妊婦さんはコーヒーなどのカフェインを控えた方が良いと言われていますが、「コーヒーを飲みたい!」という方も少なくないはず。
「全くとらない方がいいの?」といった疑問や、「数杯なら飲んでいいって聞いたけど、本当?」という不安を持つ方のために、今回は妊婦さんのカフェインの基準について解説します。
ほかにも、カフェインの赤ちゃんへの影響や、コーヒーゼリーやコーヒー牛乳はどの程度とって大丈夫?といったこと、さらには妊婦さんが安心して飲み物についてもお伝えしていきます。
■目次
1.妊娠中にとっても大丈夫なカフェインの量は?
妊娠中のカフェイン量の基準、飲んでいいコーヒーの量はどの程度なのでしょうか。詳しく解説していきます。
1-1.妊婦さんはコーヒー1日1~2杯が目安
厚生労働省によるママのための食事BOOK(*1)には、1日コーヒー1~2杯程度であれば問題ないとされています。
実は日本には、妊婦さんや妊娠していない方にもカフェイン量のはっきりとした基準はありません。ですが、海外のカフェイン量の規準を見てみると、コーヒーは1日1~2杯程度分のカフェイン量が基準となっているものがほとんどです。
ですので、厚生労働省によるママのための食事BOOK(*1)の通り、コーヒーは1日1~2杯程度なら安心していただけるでしょう。
1-2.海外の基準
海外の基準を詳しく見てみましょう。国や機関によって目安量(*2)に違いがあります。主要なものを表にまとめています。
機関名 | 妊婦のカフェイン摂取量の目安 | コーヒー換算量 |
世界保健機関(WHO) | 300㎎ | 500ml (コップ2杯程度) |
欧州食品安全機関(EFSA) | 200㎎ | 333ml (コップ1.5杯程度) |
ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR) | コーヒー2杯まで | ― |
カナダ保健省 | 300㎎ | 500ml (コップ2杯程度) |
※すべて1日当たりの量
どの基準でも、カフェイン量は200~300㎎の間で、コーヒーの量にすると1日1~2杯にあてはまります。カフェインはコーヒーだけに含まれているわけではないため、カフェインの基準も頭に入れておくと役立つでしょう。
2.カフェインが妊婦や赤ちゃんに与える影響
食品安全委員会によると、カフェインの過剰摂取により、赤ちゃんの成長遅延、出生児の低体重、早産、または死産と関連する可能性があると考えられています。(*2)
というのも、特に妊娠中は、カフェインが血液中から消失するスピードが遅くなり、カフェインの影響が大きいからです。
カフェインを過剰摂取すると、中枢神経系への刺激が起き、めまいや不眠、いらいら、興奮などの健康被害をもたらすことがあり(*3)、妊娠していない方でも過剰摂取しないよう注意が呼びかけられています。
3.こんな「コーヒー」は大丈夫?
コーヒー以外のコーヒー牛乳やコーヒーゼリーなどはどの程度食べても大丈夫なのでしょうか。それぞれ食べ物、飲み物別に解説します。
3-1.コーヒー牛乳
コーヒー牛乳や、カフェオレ、カフェラテなど、コーヒーが入っている飲み物にもカフェインが含まれています。これについてもコーヒーと同様、飲み過ぎに気を付ければ飲んでも大丈夫です。
コーヒー牛乳、カフェオレ、カフェラテは作り方により呼ばれ方が変わり、それによってカフェインの量も異なります。
種類 | 作り方の違い | カフェイン量の比較 |
コーヒー牛乳 | コーヒーより牛乳の割合が多いもの | カフェラテ・カフェオレに比べると少ない |
カフェオレ | コーヒーと牛乳が半々で作られたもの | コーヒー牛乳より多いが、カフェラテに比べると少ない |
カフェラテ | エスプレッソと牛乳で作られたもの | コーヒー牛乳・カフェオレに比べると多い |
では「コーヒー牛乳やカフェラテを選んでおけば安心?」かというと、そのようなわけでもありません。理由はコーヒー牛乳やカフェラテの方が飲む量が多い場合があるからです。飲む量が増えれば、カフェインの摂取量も当然多くなります。
では、市販のコーヒー飲料にはどの程度カフェインが含まれているのでしょうか?調べたものを表にまとめてみました。
<市販のコーヒー飲料のカフェイン量の例>
種類 | 商品名 | 100mlあたりカフェイン量 | 1製品あたりカフェイン量 |
コーヒー牛乳 | 雪印コーヒー | 5㎎ | 25㎎(500ml) |
カフェオレ | グリコ マイルドカフェオーレ | 27㎎ | 135㎎(500ml) |
カフェラテ | 森永 マウントレーニア カフェラッテ | 41㎎ | 98㎎(240ml) |
※2020年8月25日時点の情報です
カフェインは1日200~300㎎程度が基準となっているため、コーヒー牛乳やカフェオレも飲みすぎには気を付けたいですね。
3-2.コーヒーゼリー
コーヒーゼリーは、コーヒーそのままをゼラチンなどで固めたものですので、コーヒーと同じ量カフェインが含まれています。
ただし、コーヒーゼリーは100~200ml程度とやや小さめのものが多いので、1個食べただけでカフェインの摂り過ぎには繋がりにくいでしょう。コーヒーゼリーを食べて、さらにコーヒーも飲んで・・・という場合は気を付けておきたいですね。
3-3.コーヒー1~2杯って、どのくらい?
「妊婦さんのコーヒーは1~2杯まで」と言っても、カップの大きさにもよるので、どのくらいなのかわからないこともありますよね。
自宅の一般的なマグカップの量は200~250ml程度の飲み物が入るので、カフェイン量は1杯あたり120~150㎎程度です。2杯で240㎎~300㎎になるので、カフェインの基準内におさまります。
自宅で使っているマグカップが大きいかも?という場合、1日1~2杯のコーヒーだとカフェインを多くとりすぎてしまう可能性もあります。大きい場合は、量を調整してとりすぎないように気を付けましょう。
3-4.カフェで飲むなら何サイズ?
では、外出先でコーヒーを楽しみたい時はどうでしょうか?コーヒーショップによってコーヒーのサイズもさまざまですので、こちらも調べて表にまとめてみました。
<代表的なコーヒーショップのカフェイン量>
S/ショート | M/トール | L/グランデ | |
スターバックスコーヒー | 144㎎ | 210㎎ | 282㎎ |
ドトールコーヒー | 90㎎ | 108㎎ | 162㎎ |
タリーズコーヒー | 144㎎ | 210㎎ | 282㎎ |
※各サイズのコーヒーの量をもとに食品成分表よりカフェイン量を計算
妊婦さんは1日200~300㎎程度のカフェイン量が基準なので、これらのコーヒーショップであればLサイズを頼んでも1杯ならギリギリ大丈夫でしょう。
ただし、カフェインが含まれているものはコーヒーだけではありませんので、なるべくなら小さいサイズにしておく方が安心ですね。
4.コーヒー以外のカフェインを含むものに注意!
コーヒー以外にもカフェインを含むものは多くあります。コーヒー以外にも気を付けたい飲み物も。気を付けたい飲み物カフェイン量や、安心して飲めるものについてご紹介します。
4-1.飲み物に含まれるカフェイン量一覧
カフェインは、コーヒー以外にもお茶やジュースにも含まれています。コーヒーと比べると、どのくらいの違いがあるのでしょうか?表にまとめています。
食品名 | 100mlあたりのカフェイン量 |
玉露 | 160㎎ |
コーヒー | 60㎎ |
紅茶 | 30㎎ |
緑茶(煎茶) | 20㎎ |
ウーロン茶 | 20㎎ |
ココア (※ピュアココア5g使用) | 10㎎ |
コーラ | 約10㎎ |
エナジードリンク | 32~300㎎ |
では、それぞれ飲み物別に解説します。
◆玉露
玉露はコーヒーの約2.7倍ものカフェインが含まれています。「玉露入り緑茶」などのペットボトル飲料にはカフェインが多く含まれている可能性があるため、妊娠中は避けた方が良いでしょう。
◆紅茶
コーヒーの約半分ほどのカフェイン量です。コーヒーより安心して飲めそうですが、気を付けて欲しいのは量です。
カフェなどで紅茶を注文すると、ポットで出てくる場合がありますが、紅茶2~2.5杯分ほど飲めてしまうため、カフェインをとり過ぎてしまう可能性があります。
また、最近はペットボトルの紅茶飲料が増えてきています。1本500mlあたりのカフェイン量は150㎎。妊婦さんのとって良いカフェイン量が200~300㎎程度なので、半分~2/3ほどとってしまうこととなります。
◆緑茶(煎茶)、ウーロン茶
緑茶、ウーロン茶のカフェインはコーヒーの3分の1程度ですが、こちらも紅茶と同様に量に注意が必要です。
水分補給として、緑茶やウーロン茶を選びがちですが、コーヒーを飲みたい方は、カフェインの入っていない麦茶や水などで水分補給をした方が良さそうです。
◆ココア、コーラ
カフェイン量はコーヒーの6分の1程度です。飲み過ぎに注意しておけば問題ない量でしょう。飲みすぎると、糖質のとり過ぎにもつながるため注意しましょう。
◆エナジードリンク
さまざまなエナジードリンクがコンビニなどで手軽に手に入るようになりました。エナジードリンクは1本あたりにすると、かなりの量のカフェインが含まれているものがあります。妊娠中のエナジードリンクは避けておきましょう。
4-2.意外な食べ物「チョコレート」にも含まれる!
チョコレートにもカフェインが含まれています。ただし、板チョコ1枚(50g)で約15㎎程度のカフェイン量です。(*4)たくさん食べると影響はあるかと思いますが、その前にカロリーオーバーの方が心配になってしまいます。
ただし、高カカオチョコレートは普通のチョコレートよりカフェイン量がやや多くなっていますので、こちらも食べすぎには気を付けておきましょう。
4-3.カフェインが含まれているものが多すぎる!どんな風に気を付けたらいい?
さまざまな食べ物や飲み物にカフェインが含まれていますが、すべてのもの飲み物に敏感になったり、毎回調べていたりするとそれだけでストレスになってしまいます。
自分なりのルールを決めて置き、それに沿って行動するようにするとストレスになりにくいでしょう。
- コーヒー以外の飲み物はノンカフェインを心がける
- 紅茶や緑茶、ウーロン茶をたくさん飲む日はコーヒーは止めてお
5.妊婦さんが飲んでも安心な飲み物は?
どのような飲み物だと妊婦さんが安心して飲めるのでしょうか。おすすめの飲み物を3つご紹介します。
5-1.デカフェコーヒー
デカフェ(カフェインレス)コーヒーは、普通のコーヒー豆からカフェインを取り除いて減らしたものです。カフェインがゼロではありませんが、日本ではカフェイン量を90%以上減らしたものをデカフェ(カフェインレス)と呼びます。このため、妊婦さんやカフェインに敏感な方が安心して飲めるようになっています。
デカフェのインスタントコーヒーやドリップコーヒーは、スーパーやコーヒーショップ、インターネット通販で手に入れることができます。「1~2杯はいいとわかっていても、やっぱりコーヒーを飲むのは不安」という方はデカフェコーヒーを試してみてくださいね。
また、コーヒーだけでなく紅茶にもデカフェのものがありますよ。
5-2.たんぽぽコーヒー
たんぽぽコーヒーは、たんぽぽの根を乾燥、焙煎、粗挽きするなどしてコーヒーの風味に近づけた飲料です。「コーヒー」という名前はついていますが、実際はコーヒーではありません。
たんぽぽコーヒーはカフェインゼロで妊婦さんでも安心して飲むことができます。カフェインを気にせずにコーヒーを楽しみたい方は、たんぽぽコーヒーも選択肢に考えてみましょう。
5-3.麦茶やハトムギ茶、黒豆茶
麦茶やハトムギ茶、黒豆茶にはもともとカフェインが含まれていません。水分補給としてはおすすめの飲み物です。
市販のペットボトル飲料には「カフェインゼロ」と書かれているので、選びやすいのもうれしいですね。
5-4.ハーブティーは大丈夫?
お茶の中でも、ハーブティーであるルイボスティーにもカフェインは含まれていません。ただし、ハーブティーの中には妊娠中に適さないものもある(*5)ため、カフェインが含まれないからといってたくさん飲むことは勧められません。心配な場合は医師や薬剤師に相談をしましょう。
6.まとめ
妊婦さんのコーヒーやカフェインの目安についてお伝えしました。
- コーヒーは1日1~2杯まで(カフェイン量は200~300㎎の範囲が海外の規準)
- コーヒー牛乳やコーヒーゼリーもコーヒーと同様にとり過ぎ注意
- コーヒー以外にも紅茶、緑茶、玉露、エナジードリンクなどカフェインが含まれるものに注意
- カフェインを減らしているデカフェコーヒーを利用すると、量を気にせずに楽しめる
妊娠中はコーヒーだけでなく、気になることがたくさんあるかと思います。気にし過ぎてストレスをため過ぎてしまうのも心配です。マイルールを決めておいて母子手帳にメモしておくなど、ネットの情報に振り回されすぎないような対処もしてみましょう。
適度なコーヒーも楽しみながら、ストレスの少ない妊婦生活を過ごしてくださいね。
【参考・参照】
(*1)厚生労働省 平成29年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 ママのための食事BOOK<https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000520476.pdf>
(*2)食品安全委員会 食品中のカフェイン<https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf>
(*3)厚生労働省 食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~<https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html>
(*4)明治 チョコレートに含まれるカフェインの量<http://qa.meiji.co.jp/faq/show/116?site_domain=default>
(*5)国立健康・栄養研「健康食品」の安全性・有効性情報 妊娠中のハーブ製品*1の自己判断による摂取に注意して下さい<https://hfnet.nibiohn.go.jp/usr/kiso/ninpu-herb/ninpu-herb-document.pdf>