ヒアルロン酸のサプリメントや健康食品を使ってみたいけど、本当にお肌にいいの?とお思いではないでしょうか。
宣伝などは多くされているものの、ヒアルロン酸がほんとうに美容にいいのかは知らない人がほとんどですよね。
そこで、現役医師がヒアルロン酸とお肌の美容との関係について、最新の医学研究を調べてみました。
結論から言うと、ヒアルロン酸は肌の水分量を保つなどの面で、美容に有効な可能性が高いのではないかということが明らかになってきました。
美容を考える方のためにも、ぜひヒアルロン酸のお肌に対するはたらきを知ってもらい、生活に取り入れていただければと思います。
1.ヒアルロン酸のお肌に対する効果の検証
ヒアルロン酸をサプリメントなどで摂取した場合にどのような効果があるのか、医学研究を調査しました。
結論から言うと、ヒアルロン酸は肌の美容に有効な可能性が高いです。
1-1.ヒアルロン酸を飲むと具体的にどんな効果があるのか
研究を見ていくと、ヒアルロン酸の摂取は肌の水分量の増加をもたらし、乾燥肌や肌荒れを改善することが明らかになっています。
ヒアルロン酸に関する医学研究
ヒアルロン酸の肌に対する医学研究として4つの医学研究が見つかりました。
研究①
乾燥肌の日本人22名(男性3名、女性19名、平均年齢27歳)に対し、高純度のヒアルロン酸を含むサプリメント(240mg/日)を6週間飲んでもらった結果、肌の水分量となめらかさが増加し、肌の乾燥、かゆみ、赤み、化粧のりの悪さを改善したという報告があります1)。
研究②
乾燥肌に悩んでいる39名の日本人女性(平均年齢44歳)を対象に、ヒアルロン酸含有食品(120mg/日)とプラセボ(効果のない薬)の6週間の二重盲験摂取試験を実施したところ、ヒアルロン酸を摂取したグループでは皮膚水分量の有意な上昇が認められたと報告しています2)。
研究③
肌のしわと乾燥が気になる日本人女性28名(平均年齢43歳)を対象に、低分子ヒアルロン酸(240mg/日)またはプラセボを8週間飲んでもらった結果、ヒアルロン酸を飲んだグループでは肌の水分量や弾力が増加し、しわが改善したと報告しています3)。
研究④
ヒアルロン酸の摂取が皮膚の水分量を増加させたり、しわなどの顔の老化現象を改善したという研究結果がいくつか報告されています4)。
これらの研究からわかること
これらの結果から、ヒアルロン酸の摂取(1日120~240mgを6~8週間)は肌の水分量の増加をもたらし、乾燥肌や肌荒れを改善するといえるでしょう。
1-2.ヒアルロン酸の体の中での働き
どのようなメカニズムでヒアルロン酸が肌に良いのか解説していきたいと思います。
ヒアルロン酸とは
ヒアルロン酸は数万~数百万の分子量からなる高分子(大きな)タンパク質で、コラーゲンと同様に“細胞外マトリックス”という細胞の外側を満たす成分の一つです。
ヒアルロン酸はからだ全体に存在しますが、とくに皮膚、関節、眼の硝子体に多く分布しています。特に、からだ全体のヒアルロン酸のうち、およそ50%は皮膚に含まれているそうです。
ヒアルロン酸の特徴と役割
ヒアルロン酸の特徴は、高い水分保持力と粘性(ねばりけ)をもっているということです。
したがって、関節の潤滑油として働いたり、お肌の弾力性や柔軟性を保つといった役目をはたしていると考えられています。
ヒアルロン酸は年齢とともに減っていく
ヒアルロン酸は、体内で絶えず合成・分解を繰り返して調節されていますが、お肌のヒアルロン酸は年齢とともに減少(20歳時に比べると、60歳で1/2、80歳で1/6)することが報告されています5)。
そこで、お肌の潤いやハリを保つ(いわゆる美肌)目的、または膝関節炎などの症状をやわらげる目的で、現在では様々なヒアルロン酸を配合したサプリメントが開発され、市販されています。
2.飲むヒアルロン酸の効果的な活用法
では、ヒアルロン酸のサプリはどのように利用するのがいいのでしょうか?
摂取量について
摂取する量としては、1日120~240mg(実際の試験で肌への効果が証明されている量)がよいでしょう。
摂取するタイミングについて
摂取する時間については、健康食品なので基本的にいつでも良いでしょう。
ただ、肌は夜寝ている間に再生、修復されます。そのことを考えると、夕食後や寝る前に飲むのがベストかもしれません。
3.飲むヒアルロン酸の副作用
健康な人で短期間適切に使う分においては安全だと言えるでしょう。
ただし、妊婦さんや授乳中での利用は安全性を証明する実験がないため避けるのが望ましいです。
3-1.安全性に関する実験
人における安全性試験では、1日360mg(通常の3倍量)のヒアルロン酸を4週間にわたり摂取した場合の血圧、体重、および肝機能などの血液生化学検査の結果を調査していますが、明らかな有害事象(好ましくない症状・徴候)は無かったとしています6)。これ以外にも重大な副作用は報告されていませんし、今のところ安全だと考えられています。
ただし、長期にわたるヒアルロン酸の摂取に関する報告は少なく、安全性は確立されていません.
3-2.妊婦さんや授乳中
妊婦さん・授乳中でのヒアルロン酸の摂取については、安全性を示す実験が見つかりませんでした。赤ちゃんや母体への影響を考えるとヒアルロン酸をサプリで摂取するのは避けた方が良いでしょう。
もし、どうしても利用したい場合は医師と相談の上利用するようにしましょう。
4.飲むヒアルロン酸についての最新の研究
最後に、最近話題となっているヒアルロン酸とがんの関係について解説します。
2013年、英国の有名な科学雑誌ネイチャーにヒアルロン酸に関する面白い論文が掲載されました。
この論文によると、
- アフリカに生息するハダカデバネズミは、寿命が著しく長く(最長30歳)、さらに長寿にもかかわらずがんにならない。
- このネズミの組織には、高分子ヒアルロン酸が豊富にある(ヒトの5倍)。
- 遺伝子操作でこのネズミの高分子ヒアルロン酸を除去すると、がんになる。
これらの結果より、高分子ヒアルロン酸はがんが発生するのを防ぎ、寿命を延ばすのではないかと結論づけています7)。
また一方で、「ヒアルロン酸はがんの進行を早める」といった論文も多数あり、特に低分子(分子量5万以下)ヒアルロン酸ががんの転移などに関係していることが報告されています8)。
ただし、これらは細胞や動物実験での結果ですので、実際に人におけるヒアルロン酸とがんとの関係についてはまだ分かっていません。
今後の研究で解明されることが期待されます。
5.まとめ
ヒアルロン酸は摂取することで乾燥肌や肌荒れを改善する可能性が高いということが、最新の研究で明らかになりつつあります。
それらお肌についてお悩みの方では、ヒアルロン酸を含む健康食品やサプリメントを試してみるのも良いかもしれません。
この記事を読むことで、一人でも肌の悩みを解決できる人が増えることを願っています。
参考文献
- 1)梶本 修身, 他: 乾燥肌に対するヒアルロン酸含有食品の臨床効果 顕微鏡的皮膚表面解析装置による客観的評価結果. 新薬と臨牀 2001;50:548-560.
- 2)佐藤 稔秀, 他: 乾燥肌の皮膚水分値に対するヒアルロン酸含有食品の臨床効果. Aesthetic Dermatology 2007;17:33-39.
- 3)渡邉 誠, 他: 低分子ヒアルロン酸の経口摂取における美肌効果 プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験. 薬理と治療 2015;43:57-64.
- 4)Kawada C, et al.: Ingested hyaluronan moisturizes dry skin. Nutrition journal 2014;13:70.
- 5)Longas MO, et al.: Evidence for structural changes in dermatan sulfate and hyaluronic acid with aging. Carbohydrate research 1987;159:127-136.
- 6)林 ちか子, 他: ヒアルロン酸含有サプリメントの健常者に対する過剰摂取による安全性試験. 薬理と治療 2009;37:953-961.
- 7)Tian X, et al.: High-molecular-mass hyaluronan mediates the cancer resistance of the naked mole rat. Nature 2013;499:346-349.
- 8)Wu M, et al.: A novel role of low molecular weight hyaluronan in breast cancer metastasis. FASEB journal : official publication of the Federation of American Societies for Experimental Biology 2015;29:1290-1298.