回日本産婦人科医会記者懇談会資料

 

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