妊婦と新型コロナウイルスについて取り上げられた情報は、今のところ非常に少ないです。
「妊婦は重症化しやすいの?」「胎児への影響は?」「感染した場合の出産は?」といった不安でいっぱいですよね。
そこで、学会資料や厚生労働省の発表などをもとに調べ上げ、妊婦が新型コロナウイルスに感染した場合の影響 についてわかりやすくまとめました!
また、感染しないための対策、気を付けるポイント等についても紹介します。
正しい情報を知り、この新型コロナウイルス危機を乗り切りましょう!
1.妊婦が新型コロナウイルス感染しても大丈夫!?
厚生労働省と日本産婦人科感染症学会が、妊婦と新型コロナウイルス感染についての見解を発表しています。
厚生労働省の発表(令和2年4月1日)より
「現時点では、妊娠後期に新型コロナウイルスに感染したとしても、経過や重症度は妊娠し ていない方と変わらないとされています。胎児のウイルス感染症例が海外で報告されていま すが、胎児の異常や死産、流産を起こしやすいという報告はありません。したがって、妊娠 中でも過度な心配はいりません。」
日本産婦人科感染症学会の文書(令和2年3月31日)より
「現時点で、COVID-19感染による催奇形性や流産、死産のリスクが高いとする報告はあり ませんが、 一定の頻度で子宮内感染を来す可能性が報告されていますので感染しないように十分気を付けてください。」
1-1. 妊婦だから重症化しやすいということはない
上記の見解より、「 重症度は妊娠していない場合と変わらない」ことがわかります。ちょっとホッとしますよね!
しかし、妊婦は胎児を異物と認識して過剰な免疫反応が起こらないように、免疫力を低下さ せています。さらに、妊婦は子宮が大きくなっているために肺が膨らみにくく、うっ血しや すい状態になっています。そのため、肺炎が重症化しやすい条件にあることは確かです。
とはいえ、重症化しやすいという報告は今のところないので、少し安心していただいて大丈夫です。しかし、 これまで通りにしっかりと感染対策をしていきましょう!
1-2. 胎児の奇形、死産・流産リスクは報告されていない
上記の見解より、「妊婦が新型コロナウイルスに感染しても、胎児の奇形や発育障害は起こらない」ことがわかります。一安心ですよね!
また、死産・流産リスクが高いという報告もありません!これは朗報ですよね。
ただ、データ数が少なくてわからない部分も多いのが現状です。引き続き最新情報をチェックする必要があります。
1-3. 胎児への子宮内感染には注意!
唯一懸念すべきことは 子宮内感染 です。新型コロナウイルスは子宮内感染する可能性があると報告されています。
子宮内感染すると、胎児も新型コロナウイルスに感染してしまいます。胎児は未発達であるため、感染させたら大変です。 子宮内感染には注意しましょう!
2. 妊婦が感染した状態でも出産は可能か?
新型コロナウイルスに感染した場合でも出産することは可能です。しかし、感染した場合は指定医療機関で出産することになります。医療スタッフはガウン、マスク等で感染予防をした上で対応します。当然、妊婦への面会や家族の出産への立会いはできません。また、出産後にウイルス陰性となるまでは、新生児と会うことができず、授乳もできません。このように、感染した場合の出産はいろいろと制限が多くなってしまいます。
出産は人生における重要なイベントですよね。その出産にいろいろと制限が加わってしまうのは非常に残念なことです。感染を防ぎ、正常通りに出産できることを目指しましょう!
3. 厚労省が発表した妊婦向けの対策(令和2年4月1日発表)
厚生労働省は妊婦向けの対策として、4月1日に以下4項目を発表しました。
1. 普及啓発 :妊婦にリーフレット(注意点や対応等についての)を配布。自治体母子保健部局に感染した妊婦への支援を要請。
2. マスクの配布 :母子手帳交付時や妊娠者との面談時に布マスク(妊婦1人に月2枚)を配布。
3. 職場での配慮の要請 :職場における妊婦への配慮を要請(令和2年4月1日)
4. 周産期医療の提供 :妊婦の感染を防ぐための配慮をするよう都道府県に依頼。感染が疑われる妊産婦に早めの相談を呼びかけ。
職場での妊婦への配慮を国が要請したため、テレワーク等への変更、休暇の取得はより容易になりました。まだ職場に行って勤務している方は、すぐに通勤をやめましょう。この時期 の外出は非常にリスクが高い です。
「マスクをしていれば外出しても大丈夫!」という考え方は捨てましょう!実は、WHO (世界保健機関)は健常者がマスクをすることの有効性を認めていません。マスクが有効な のはあくまでも感染者に対してであり、感染者が飛沫をまき散らすのを防ぐ効果はあるとしています。集団予防という点では優れていますが、自分の身を守るという点ではあまり期待 できないのです。 ※しかし、手指で顔を触ってしまうことを防ぐという意味はあります。
4. 感染しないためにすべきこと全て
新型コロナウイルスは飛沫感染、接触感染の2つによって感染を起こします。
飛沫感染:感染者のくしゃみ・咳に含まれるウイルスを他の人が吸い込むことで感染しま す。
接触感染:感染者と接触することで直接的に、あるいは感染者のくしゃみ・咳に含まれるウイルスが付着したモノを触れることで間接的に感染します。
この2つが起こり得るリスクを徹底的に排除することが大切です。つまり、外出の自粛、手洗いや消毒の徹底が最も効果的 です。
また、新型コロナウイルスはモノに付着して数日以上感染力を持ちます。だから、人がよく触れるモノに触らない、身の回りのモノを消毒するといったモノに対する注意も大切です。
4-1. 妊婦ができる全対策
手洗いをこまめにする、不要不急の外出を控える、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムで消毒をするといった基本的なことが最も重要です!
妊婦だからといって特別な対策はありません。基本的な対策をいかにしっかり行えるかがカギとなります。先ほども述べたように、マスクをしていれば安心ということは決してありま せん。だから、「外出しない」ことを特に徹底しましょう!
また、新型コロナウイルスに対してはうがいの有効性はあまり認められていません。しかし、他の病気の予防にはなるため、手洗いと一緒にうがいも行うようにしましょう。
具体的には以下の対策が挙げられます。
・ 不要不急の外出を控える。特に 3密(密閉空間、密集場所、密接場所)は避ける。
・ 手洗いをこまめにする。 温水で20秒以上、手首までしっかり洗うことが望ましい。特に食事前、トイレの後(糞便中にもウイルスがいるため)は重要。
・ アルコール消毒 は非常に有効であるため、手洗いと一緒に取り入れると良い。
・ 集団予防、手指で顔を触れないようにするという観点からマスクを着用。
・ ドアノブ、スイッチ、机など家の中にあるモノの表面を次亜塩素酸ナトリウムでこまめに消毒する。
・ 自宅であっても 換気 をこまめにする。
・ 移動は 自家用車 を使う。
・ 公共の場所でモノ(手すり、タッチパネルなど)になるべく触れない。
・ 働いている場合は勤務先と相談し、テレワークへの移行、休暇の取得。
・ 妊婦健診や産婦人科の受診は かかりつけ病院と相談し、慎重に行う。
・ 通っている病院に新型コロナウイルス患者がいて不安な場合は、相談して病院を変更してもらうなどの対応をする。
・ 免疫力を高めるため、 バランスの取れた食事・十分な睡眠を心がける。
※里帰り出産する場合は?
里帰り出産を希望する妊婦さんも多いと思います。しかし、この時期の移動は非常に感染リスクが高い です。そのため、妊婦健診等を行ってきたかかりつけ病院で出産することが望ましいです。もし里帰り出産をする場合は公共交通機関の利用を避けて、なるべく自家用車で の移動をお願いします!
4-2. 家族の協力も必要です!
当然ですが、家族は妊婦への接触が最も多いです。そのため、ウイルスを保持していたら大変です!自分の身を守るだけではなく、妊婦に感染させないという意識を持つ必要がありま す。
対策としては、 外出の自粛、こまめな手洗い、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムによる消毒の徹底がやはり最重要です!
仕事も可能な限り テレワーク等への移行をしましょう。公共交通機関を利用する通勤、人が集まる職場は感染リスクが非常に高いです。マスクを着用していれば安全ということは決してありません。
また、学校や幼稚園・保育園に通う子どもがいる場合は、状況に応じては休ませるという勇気も大切です。これだけ外出自粛が呼びかけられている中、感染予防のために休むことは決して責められるべきではありません。
新型コロナウイルスは 潜伏期間であっても感染を広げるということがシンガポールの研究チームによって報告されました。潜伏期間とは感染しても症状がない期間のことで、潜伏期間にある人が外出して感染を広げている可能性も考えられます。だから、今外出することは非常にリスクの高い行為 です。家族全員で外出を控え、妊婦に感染させないように協力しましょう!
5.先の見えない不安「感染流行はいつまで続くのか?」
治療薬やワクチンが開発されて、世間が落ち着くまで続くことが考えられます。今の状況から考えると、少なくとも1年間は続くと予想されます。
治療薬については、そろそろ臨床試験の結果が出てきます。また、ワクチンは半年ほどで完成すると考えられています。これらの開発が進めば収束へと向かいます。
日本国内でも、かなり感染が広がっています。ここまで拡大してしまうと、薬や予防接種が完成しても ウイルスを完全に排除するのは難しいです。だから、以下の状況になることが収束のポイントです。
・ 薬やワクチンの開発によって人々があまり恐怖を感じなくなる。
・ 感染者数が大幅に減少し、恐れるに足らないウイルスという認識になる。
こうした状況になれば、ニュースやSNS等で頻繁に取り上げられることも少なくなります。 そして、今まで通りの生活が戻ってくるはずです。
今回の流行は インフォデミック と呼ばれています。インフォデミックとは、インフォメーション(=情報)とパンデミック(=感染症の大流行)という言葉を合体させたものです。 つまり、SNSやネットなどの普及によって大量の情報があふれ、過剰に人々の不安を煽っている面があるということです。そのため、世間の新型コロナウイルスへの恐怖感が軽減され、受容されることが収束の条件であることは間違いありません。
6. 感染の疑いがあっても落ち着いて!
発熱(37.5度以上)や風邪などの症状が2日以上続く場合、強い倦怠感や呼吸困難を生じる場合は、かかりつけ病院と帰国者・接触者相談センターに相談しましょう!そして、そこで指定された医療機関を受診します。
新型コロナウイルス感染の疑いがあっても落ち着いてください。重症化リスクや胎児奇形・ 流産等のリスクは今のところ報告されていません。慌てずにかかりつけ病院や帰国者・接触者相談センターに相談 することが大切です!
病院を受診する場合は、 必ず病院や帰国者・接触者相談センターに相談してから病院を受診 しましょう。病院には免疫力の低下した患者や他の妊婦、高齢者がいるからです。
また感染の疑いがある場合、 妊婦健診と産婦人科の受診についてはかかりつけの病院に相談してから対応 しましょう。
※感染の疑いがなくても濃厚接触の可能性がある場合は、妊婦健診や産婦人科受診の前に病院に必ず相談してください。医療関係者も感染予防をして対応にあたる必要があるからで す。
7. 現在の治療は対症療法
現在の新型コロナウイルス患者への治療は、対症療法(症状を緩和するための処置で、症状に応じた治療) です。具体的には安静、水分摂取、解熱剤投与、酸素補給などが挙げられま す。あくまでも症状を抑える・緩和する目的で行う治療であり、最終的には自分の体の免疫に頼ることになります。
現時点では、妊婦が重症化しやすいという報告がないため、基本的には対症療法で治すことが可能です。しかし、免疫力が低下している場合や基礎疾患(糖尿病、心不全など)がある場合は重症化しやすいため注意が必要です。
「治療薬はまだなのか?」と騒がれていますが、現在は臨床試験(薬の効果や安全性を確かめる試験)を行っている段階です。もう少しで結果が出てくるため、少なくとも年内には薬が完成する と考えています。
8. まとめ
妊婦と新型コロナウイルスについて幅広くお話してきました。少し長くなってしまったので、以下に重要なポイントを挙げます。
・ 妊婦が重症化しやすいという報告は今のところない。
・ 胎児の奇形や発育不全も現時点では報告されていない。
・ 子宮内感染の可能性はある ため、注意が必要。
・ 感染しても出産は可能だが、いろいろな制限がある。
・ とにかく 外出しないことが最重要。
・ マスクはつけなければならないが、あまり効果を期待しない方がいい。
・ 妊婦に感染させないという意識を家族全員が持つこと。
データ数がまだ少なく、わかっていないことも多いのが今回の新型コロナウイルスです。そのため、やはり 感染しないことが一番です。感染しないためには、とにかく「外出しない」 こと。これを徹底 しましょう!
この記事が、少しでもみなさんのお役に立てれば幸いです。
そして、みなさんが無事出産できることを心よりお祈り申し上げます。
参考文献
・ 厚生労働省 「妊婦の方々などに向けた新型コロナウイルス感染症対策」概要 https://www.mhlw.go.jp/content/11925000/000618009.pdf
・ 厚生労働省 妊婦の方々向けのリーフレット https://www.mhlw.go.jp/content/11925000/000618883.pdf
・ 厚生労働省 職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた妊娠中の女性労働者等への配慮について(要請) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10656.html
・ 日本産婦人科感染症学会 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について 妊娠中ならびに妊娠を希望される方へ http://jsidog.kenkyuukai.jp/images/sys/information/20200331160545-2424FB0FF4B85C586F 3566280E9AA55202AC66D6776798BCFADF36C311C4B7C4.pdf