妊娠中の食中毒に注意!赤ちゃんを守る食事について徹底解説

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妊娠するとお腹の赤ちゃんのために食事に気を遣う場面が増えますよね。妊娠する前は意識せず食べていたものが思うように食べられない・・こんなストレスを感じている方もいるのではないでしょうか。

でも妊娠中は赤ちゃんを守るために、特に食中毒を防ぐことはとても大切です。この記事では、産婦人科クリニックでの勤務経験のある筆者が、妊婦さんが避けるべき食品やその理由について解説します。食べていい食品とダメな食品や安全な調理法も紹介しますので役立ててください。

1.妊婦は特に食中毒に注意した方がいいのはなぜ?

妊娠中に食中毒になると、妊婦だけでなく赤ちゃんの発育に影響する可能性が知られています。

妊婦は免疫力が低下してしまうため、一般の人に比べると食中毒のリスクが高くなります。これも妊婦が食中毒に気をつけた方がいい理由のひとつです。

食中毒は飲食店や仕出し弁当だけでなく、家庭内でも起こります。下痢や吐き気や腹痛など辛い症状を起こします。どこにでも食中毒のリスクがつきまとうため、妊婦は食べ物の選び方に気をつけなければいけません。

 2.赤ちゃんに感染して深刻な影響を与える食中毒菌

WHOの国際食品安全当局ネットワークが発信している「妊娠中および授乳期の食品安全と栄養」によれば、「妊娠中は食品由来の疾患にかかりやすく、妊婦が症状を起こさなくても胎児は病原体の影響を受けやすいので特別な注意を払う必要がある」と述べています。

食中毒を起こす菌やウイルスや微生物には様々なものがありますが、その中でも要注意なのが「リステリア菌」と「トキソプラズマ」です。これらに汚染された食品を食べると、母体を通して赤ちゃんにも感染し、先天的な疾患を持って生まれてきたり流産や死産になってしまう場合があります。

次からは「リステリア菌」と「トキソプラズマ」について、詳しく解説していきます。

3.【リステリア菌】妊婦は健康な人に比べ感染率が20倍高くなる

リステリア菌は土壌や動物の腸管など、どこにでも存在している菌です。食べ物からリステリア症になるのは少なく、日本での発生はほぼありません。しかし健康な人と比べると妊婦さんに感染するリスクは20倍とともいわれており、流産、死産、胎児への感染で髄膜炎などを起こす場合があるので注意が必要です。

3-1.リステリア菌感染症の症状や治療は?

※参考)厚生労働省リステリア症 

潜伏期間数日~90日(通常1~2週間)
症状軽い風邪症状~筋肉痛、頭痛、下痢、発熱など
治療抗菌剤を使い赤ちゃんへの感染を防ぐ

リステリア菌の潜伏期間は1~2週間になることもあり、そのため症状が出てもリステリア菌によるものか判断が付きにくい場合があります。

健康な人はリステリア菌を含む食べ物を摂取しても軽い風邪症状だけで済みます。しかし、妊婦さんや免疫不全の方がかかると重症になりやすく致死率は20%から30%といわれています。

2018年オーストラリアではメロンが原因とされる患者が20人発生し全員が入院、7人が死亡、1人の妊婦さんが流産する事態となっています。

妊婦さんの症状や食べた物の聞き取り、血液やPCR検査などを元に早期に診断ができれば、抗生物質の投与で赤ちゃんへの感染を防ぐ治療がされます。

3-2.リステリア菌に注意の食品は?

食材過去に海外で食中毒が発生した食品
肉・魚食肉加工品(生ハム、サラミなど非加熱食品)・魚介加工品(スモークサーモンなど)・肉や魚のパテ
乳製品非殺菌乳・ナチュラルチーズ(加熱殺菌していないもの)

海外でリステリア菌による食中毒が発生した食品は生ハムやスモークサーモン、ナチュラルチーズなどです。調理の過程で汚染された惣菜やサラダなどが原因になったこともあります。

チーズは加熱されていないナチュラルチーズはNGで、加熱されて作られるプロセスチーズであればOKです。

しかし、国産のナチュラルチーズは加熱した牛乳で作られているため、リステリア菌の心配はありません。チーズの種類を詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

3-3.リステリア菌による食中毒を予防するには?

リステリア菌による食中毒を予防する方法をまとめました。

✓リステリア菌が繁殖している可能性がある食品を避ける
上記の表を参考にし、とくに加熱しないで食べるナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、スモークサーモンは避けましょう。

✓海外旅行では特に注意が必要
新婚旅行などで海外に行く場合もあると思います。日本より海外の方が非殺菌乳製品や非加熱食肉品が多く出回っている可能性があります。食べる物には十分に注意しましょう。

✓野菜や果物は念入りに洗って食べる
生野菜や果物はきれいに洗って食べましょう。

✓調理をするときや食べる前には手を洗う
清潔な調理法や食べる前の手洗いを徹底しましょう。

✓できるだけ加熱調理した物を食べる
リステリア菌は寒さや塩分に強いですが、高温に弱いです。中心部分が75℃以上になるように1分間以上加熱しましょう。

✓消費期限や保存方法を守る
冷蔵庫内の温度を時々チェックします。買い物の後に寄り道していつまでも冷蔵庫に入れなかったりするのも危険なので注意しましょう。

4.【トキソプラズマ原虫】先天性トキソプラズマ症は年間130人~1300人

トキソプラズマは猫が宿主となる原虫で、糞や庭の土など環境や、食肉全般も汚染されている可能性があります。妊娠中に初めて感染すると、赤ちゃんに感染し先天性トキソプラズマ症を起こす場合があります。

先天性トキソプラズマ症は年間で130人~1300人と推定されています。トキソプラズマは妊婦さんが感染しても症状が出ないことがあります。そのため感染に気付かないまま妊娠後期で赤ちゃんの異常が分かる場合や、生まれた後に遅れて発症する場合もあります(眼トキソプラズマ症など)

妊娠後期の方が赤ちゃんに感染しやすいですが、妊娠初期に感染した方が症状は重くなりやすいことが知られています。したがって、妊活中の女性もトキソプラズマ症に気をつける必要があります。

4-1.トキソプラズマの症状や治療は?

潜伏期間不明。およそ5-20日 10日-数週間の場合も
症状無症状~軽い風邪のような症状
治療早期に診断し抗生物質を使えば赤ちゃんの重症化リスクを7分の1に抑えられることも

トキソプラズマは感染しても無症状の場合があるので、潜伏期間が分かりにくいです。体中の痛みや発熱などの症状や重症になると脳まで感染が広がる場合もあります。

赤ちゃんを通じて胎児に感染することを「垂直感染」といいます。垂直感染にはトキソプラズマ以外でも赤ちゃんに重要な障害を残すものがあり、これらをまとめてTORCH症候群※と呼んでいます。

※Toxoplasmosis(トキソプラズマ)・Other agents(梅毒やB型肝炎などその他病原体)・Rubella(風疹)・Cytomegalovirus(サイトメガロウイルス)・Herpes simplex(単純ヘルペス)

トキソプラズマは生焼けのお肉を食べて知らない間に感染する場合がありますが、妊婦さんが「レアのお肉を食べてしまった!」など、心当たりがあったときに、どうやって治療すればいいのか一番気になるところだと思います。

先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症患者会 トーチの会によれば、加熱が不十分なお肉を食べてから早くても2週間、できれば1か月程度してから抗体検査をすると感染しているかどうか分かります。

早い場合には、食してから2週間程度で体内の抗体が増加してくるため、この頃に検査を受けると感染が判明すると思われます。
ただし、状況により個人差もあるでしょうから、生もしくは加熱が不十分な肉※を食してから1ヶ月程度してから検査を受けるほうがより確実な検査結果が得られるでしょう。

抗体検査で早期に診断できれば、抗生物質で赤ちゃんへの重症化リスクを低く抑えられるかも可能性が高くなります。トキソプラズマの抗体検査は希望しないと実施しない病院もあるので、自分から希望して事前に抗体検査をしてもらった方が安心でしょう。

4-2.トキソプラズマに注意の食材は?

豚、牛、ラム、鶏、ジビエなど非加熱の肉、加熱不十分の肉の全て。 ローストビーフ、サラミ、ユッケ、馬刺し、鳥刺し、生ハム、生ベーコンなど。

トキソプラズマは十分に加熱をされていない全ての食肉で注意が必要です。

4-3.トキソプラズマによる食中毒を防ぐには?

✓トキソプラズマがいるかもしれない食品を避ける
スーパーで買ってきた焼き鳥やローストビーフは十分に加熱されているかどうか分かりません。自宅で加熱してから食べるぐらい慎重にした方がいいでしょう。

✓外食ではレア肉や加熱が不十分な物を避ける
妊婦さんは自宅では気をつけていても、外食に行くと気が緩んで加熱が不十分なものを食べてしまうことがあるようです。しっかり火が通ったものを選ぶようにしましょう。

✓お肉の調理をするときは特に注意をする
生のお肉を触った手で他の食品に触れないようにします。焼き肉は生肉を扱う箸と食べる箸を別々にしましょう。

✓調理をするときや食べる前には手を洗う
土いじりや動物に手を触れた後は特に念入りに手を洗いましょう。食べる前にも手を洗います。

✓加熱調理した物を食べる。電子レンジはNG
トキソプラズマは冷凍でも死滅しますが、家庭内の冷凍庫では十分な温度で管理できるかどうか分かりません。中心部分が75℃以上になるように十分に加熱しましょう。国立感染症研究所によると 電子レンジでは中心部まで加熱されず確実ではないとされています。

5.その他の食中毒-サルモネラやO-157やアニサキス

生卵についているサルモネラや牛肉に多いO157、冷凍していない生のお刺身で起こしやすいアニサキス。これらは赤ちゃんに感染することはありませんが、強い腹痛や下痢症状で流産や早産を起こす危険もあります。妊娠中は生卵やお刺身、焼き肉で生焼けの物を食べることは避けた方が良いです。

赤ちゃんを守るには予防が大切!食事は火を通して食べよう!

お腹の赤ちゃんを守るための食中毒の注意点について説明しました。食中毒菌のほとんどは(ウエルシュ菌を除く)加熱を十分にしたものを食べれば防ぐことができます。加工食品は保管方法を確認し消費期限はしっかり守りましょう。

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