妊婦の運動はいつから?どのくらい?簡単にはじめられる運動3つ

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妊娠中は体調が優れない、お腹が大きくて動きづらいといった理由で運動不足になっていませんか?

でもそんな妊婦さんも心の中では、「運動したい」「運動した方がいい」と思っている方も少なくないはず。

「どんな運動をしたらいいの?」「どのくらいのペースで、どのくらいの時間がいいの?」「初期や後期でも運動して大丈夫?」などといった疑問や不安が多いのも、なかなか運動できていない理由の1つになっているのではないでしょうか。

この記事ではそういった妊婦さんの疑問や不安を解決しつつ、運動をはじめたいと思っている妊婦さんに役立つ情報をお届けしていきます。この記事を読むことで、不安を持つことなく運動に取り組んでいただけるとうれしいです。

■目次

 

1.妊婦は運動して大丈夫?
 1-1.体調が安定していればいつでもOK
 1-2.妊娠初期でも運動はOK
 1-3.出産間近でも無理のない範囲で運動OK
2.妊婦がしてもいい運動・避けた方がいい運動は?
 2-1.運動の種類、OK・NG一覧表
 2-2.妊婦がOKな運動
 2-3.妊婦がNGな運動
3.妊婦の運動時間の目安は?
 3-1.運動は週2~3回、1回あたり60分以内
4.妊婦が運動する際の注意点  4-1.運動をしてはいけない妊婦
 4-2.運動時に気を付けること5つ
5.運動嫌いの妊婦さんでも簡単にはじめられる運動3つ  5-1.ウォーキング
 5-2.マタニティヨガ
 5-3.普段の生活に運動を取り入れる
6.まとめ

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1.妊婦は運動して大丈夫?

1-1.体調が安定していればいつでもOK

妊婦さんの体調が安定し、主治医の許可が出ている場合は運動してOKです。妊婦さんは運動することでさまざまなメリットがあるため、むしろ適度に運動することが勧められています。(*1)

【妊婦が運動するメリット】

体重管理、出産に向けての体力維持、ストレスやマイナートラブル(腰痛、便秘など)の解消、病気の予防…など

とくに一大イベントである「お産」は体力勝負です。運動をして、体力を維持したまま臨みたいもの。お産に不安がある…という方は、少しでも運動して体力をつけておくと安心ですよ。

ただし、妊娠中は体調が優れないこともあるので、そういったときに無理に運動する必要はありません。無理のない範囲で運動していきましょう。

1-2.妊娠初期でも運動はOK

妊娠初期でも体調が整っており、妊娠の経過が安定していれば、軽い運動はOKです。

「初期に運動することで流産の危険はないの?」と思う方も多いですが、日本産科婦人科学会によると、運動が原因で流産することはほとんどないとされています。早期流産の原因は遺伝子の異常であることが多く、妊婦さんに原因があるわけではなく、妊娠が成立した時点で運命づけられたものであるということです。(*2)

妊娠前から習慣的に行っている運動でも、危険がないものであれば強度を落として行って構わないとされています。(*3)それでも不安がある場合は主治医に相談しましょう。

ただし、運動習慣がない方が妊娠してから運動を始める場合、急な運動は身体の負担になるため、負荷の軽いウォーキングなどからはじめることをおすすめします。

1-3.出産間近でも無理のない範囲で運動OK

無理なく行える運動であり、体調が整っており妊娠の経過が安定していれば、出産間近でも運動して大丈夫です。妊娠後期は体重増加に悩む方が多いもの。適度な運動で体重管理にも役立てましょう。

ただし、お腹が大きくなっていてバランスを崩しやすくなっているため、転んだりケガしたりしないよう注意しましょう。

しかし、出産間近はお腹がかなり大きく、日常生活を送るのもつらい時期。家事をこなすだけでもかなりのエネルギーを消費します。運動がかえってストレスにならないよう、体調と相談しながら行ってください。

【妊婦が運動してもいい目安】

・体調、妊娠の経過が安定している
・主治医から許可されている

2.妊婦がしてもいい運動・避けた方がいい運動は?

妊婦さんはどのような運動なら安全に行えるのでしょうか。一覧表をもとに詳しく解説します。

2-1.運動の種類、OK・NG一覧表

妊婦さんには転倒やケガの心配が少なく、負荷を自分で調節しやすいスポーツが推奨されています。日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会の診療ガイドラインでは、妊婦さんが行うスポーツ種目について好ましい、好ましくない、危険の3つに分けて提示しています。

 種目備考
好ましいスポーツウォーキング
エアロビクス
水泳
固定自転車
ヨガ
ピラティス
ラケットスポーツ
 
好ましくないスポーツホッケー
ボクシング
バスケットボール
レスリング
サッカー
ホットヨガ
接触や外傷の危険が高い
危険なスポーツ体操競技
乗馬
重量挙げ
スキー(雪・水上)
スケート
ハングライダー
スキューバダイビング
激しいラケットスポーツ
転びやすく外傷を受けやすい

  (引用:日本産婦人科学会 日本産婦人科医会 産科婦人科診療ガイドライン2017年版

では、OK・NGな運動について詳しくみていきましょう。

2-2.妊婦がOKな運動

水泳、ウォーキング、エアロビクスなどの軽い運動であればOKです。負荷が軽く無理なく行えるでしょう。これらは有酸素運動でもあるので、体力作りにも適しています。

室内で運動をしたい妊婦さんは、ストレッチや足踏み、ほかにもスクワット(椅子などに手を添えてバランスを崩さないように)がおすすめです。

2-3.妊婦がNGな運動

競技性が高い運動負荷が高い運動転倒の危険がある運動体をひねる運動はNGです。日本臨床スポーツ医学会では、妊婦はこれらの運動を避けるように呼びかけられています。(*3)

具体的には、バスケやサッカーなどの競技性が高いスポーツ、腹圧が上がる過度な筋トレ、転倒の危険が高まるスキー、スケートなどがNGとなります。とにかく、妊婦さんが運動する際には、ケガをしないこと、赤ちゃんに負担をかけないことを徹底する必要があるのです。

また、仰向け(仰臥位)になると仰臥位低血圧症候群の危険があるため、仰向けになるような動きは避けてください。

※仰臥位低血圧症候群:大きくなった子宮が下大静脈を圧迫することで、血圧が低下すること。重症になると、呼吸困難、意識低下などのショックにつながる。

3.妊婦の運動時間の目安は?

では実際に運動をはじめようと思った際、どのくらいの時間行えば安全に、かつ効果的に行えるのでしょうか。

3-1.運動は週2~3回、1回あたり60分以内

日本臨床スポーツ医学会によると、運動習慣がない妊婦さんに対しては週2~3回、1回あたり60分以内の運動がすすめられています。(*3)

また週に2~3回の有酸素運動を行っている妊婦さんは、早産率を増加させずに身体機能を増進・維持させることができるという報告があり(*1)、週2~3回の頻度が良いというのは科学的にも裏付けられていることなのです。

さらに、「時間は60分以内」とありますが、一般的に有酸素運動は20分以上で効果が表れてくるとされています。なるべく20分以上を目安に運動を行うようにするといいでしょう。

【妊婦の運動の目安】

頻度:週2~3回
時間:60分以内 (※有酸素運動の効果が表れる20分以上を目安に)

4.妊婦が運動する際の注意点

4-1.運動をしてはいけない妊婦

日本臨床スポーツ医学会のでは、妊婦が運動をしてはいけない目安として、以下の項目をあげています。以下の項目にあてはまる妊婦さんには、通常、主治医から運動しないよう注意があります。

絶対的禁忌(絶対に禁止)相対的禁忌(原則は禁止)
心疾患高血圧
破水貧血または他の血液疾患
早期の陣痛甲状腺疾患
多胎糖尿病
出血動悸または不整脈
前置胎盤※妊娠末期の骨盤位※
頸管無力症※極端な肥満
3回以上の自然流産極端なやせ
 早産の既往
 子宮内発育遅延の既往
 妊娠中出血の既往
 極端に非活動的な生活習慣

   引用:妊婦スポーツの安全管理基準 日本臨床スポーツ医学会

運動が禁止されるのは早産・流産の危険が高い妊婦さん、心臓や血液の持病がある妊婦さん、酸素不足になりやすい妊婦さんなどです。自分では判断が難しい項目ではあるので、不安に思った方は一度主治医に相談してみましょう。

※前置胎盤:胎盤が子宮の出口をふさいでしまうこと。大量出血、早産の危険性がある
※頸管無力症:子宮の出口が開きやすくなっていること。早産の危険性がある
※骨盤位:逆子のこと

4-2.運動時に気を付けること5つ

  • きつい、しんどいと感じたらすぐにやめる
  • 炎天下や高温多湿の環境での運動は避ける
  • 転倒の危険がある場所では運動しない(傾斜、段差など)
  • 仰向け(仰臥位)にならない
  • 異変を感じたらすぐに主治医に相談する

①きつい、しんどいと感じたらすぐにやめる

妊婦さんがきつい、しんどいと感じているときには、赤ちゃんも酸素不足になって苦しいと感じている可能性があります。また、運動刺激によって子宮収縮が起こる可能性もあります。そのため、きつい、しんどいと感じた時点で強度を落とす、または運動をやめることが大切です。

②炎天下や高温多湿の環境での運動は避ける

炎天下や高温多湿の環境での運動は、妊婦さんの体温上昇につながり、赤ちゃんの奇形や脳障害を起こすことがあります。(*3)そのため、夏の運動は涼しい時間帯に運動する、エアコンをつけて室内で運動するなどの工夫が必要です。

③転倒の危険がある場所では運動しない(傾斜、段差など)

妊婦さんはお腹が大きく、バランスをとりにくい体型です。そのため、普段より転びやすくなっています。妊婦さんが転ぶと、その衝撃で早産・流産につながったり、赤ちゃんにケガをさせてしまったりします。運動するときは、平坦で転ぶリスクが少ない場所を選びましょう。

④仰向け(仰臥位)にならない

上を向いて横になった状態(仰向け)になると仰臥位低血圧症候群を起こす危険があります。仰向けになる運動・動作は避けてください。

⑤異変を感じたらすぐに主治医に相談する

日本産科婦人科学会のガイドラインによると、以下の症状が出たときはすぐに医師へ相談する必要があるとされています。

【運動中止のサイン】

立ちくらみ、頭痛、胸痛、呼吸困難、筋肉疲労、下腿の痛みあるいは腫脹、腹部緊満や下腹部重圧感、子宮収縮、性器出血、胎動減少・消失、羊水流出感など(*1)

運動時に限ったことではありませんが、少しでも変だなと感じたら遠慮なく医師に相談するようにしましょう。

5.運動嫌いの妊婦さんでも簡単にはじめられる運動3つ

5-1.ウォーキング

手軽にはじめられるのが魅力のウォーキング。靴さえあれば出来るので、明日からでもすぐに取り組むことができます。1回の目安は20分以上~60分程度までとしましょう。

手を大きく振る、大股で歩くなど、動きを大きくすることで消費カロリーを増やすことができますよ。会話ができるくらいのペースで、無理なく行いましょう。

5-2.マタニティヨガ

自宅で運動を行いたい方はマタニティヨガがおすすめ。

ヨガにはリラックス効果があるとされ、妊婦さん用のマタニティヨガのプログラムも豊富にあります。なかなか外出しにくいときでも、動画を見ながら取り組んでみてはいかがでしょうか。

5-3.普段の生活に運動を取り入れる

家事をテキパキ行う、通勤の際に遠回りして歩く、エレベーターではなく階段を使う、など、普段の生活に運動を取り入れるのもいいでしょう。

運動する時間がない!運動が苦手!という方にもおすすめの方法です。

6.まとめ

妊婦さんの運動に関する疑問について解説をしました。

  • 妊娠初期や後期に関わらず、軽い運動であればOK
  • 医師から禁止されている場合や、体調がすぐれない場合はNG
  • 運動の目安は週2~3回、1回あたり60分以内
  • 運動により、出産に向けた体力維持、体重管理、ストレス解消やマイナートラブルの軽減、に役立つ
  • ウォーキングやマタニティヨガ、普段の生活に取り入れやすい運動がおすすめ

運動は一般の方だけでなく、妊婦さんにとっても健康維持に効果的です。運動しようかどうか迷っていた方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

 

【参考・参照】

(*1)産婦人科診療ガイドライン-産科編2017
(*2)流産・切迫流産 日本産科婦人科学会
(*3)妊婦スポーツの安全管理基準 日本臨床スポーツ医学会

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