健康にいいと言われているクエン酸は、実際にどんな効果があるのか知りたいのではないでしょうか。
クエン酸は、クエン酸回路という体の代謝サイクルに関わり、エネルギーを効率よく生産するのに欠かせない成分です。そのため、人体にとっては必要不可欠な成分といえるでしょう。
しかし、摂取した場合の効果に関しては、とても多くの間違った情報が一般に信じられてしまっています。
この記事では、クエン酸の科学的に根拠のある効果について、私たち医大生で医学論文を調査して得られた結果をわかりやすくまとめました。
ぜひ、正しくクエン酸の効果について知り、生活に取り入れるかどうか判断してください。
1.クエン酸の効果
クエン酸の効果として科学的な根拠があるものは、鉄・マグネシウムの吸収効率のアップです。
また、αヒドロキシ酸(クエン酸のほかに乳酸やリンゴ酸など)としてローションやクリームで用いることで日焼けや乾燥肌、にきびに効果があることがわかっています。ただし、食品として摂取する場合にはこの効果はありません。
1-1.鉄・マグネシウムの吸収効率アップ
クエン酸を摂取することで、鉄やマグネシウムの吸収率が上昇することが研究によりわかっています。
鉄やマグネシウムの吸収率が悪い人では、非常に有効だと考えられます。
鉄やマグネシウムの吸収率が悪い人
鉄やマグネシウムといったミネラルの吸収率が低下している人は以下のような人です。
- 乳幼児
- 高齢者
- 胃・腸の病気をお持ちの方
- 胃・腸の手術の経験がある方
ただし、乳幼児ではサプリは使わない方が良いでしょう。思わぬ副作用の恐れがあります。
病気や手術歴がある方では、必ず医師と相談したうえで摂取しましょう。薬との相互作用により副作用が起きることがあります。
鉄の吸収に関する研究報告
実験参加者 | 健康な42人の男女 |
実験種別 | ランダム化比較試験 |
結果 | クエン酸非投与群での鉄の吸収率は3.9%、6.0%(製品により)だったのに対し、クエン酸投与群では鉄の吸収率が54%に改善された |
マグネシウムの吸収に関する研究報告
実験参加者 | 46人 |
実験種別 | ランダム化比較試験 |
実験方法 | 46人の健康な人を3群に分け、マグネシウム-アミノ酸キレート、マグネシウム-クエン酸キレート、酸化マグネシウムをそれぞれ300g/日を60日間摂取させた。実験後に尿と血液を調べた。 |
実験結果 | マグネシウム-クエン酸キレートが3つの中で最も多くのマグネシウムを体内に吸収したことが分かった。 |
参考論文Mg citrate found more bioavailable than other Mg preparations in a randomised, double-blind study.
1-2.日焼け・乾燥肌・にきびへの作用
Natural Medicine database(アメリカで最も医学的に信頼されている成分栄養データベース)によると、α-ヒドロキシ酸はクリームやローションとして利用することで、日焼けや乾燥肌、にきびの治療に効果的だということが指摘されています。
α-ヒドロキシ酸とは
αヒドロキシ酸は食べ物に含まれる酸で、クエン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸などの総称です。
このため、日焼けや乾燥肌などへの作用はクエン酸だけでの作用ではないかもしれません。
どのように作用するのか
死んでしまった皮膚細胞の一番上の層を除去することで、日焼けや乾燥肌の治療の効果を示すと考えられています。
食品として摂取しても効果はない
日焼けや乾燥肌、にきびへの治療効果について、食品として摂取して効果があったという医学的な研究は見当たりませんでした。
これらを目的にする場合には、サプリや健康食品で摂取するのではなく、クリームやローションなどを用いるようにしましょう。
スキン・ピールでは日焼けの治療に効果なし
Natural Medicine databaseによると、α-ヒドロキシ酸の日焼け治療の効果はスキン・ピールでは作用を示さなかったということが指摘されています。
1-3.一般に誤解されているクエン酸の効果について
クエン酸の効果は、一般に多くの間違った情報が流れています。科学的根拠のある正しい情報を、簡潔に表としてまとめました。
効果の科学的根拠 | 効果 |
---|---|
おそらく効果あり | 鉄・マグネシウムの吸収促進 日焼けの治療(α-ヒドロキシ酸) 乾燥肌の治療(α-ヒドロキシ酸) |
効果ありと断言はできないが、効果の可能性が科学的に示唆されている | にきびの治療(α-ヒドロキシ酸) |
一部で効果があるとする研究があるが、データ数が非常に少なく、信頼性が低い | 短時間の運動パフォーマンス上昇 |
科学的な根拠が皆無 | 疲労回復 動脈硬化の予防 痛風 摂取した場合のアンチエイジング ガンの予防 |
根拠の薄い効果、根拠が皆無の効果を目的に健康食品やサプリメントを利用することはおすすめしません。これらの効果については4.根拠がほとんどなく、効果があるとは言えないもので詳しく説明しています。興味がある方は参考にしてみてください。
2.クエン酸の利用法
クエン酸の利用法は目的によって異なります。正しく使い方を知って効果的に利用しましょう。
2-1.クリーム・ローション
日焼け
8%の濃度のクリームやローションを1日2回、顔やそのほかの肌に塗るのが推奨されています。
にきび跡
20%、35%、50%、70%の顔面用グリコール酸ピーリング剤を順次2週間ごとに適用します。改善までに、70%のグリコール酸を最低6回反復使用する必要性があります。
参考文献Natural Medicine database
2-2.クエン酸を含む食材
クエン酸は多く柑橘類に含まれています。
代表的なものとしてレモン、グレープフルーツ、いちご、パイナップル、キウイ、梅干しなどがあります。
ただし、具体的な含有量に関しては見当たりませんでした。あくまで、これらの食材がクエン酸を含むという目安としてとらえておきましょう。
3.副作用
副作用については、目的と使い方によって異なります。
健康を守るために、自分が目的とする使い方に合わせて、副作用の情報を知っておきましょう。
3-1.濃度10%未満のクリーム、ローション
濃度10%未満のローションやクリームは、用量・用法を守ればほとんどの人で安全です。
ただし、人によっては、皮膚が太陽光に敏感になってしまいます。利用の際には、日焼け止めを必ず利用しましょう。
一部の人で見られる副作用としては、軽い皮膚炎、赤み、はれ、かゆみなどが見られます。これらの症状が現れた場合には使うのを中止しましょう。
α-ヒドロキシ酸は皮膚の表面の層を除去する作用が考えられています。敏感肌の方では肌の状態を悪化させる可能性があります。
3-2.濃度10%以上のクリーム、ローション
濃度10%以上のクリームやローション、ピーリング剤は、必ず皮膚科の医師の元でのみ利用しましょう。
重症の皮膚炎や赤み、やけどを伴うことがあります。自己判断で利用しないでください。
3-3.食品やサプリメントでの摂取の場合
クエン酸については副作用については十分な情報が見当たりませんでした。
食品での摂取はおそらく安全だと思われますが、サプリメント等による過剰摂取は安全であるとはいえません。必ず、製品の用量・用法を守るようにしましょう。
一部で下痢や胃の不快感などが見られることもあります。それらの症状が出た場合は摂取を控えましょう。
4.根拠がほとんどなく、効果があるとは言えないもの
4-1.一部で効果を示す実験があるが、研究の質が低い効果
短期間の運動パフォーマンスの上昇については、効果を示す研究もありました。しかし、実験参加者数が17名と非常に少ないため、信頼性が低い状態です。
更なる研究が期待されています。
今の段階では効果があるとはいえず、あまりおすすめしません。
研究報告
実験参加者 | 17人の男子大学生ランナー |
実験種別 | ランダム化比較試験 |
実験方法 | 片方には0.5kg/body mass、もう一方には同じ風味のミネラルウォーターを走る2時間前に摂取させた |
実験結果 | プラセボ群に比べ、クエン酸摂取群では5km走のタイムが短かった。クエン酸塩投与群:1153.2秒、プラセボ群:1183.8秒 |
ただし、この実験に関しては、個人により走るタイムが異なるため、17人という少人数であることを考えると、一概にはこの研究結果からクエン酸が効果があるとはいえないでしょう。
4-2.科学的な根拠が皆無な効果
- 疲労回復
- 動脈硬化の予防
- 痛風
- 摂取した場合のアンチエイジング
- ガンの予防
これらの効果については、科学的な根拠は一つも見当たりませんでした。おそらく効果がないでしょう。
これらを目的にクエン酸のサプリや健康食品を利用するのはおすすめしません。
5.クエン酸の効果のポイント
クエン酸の効果については間違った情報が多く知られています。
正しい知識をもち、実際に自分に必要なのかどうか判断して利用するようにしましょう。
- 摂取することで、鉄・マグネシウムの吸収率上昇の可能性がある
- 肌に塗ることで、日焼け、乾燥肌、にきびの治療に効果があると考えられている
- 運動能力の上昇に関しては、まだ効果があるとは言えない
- 疲労回復や動脈硬化の予防、アンチエイジングなどに関しては科学的な根拠は一切ない。
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