カリウムは健康にいいって聞いたけど、どういう効果があるの?とお思いではないでしょうか。
カリウムは神経の伝達、筋肉の収縮、体液バランス、など様々な身体の機能に関わっている非常に重要な栄養素の一つです。食事からしっかりとカリウムを摂取することで様々な健康への効果が期待できます。
しかし、残念なことにカリウムの効果について間違った情報が、かなり多くインターネット上で流れています。
この記事では、医大生である私が医学論文を調査し、一般の方にもわかるよう解説しました。
ぜひ、カリウムの効果を正しく知って、健康になるために生活に生かしてください!
1.カリウムの3つの効果
カリウムの効果として科学的に根拠があるものは3つあります。
- 低カリウム血症の予防と治療
- 血圧をわずかに下げるため、高血圧の予防
- 脳卒中の予防
また、メカニズムから考えると「むくみ」にも効果がありそうですが、残念ながらそれを証明する医学論文はほとんどありません。それについては、1-4.むくみで詳しく説明しています。
1-1.低カリウム血症の予防
疲労感や筋力低下などを引き起こす低カリウム血症は、カリウム不足やある種の薬の利用によって引き起こされます。当然のことですが、低カリウム血症の場合はカリウムを摂取することで改善します。
1-2.高血圧の予防
カリウムを摂取することにより、最大血圧で2~4 mmHg、最小血圧で0.5~3.5 mmHgの低下が見られたということが非常に信頼性の高い論文1)で明らかになっています。
実験人数 | 2609名(33論文) |
研究種別 | メタアナリシス |
結果 | 収縮期の血圧で平均-3.11 mmHg(-1.91から-4.31mmHg)、拡張期の血圧で平均-1.97 mmHg(-0.52から-3.42 mmHg)の血圧低下が見られた。(ただし、極端な結果が出ていた1論文については除外した) |
高血圧予防のメカニズム
ナトリウムが体の中に多いと、その濃度を薄めるために水分が必要なため、血液量が多くなってしまいます。その結果高血圧の原因の一つになってしまいます。
カリウムは腎臓でナトリウムの再吸収を抑えます。それによって血液中のナトリウムが過剰になってしまうのを防ぎ、高血圧の予防に効果があると考えられています。
高血圧予防にはカリウムだけじゃダメ!
カリウムを摂っていれば高血圧になりにくくなるんだ!と思われることでしょう。人によっては塩分多めでもカリウムとっているから大丈夫と誤解されるかもしれません。
しかし、それは大きな間違いです。カリウムで排出できるナトリウム量には限界があります。そのため、ナトリウムを多く摂っていると、やはり高血圧になります。高血圧を予防するためにはカリウムの摂取と一緒に、減塩をすることが何よりも重要です。
1-3.脳卒中の予防
12万人以上の人でカリウムと病気の関係性を調べた信頼性の高い研究2)で、カリウムの摂取により脳卒中が減少することが明らかになっています。
また、WHOでも、高血圧と脳卒中の予防のためにカリウムを摂取することを推奨しています。3)
脳卒中を予防するメカニズム
メカニズムについてははっきりとわかっていません。血圧を下げることによるのではないかと考えられていますが、そのほかにも動脈硬化症の進行を遅らせたり、動脈壁の肥厚を防いでいるのではないかと諸説あります。
1-4.むくみ
カリウムは腎臓でナトリウムの再吸収を防ぎ、細胞内にたまった水分がナトリウムとともに排泄されるのではないか、と理論上はむくみに効果がありそうです。
しかし、むくみに効果があるとする研究は1件4)しか見当たらず、腎不全の人で効果があったという限定的な結果でした。
このことを踏まえると、効果がない、あるいは効果があってもほんのわずかではないかと思います。
ほぼ同じメカニズムの高血圧でも、カリウムが血圧を下げるのはほんのわずかです。カリウムがむくみに与える影響もわずかしかないのかもしれません。むくみを改善したい場合は塩分を控えめにする、水分の摂りすぎを控えめにするといった根本的な原因をなくすのが最善ではないかと思います。
2.効果的にカリウムを生活に取り入れよう!
これまでカリウムが健康にいいというお話をしてきました。ここでは、どのようにカリウムを実際の生活に取り入れるのが良いのかお話したいと思います。
2-1.どれくらい摂取したらいいのか
厚生労働省の報告5)によると、健康に過ごすためには18歳以上の男性では2500mg/日、女性では2000mg/日摂取するのが良いとされています。
高血圧や脳卒中の予防を考えると、男性3000mg/日、女性2600mg/日の摂取が望ましいとされています。
現在の日本人の摂取量は男性で2329mg/日、女性では2143mg/日6)のため、わずかに不足しています。健康を考えると、意識的にカリウムを多く含む食材を摂取するのが良いのではないでしょうか。
2-2.カリウムを多く含む食品
野菜 | 果物 | 豆類 | |||
---|---|---|---|---|---|
パセリ | 1000mg | アボガド | 720mg | 大豆 | 1900mg |
ゆりね | 690mg | バナナ | 360mg | エンドウ豆 | 970mg |
にんにく | 530mg | メロン | 350mg | フライビーンズ | 710mg |
モロヘイヤ | 530mg | キウイ | 290mg | 納豆 | 660mg |
シソ | 500mg | さくらんぼ | 260mg | おから | 230mg |
枝豆 | 490mg | ザクロ | 250mg | うずら豆 | 230mg |
ほうれん草 | 490mg | パパイヤ | 210mg | 豆乳 | 190mg |
2-3.カリウムのサプリを利用する場合
私としては、できるだけ食事からの摂取を心がけてほしく思います。というのも、サプリメントで摂取するなどでカリウムが過剰になってしまうと、不整脈などの命にかかわる状態を引き起こすことがあるためです。
とはいうものの、サプリの方が手軽ですのでサプリメントを利用したい方も多いでしょう。カリウムをサプリメントで摂取する場合は、過剰摂取にならないよう気を付けてください。
安全な摂取量
アメリカの栄養データベース(natural medicine database)によると、3810mg/日以内ならほとんどの人で安全です。日本人では1日あたり2200mgほどであるため、サプリメントでの摂取は多くても1600mg/日以内にしておくのが良いと思います。
安全なサプリを選ぶために見るべきポイント
必ずカリウムの含有量が書かれているものを選びましょう。カリウムの含有量が書かれていない商品は非常に多いです。(特に女性向けのむくみ解消などを謳っている商品)過剰摂取になってしまう危険がありますので注意しましょう。
私の意見としては、カリウムバランサーなどが良いのではないかと思います。
いつ飲めばよい?
サプリメントを飲む時間に関しては、特に気にする必要はないでしょう。
3.副作用
普通に食事で摂取し、3810mg/日以内であればほとんどの人で安全です。
一部の人で腹痛や悪心、嘔吐、下痢、腸内ガスの発生などを引き起こす可能性があります。それらの副作用が出た方はすぐに摂取をやめ、病院に行きましょう。
- サプリメントで過剰に摂取
- 偏った食生活で不足している
- 腎臓の病気の方
といったひとでは命にかかわる危険があります。
3-1.過剰摂取による副作用
過剰摂取による副作用としては以下のようなものがあります。特に不整脈になると命にかかわるので過剰摂取には要注意です。
- 熱っぽい感じ
- うずくような痛み
- 体がだるい
- 手足や唇の麻痺
- めまい
- 低血圧
- 不整脈
3-2.カリウム不足
カリウムが不足すると以下のような症状を引き起こします。普通の食生活を送っていればまず不足することはありません。
- 疲労感
- 筋力低下
- 不整脈
- 多飲多尿
3-3.腎臓の病気の人
腎臓の病気をお持ちの方では、カリウムの摂取には要注意です。
カリウムを尿中に排泄することが難しく、体の中にたまっていってしまいます。少ない量のカリウムでも、過剰摂取になることも珍しくありません。
4.まとめ
カリウムは体の様々な機能を助け、高血圧や脳卒中の予防などにも役に立つ重要な栄養素です。
しかし、過剰摂取も不足もとても危険であるため、しっかりとした知識を持っておくべきでしょう。うっかり悪質なサプリメントに手を出して、死亡事故になったりしたら、しゃれにもなりません。
この記事を読んで、しっかりとカリウムについて知識をつけてもらい、健康のためにしっかりと役に立てていただけたら幸いです。
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参考文献
- 1)Effects of oral potassium on blood pressure. Meta-analysis of randomized controlled clinical trials.
- 2)Effect of increased potassium intake on cardiovascular risk factors and disease: systematic review and meta-analyses
- 3)Potassium Intake for Adults and Children.
- 4)Ratio of urinary potassium to urinary sodium and the potassium and edema status in nephrotic syndrome.
- 5)厚生労働省:日本人の食事摂取基準2015
- 6)厚生労働省:平成25年国民健康・栄養調査報告
- クリニカル・エビデンス
- natural medicine database