妊婦のビタミンA|摂りすぎが心配!赤ちゃんへの影響と気を付けたい食べ物

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妊婦さんが気を付けたい食べ物・栄養素の中でも意外と知られていないのがビタミンA。

レバーやにんじんなどの野菜や、サプリメント、つわり中の栄養ゼリーなど、ビタミンAが入っているものを知らないうちに食べすぎてしまった!と不安になる妊婦さんも少なくありません。

妊娠中にビタミンAを過剰摂取すると、赤ちゃんへの影響があることが知られており、特に妊娠初期は必要量以上に摂らないことが大切です。(*1)ただし、野菜に含まれるビタミンA(βーカロテン)は摂り過ぎても赤ちゃんに影響はなく、問題ありません。(*2)

今回は注意が必要なビタミンAについての解説と、赤ちゃんへの影響、ビタミンAが多く含まれる食べ物などについて詳しくお伝えしていきます。

 

 

妊婦がビタミンAに気を付けたい理由

妊婦がビタミンAを摂り過ぎると?

妊婦がビタミンAを摂り過ぎた場合、赤ちゃんの眼球、頭蓋、肺および心臓の奇形の可能性があることが知られています。(*2) 

本来であれば、ビタミンAは赤ちゃんの発育に必要な栄養素です。ですが、推奨されている量以上に妊婦が摂取することで赤ちゃんに影響を与えてしまいます。

ビタミンAは体内に蓄積しやすいため、ビタミンAを大量摂取した後、体外へ排出されるまでには時間がかかります。そのため、妊娠初期だけでなく、妊娠を希望している女性もビタミンAの過剰摂取に気を付ける必要があります。

 

そもそもビタミンAは過剰症になりやすい

ビタミンAの過剰摂取は、妊婦だけでなく一般の方も気を付ける必要があります。頭痛やめまい、吐き気、皮膚炎、関節や骨の痛みなどの症状や、骨折リスクが上昇する可能性があることもわかっており、レバーやサプリメントなどの大量摂取が原因となっていることが多く報告されています。(*2)

ビタミンAが過剰摂取になりやすい理由として、ビタミンAが水に溶けにくく、肝臓に蓄積しやすいことがあります。

ビタミンには、水に溶けやすい「水溶性」と、脂に溶けやすい「脂溶性」の2種類があり、ビタミンAは「脂溶性」です。水溶性のビタミンであれば、少しぐらい過剰摂取しても尿や汗などに溶けて体外へ出ていってくれますが、脂溶性のビタミンは過剰摂取しても排出されにくく、肝臓に蓄積されます。

 

 

ビタミンAの基準

ビタミンAの基準は?

実は、妊婦が摂取していい上限量は具体的に定められておらず、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、推奨されている必要量(650~780μg)以上は摂らないこととなっています。(*3)

一般的な成人女性については上限量が定められており、ビタミンAの上限量は2700μgとなっています。

<ビタミンAの摂取基準>

推奨量

非妊娠時

650~700μg

妊娠初期

650~700μg

妊娠中期

650~700μg

妊娠後期

730~780μg

授乳期

1100~1150μg

上限量

非妊娠時

2700μg

妊娠時

推奨量以上は摂らないこと

 

野菜の「β―カロテン」は問題なし

定められている上限量について「β-カロテンは含めない」となっており(*3)、野菜に含まれる植物性のビタミンAは問題ありません。これは、β-カロテンは過剰摂取しても重大な健康障害が起きることはなく、赤ちゃんの先天異常なども知られていないという理由です。(*2)

ビタミンAは赤ちゃんの発育に必要な栄養素であるため、野菜などからしっかりと補う必要があります。中でも妊娠後期、授乳期には、付加して摂る必要があるため、野菜をしっかりととる習慣をつけておきたいですね。

 

 

レバーに含まれるビタミンAは要注意!

食品安全委員会より、妊婦はレバーを食べないように注意が呼びかけられています。なぜなら、レバーはビタミンAの貯蔵庫であり、少量でもビタミンAのとり過ぎに繋がってしまうためです。

 

「レバー=肝臓」はビタミンAの貯蔵庫

レバーとは肝臓のことですが、摂取したビタミンAは肝臓に蓄積されます。そのため、鶏や豚のレバーを食べることは、ビタミンAの貯蔵庫をそのまま食べているのと同じため、ビタミンAの大量摂取に繋がってしまいます。

特に鶏と豚のレバーは、少量でもすぐに上限量を超えてしまいます。レバーの種類とビタミンAの量を表にまとめています。

レバーの種類1回あたりの量ビタミンAの量
(レチノール活性当量)
成人女性の上限量
鶏レバー焼き鳥串1本(30g)4200μg2700μg
豚レバーレバニラ炒め(60g)7800μg2700μg
牛レバーレバニラ炒め(60g)660μg2700μg

※日本食品標準成分表2015年版(七訂)より

レバーの食べすぎは、妊娠中に関わらず、ビタミンAの過剰摂取に繋がってしまいます。食品安全員会から「妊娠中、または妊娠を希望する女性はレバーおよびレバー製品を食べないこと」と注意が呼びかけられています。(*4)

レバーは妊娠していない場合は鉄分の補給には適していますが、妊娠中は控えておきましょう。

 

 

レバー以外の食品でビタミンAが多いのは?

ビタミンAの摂り過ぎに気を付けたい食べ物

レバー以外にもビタミンAの過剰摂取に繋がってしまう恐れがある食べ物を以下の表にまとめています。

食品名

100gあたりのビタミンA量
(レチノール活性当量)

あんこう きも8300μg
うなぎ きも4400μg
うなぎ2400μg
ほたるいか1500μg
フォアグラ1000μg

 

きも、フォアグラ

あんこうやうなぎの「きも」は肝臓のことを指すため、レバーと同様にビタミンAの量が多くなっています。また、がちょうの肝臓であるフォアグラも同様に注意が必要ですが、きもやレバーに比べるとビタミンAの量は若干少なくなっています。

きもやフォアグラはあまり食べる機会はありませんが、お祝いの席や、外食の席などでは出てくることもあります。妊娠中は食べすぎに注意し、なるべく控えておく方が良いでしょう。

 

うなぎ

うなぎ丼に使われるうなぎの量はおおよそ100g程度なので、2400μgのビタミンAが含まれます。

うなぎは年々希少になっており、価格も高価であることから食べる機会は減ってきています。しかし、土用の丑の日や、ちょっとした御馳走として妊娠中でも食べることもありますよね。

うなぎ丼1人分を食べても成人女性の上限量は超えていませんが、妊娠中は必要量650~780μg以上の摂取は控えた方が良いとされています。これはうなぎ30g程度の量です。うなぎを食べるときは量は控えめにしておき、毎日食べることは避けておきましょう。

 

ほたるいか

ほたるいかは、5㎝ほどの小さないかで、酢味噌和えや、串焼きなどにして食べられることが多い食べ物です。あまり一般的な食品ではありませんが、日本海付近では盛んに食べられているため、地域によっては気を付けたい食品です。たくさん食べることは控えておきましょう。

 

以上をまとめると、妊娠中のビタミンAで覚えておきたいのは「肝臓」「うなぎ」ですね。牛乳や卵にもビタミンAが含まれますが、妊娠中に摂りたいカルシウムも豊富なため、こちらは積極的に取り入れましょう。

 

 

ビタミンAに関する疑問

ビタミンAはまったく摂らない方がいい?

ビタミンAには、視力を正常に保つ働きや、免疫システムに関わる働きがあるため、欠かせない栄養素です。

妊娠中に不足しやすいことも知られており、WHO(世界保健機関)によると、世界中で推定980万人の妊婦がビタミンA不足による眼球乾燥症を発症していると発表されています。(*2)また、授乳期に不足すると、乳児にもビタミンAが不足してしまい、乳児にも眼球の乾燥の症状がみられることが知られています。

摂取しても問題のない「β―カロテン」が含まれる、色の濃い野菜を積極的にとりましょう。

 

サプリメントは大丈夫?

ビタミンAが入っている場合でも、「β―カロチン」とはっきり書かれているものであれば心配いりません。ですが、1日の目安量「650~780μg」を超えないようにしましょう。B-カロチンかどうかわからない場合は、ビタミンAが含まれるサプリメントの使用は避けましょう。

また、気を付けたいのがサプリメント以外でも、ゼリーやジュースなどにビタミンを添加して強化している食品です。つわりの間に利用している方も多いのではないでしょうか。こちらもβ―カロテンであることを確認するか、パッケージに書かれている注意表示をよく読みましょう。

例えば森永製菓の「inゼリー マルチビタミン」には、ビタミンAがβ―カロテンであるかどうかは書かれていません。ですが「ビタミンAを含みますので妊娠3ヶ月以内又は妊娠を希望する女性は過剰摂取にならないように注意してください。」と表示されています。ビタミンAの含有量は「770〜1367μg」となっているため、飲むとするなら1/2~1パックまででしょう。

 

摂りすぎてしまったかも!と不安になったら?

かぼちゃやにんじん、ほうれん草や、野菜ジュースなどのビタミンAは、ほとんどが影響のないβカロテンなので、心配はいりません。むしろ、不足しやすい栄養素なので積極的に摂りましょう。

サプリメントやレバーなどをとりすぎた場合、不安になるかもしれませんが、一番の対策はそれ以上を食べないこと。また心配しすぎもストレスとなりよくありません。不安な場合は産婦人科で医師に相談してみましょう。定期検診で赤ちゃんの様子を見ると、ホッとするものですよ。

 

 

ビタミンAの上手な摂り方

β-カロテンの多い食品

ビタミンAの中でも、妊娠中に補いたいβ-カロテンは色の濃い野菜(緑黄色野菜)に多く含まれています。

食品100gあたりビタミンAの量(レチノール活性当量)
にんじん690μg
しゅんぎく380μg
ほうれん草350μg
かぼちゃ330μg
ミックスベジタブル320μg
こまつな260μg

もやしやきゃべつなどの色がうすい野菜にはほとんど含まれていないため、にんじんやほうれん草などの色の濃い野菜を積極的にとりましょう。

中でも、ほうれん草、かぼちゃ、ミックスベジタブルの冷凍を利用すると、使いたい時にサッと使えて便利です。和え物やサラダに使ったり、彩りとして使ったりと、使い勝手もよく便利な食材です。

 

ビタミンAは油と一緒に摂ろう!

ビタミンAは油に溶けやすい脂溶性のビタミンのため、油と一緒に摂ることで吸収率がアップします。例えばにんじんの場合、そのまま食べるよりもサラダ油と一緒にとる方が、血中β-カロテン濃度が平均2.7倍も高まることもわかっています。(*5)

にんじん以外でも、ほうれん草はお浸しよりも炒め物に、かぼちゃは煮物よりもシチューなどに入れる方がビタミンAを効率的に摂ることができます。

体重増加が気になり、カロリーを気にして油を全く摂らないなどと極端な制限をすると、ビタミンAのような脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,E,K)の吸収率が下がってしまうため、気を付けましょう。

 

 

ビタミンAが摂れるお手軽レシピ3選

5分でできる常備菜!ほうれん草ナムル

冷凍のほうれん草をレンジで加熱するか、水で流して解凍して、調味料を和えれば5分で作ることができます。

ほうれん草が苦手な方でも、ごま油の香りと絶妙な塩加減で食べやすい味付けになっています。常備菜として冷蔵庫に置いておくのも良いですね。

5分でできる常備菜!ほうれん草ナムル(リンク先:クックパッド)

 

冷凍かぼちゃで時短!かぼちゃのサラダ

冷凍かぼちゃを利用すれば、あっという間にサラダを作ることができます。かぼちゃだけでもコンソメとマヨネーズが良い味を出しています。きゅうりや玉ねぎ、ハムやツナなどを入れてもOKで、アレンジしやすいレシピです。

冷凍かぼちゃで時短!かぼちゃのサラダ(リンク先:クックパッド)

 

炊飯器に入れるだけ!簡単ピラフ

栄養豊富なミックスベジタブルを使った、炊飯器で作る炊きこみピラフです。バターとコンソメがご飯にしみ込んでおいしく炊きあがります。オムライスのご飯としても良いですし、おにぎりにして冷凍しておき、間食として食べるのも良いでしょう。

炊飯器に入れるだけ!簡単ピラフ(リンク先:クックパッド)

 

まとめ

妊婦さんのビタミンA摂取について

  •  妊婦さんはレバー、ビタミンAの入ったサプリメントはNG
  •  野菜に含まれるビタミンAは問題なく、むしろ赤ちゃんに必要な栄養素なので積極的にとるべき
  •  食べすぎてしまった場合の対処は、「それ以上食べないこと」「妊婦検診で相談すること」。不安な気持ちを持ち続けることで、ストレスにならないように対処しましょう。

 

妊娠中は気を遣うことが多く、とくに食べ物は赤ちゃんへの影響が心配で不安になってしまいますよね。正しい知識を身に付け、時には“気にしすぎない”ことも大切ですよ。健やかな妊婦生活を過ごし、元気な赤ちゃんに会えるのを楽しみに待ちましょう。

 

【参考・参照】

(*1)食品安全委員会 お母さんになるあなたへ<https://www.fsc.go.jp/sonota/maternity/maternity.pdf>

(*2)厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』 eJIM ビタミンA<https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/13.html>

(*3)厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020年版<https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>

(*4)食品安全委員会 ビタミンAの過剰摂取による影響<https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheet-vitamin-a.pdf>

(*5)日清オイリオ Q.油とビタミン類の深い関係って?<https://www.nisshin-oillio.com/oil/qa/qa06.html>

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