健康のために、カルシウムを積極的に利用したいという人にとって、カルシウムと吸収の話は知りたいところではないでしょうか。
せっかく、カルシウムを摂取すると決めたなら、できるだけ効率的にカルシウムを摂取したいところですよね。
実は、カルシウムは他の栄養素によって、吸収率が上がったり下がったりします。また、栄養素によってはからだからカルシウムを排泄する作用があるものもあります。この記事では、医学書や研究を元に、カルシウムと吸収の話をわかりやすくまとめました。
カルシウムを効果的に利用するために、ぜひカルシウムと吸収について詳しく知っておきましょう!
目次
4.薬を飲むときは要注意!カルシウムは多くの薬の吸収を阻害します
1.カルシウムの吸収に関わる5つの栄養素
1-1.カルシウムの吸収率を上げる栄養素
カルシウムの吸収率を上げる成分は、活性型ビタミンDです。
活性型ビタミンDは、通常のビタミンDとは異なり、食事やサプリメントなどには含まれません。活性化ビタミンDは、ビタミンDが肝臓と腎臓の働きによって変化してつくられます。
活性型ビタミンDのカルシウムの吸収への働き
活性型ビタミンDは3つの方法で血液中のカルシウム濃度に関わっています。
- 小腸上部でカルシウムの吸収を助ける
- 腎臓でカルシウムが尿の中に出ていくのを抑える
- 骨からの血液中へのカルシウム放出を調整する
これらの3つの役割から、カルシウムと活性型ビタミンDは切っても切れない関係にあります。
活性型ビタミンDを増やすには
活性型ビタミンDを増やすためには、体内のビタミンDを増やす必要があります。ビタミンDは
- 食事などで摂取する
- 日光を浴びることで皮膚で生成される
の二つの方法で体に取り入れることができます。
どんなに多くてもどちらか一方だけでは、血液中のビタミンDは不足することが報告1)されています。そのため、食事も日光もどちらも重要です。
食事での摂取
ビタミンDは魚に多く含まれます。しらす干しや焼き鮭、イワシやサンマなどに多く含まれ、簡単に摂取できます。
また、厚生労働省の調査2)3)によると、多くの日本人で必要な量を摂取していることがわかっています。よほど気になる方でもない限り、サプリメント等を使う必要はないでしょう。
日光を浴びることによる生成
ビタミンDは、皮膚で7-デヒドロコレステロールという物質から、紫外線と熱の力を借りて合成されます。昼間の日光で週2回5~30分浴びるだけで、十分な量のビタミンDが生成されます。(日焼け止め等がない場合)
CPPもカルシウムの吸収を助けると言われています。しかし、トクホの一部の商品ではカルシウムの吸収を助けることがわかっていますが、栄養素で見た場合にはカルシウムの吸収への作用ははっきりと確認されておりません。そのため、商品に含まれる他の成分の影響かもしれないというのが現状です。2015年末現在、CPPのトクホで今も販売している商品はありません。CPPサプリではカルシウムの吸収について科学的な根拠がある商品はありません。
1-2.カルシウムの吸収率を下げる栄養素
一部の食物繊維はカルシウムの吸収率を下げてしまうことが指摘されています。一例としては、ほうれん草やルバーブなどに含まれる食物繊維が挙げられています。
食物繊維にカルシウムが吸着してしまうため、小腸でのカルシウムの吸収率が下がるものと考えられています。
相互作用を避けるために、カルシウムのサプリでは摂取してから2時間以内はこれらの食事を避けるのが良いでしょう。食事でカルシウムを摂取する分においては大きな問題はないと考えられています。
1-3.体からカルシウムを排泄してしまう栄養素
カフェインとナトリウムはカルシウムをからだから排泄してしまう栄養素として知られています。特にカルシウムが不足気味な方や更年期以降の女性では気を付ける方が良いでしょう。
カフェイン
過度のカフェインは尿中に排泄するカルシウムの量を増やしてしまいます。からだからのカルシウムの喪失を考えると、過度のカフェイン摂取は避け、十分な量のカルシウムを摂取するのが良いでしょう。
特に1日に300mg以上のカフェイン(コーヒー3、4杯)は老人の女性で骨量低下や骨折に関連があるのではないかと指摘4)されています。
ナトリウム
ナトリウムを多く含む食事は、体の中のカルシウムを喪失させます。
特に更年期以降の女性で骨量低下を防ぐためには、塩分摂取量が多い人ほど多くのカルシウム摂取が必要になってしまいます。骨粗鬆症を防ぐためにも、塩分の摂りすぎは控えておきましょう。
- 活性型ビタミンDはカルシウムの吸収と深くかかわっている。ビタミンDを増やすために、日光に当たったり、食事から摂取しよう
- CPPはトクホでは効果が認められているものの、栄養素としてはカルシウムの吸収についてはっきりわかっていない
- 食物繊維はカルシウムとくっつき、小腸での吸収率を下げる
- カフェインとナトリウムはからだからカルシウムを排泄してしまうので過剰摂取に注意が必要
2.カルシウムにより吸収が阻害されてしまう2つの栄養素
マグネシウムと亜鉛はカルシウムにより吸収量が低下してしまうことが知られています。どちらも吸収の際にカルシウムと拮抗してしまうためです。
とはいうものの、ほとんどの健康な人ではマグネシウムも亜鉛も十分に体の中に貯蔵されています。そのため、長期間であっても、カルシウムを摂取することによりこれらの栄養素が不足するということは無いと考えられています4)。
カルシウムサプリと同時にマグネシウムを摂取するべきだというような売り言葉には乗ってしまわないようにしましょう。
不足気味の人では要注意
マグネシウムや亜鉛が不足気味の人では、カルシウムのサプリメントは気を付ける必要があります。
その場合には、それらの栄養素の吸収に影響が出ないよう、カルシウムサプリメントは就寝前などに飲むようにすると良いでしょう。(食事と時間をずらせば良いと考えられています。)
3.体の中でカルシウムの吸収率が高い食品
食品のなかで最も吸収率が高いのは乳製品です。日本栄養士会によると、カルシウムの吸収率は牛乳で約40%、小魚は約33%、野菜は約19%のようです。
そのことを考えると、カルシウム源として牛乳やプロセスチーズなどを摂取するのは効率が良いでしょう。
4.薬を飲むときは要注意!カルシウムは多くの薬の吸収を阻害します
カルシウムは多くの薬と相互作用を示し、薬の効果を弱めたり強めたりしてしまいます。
カルシウムによって影響を受ける薬として、抗生物質、骨粗しょう症治療薬、甲状腺治療薬、抗不整脈薬、心不全治療薬、降圧薬などがあります。詳しくはカルシウムの効果の記事の3-2.で解説しています。
さまざまな薬に影響を与えるため、薬を飲んでいる人はカルシウムのサプリメントを利用する前に必ず医師に相談するようにしてください。
おまけ.カルシウムの吸収のメカニズム
食事で摂取したカルシウムは小腸で吸収されます。
吸収のメカニズムは2つあります。小腸上部では活性型ビタミンDの作用によりカルシウムを吸収します(能動輸送)。それに対し、小腸下部では濃度差を利用した受動輸送により、血管内に吸収されます。
小腸における能動輸送のメカニズム
- 小腸の上皮細胞にある「上皮型カルシウムチャンネル」を通して、カルシウムが小腸の上皮細胞に取り込まれる
- カルシウムは細胞内でカルビンディンというたんぱく質と結合し、細胞内に蓄えられる
- 基底膜にあるNa/Ca交換体、Caポンプにより血中へ運ばれる
活性型ビタミンDは、細胞の核に働きかけ、これら3つ全ての過程を促進しています
5.効果的にカルシウムを利用するために
これまでカルシウムと吸収についてかなり詳しく解説してきました。
カルシウムは体の様々な機能に関係し、健康を維持するのに必要不可欠な栄養素です。そのため、しっかりと吸収について知っておくことは、健康維持のためを考えると大切なことだと思います。
健康のために、カルシウムについてもっと詳しく知りたい方はカルシウムの効果の記事やカルシウムの摂取量に関する記事も役に立つでしょう。健康のためにも、ぜひ読んでみていただきたく思います。
最後に簡単にこの記事のポイントをまとめます。
- カルシウムの吸収率に関わる栄養素:吸収率up⇒活性型ビタミンD、吸収率down⇒食物繊維
- カフェインとナトリウムはカルシウムの喪失に関わるため、過剰摂取は避けよう!
- マグネシウムと亜鉛はカルシウムによって吸収が阻害されるので、不足気味の人は気をつけよう!(健康なほとんどの人では問題なし)
- カルシウムは多くの薬と相互作用を示す。薬を飲んでいる人はカルシウムのサプリメントを利用する前に医師に相談するように!
この記事や当サイトのカルシウムに関する記事を読んで、少しでもカルシウムを健康のために役立てていただけると嬉しいです。
参考文献
- 1)Vitamin D Supplementation in Underway Submariners
- 2)厚生労働省:日本人の食事摂取基準2015
- 3)厚生労働省:国民健康・栄養調査(平成25年)
- 4)ナチュラルメディシン・データベース
- 人体の正常構造と機能
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