
妊娠中は普段以上に食事に気をつかうようになりますよね。周りから「栄養が大事よ」と言われることもしばしば。しかし、なにがどう大切なのかわからず…ということも多いでしょう。
特に初めての妊娠では、わからないことだらけであたふたしてしまうものです。とはいえ、大事な赤ちゃんのためには食事を粗末にすることはできません。そこで、妊娠初期に必要な栄養素を今一度確認してみましょう。
今回は大切になってくる栄養素を、優先して摂ってほしい順番に並べてご紹介します。栄養素ごとに食べ物リストも紹介していますので、ここ最近の食事と照らし合わせて、しっかりと栄養素が摂れているかチェックしてみてくださいね。
1.妊娠初期に栄養状態を整えるのが大切な理由
妊娠初期からしっかりと栄養を摂ることは、赤ちゃんの健康な発育と、お母さんの健康を守ることに繋がります。
妊娠初期は身体が健康な赤ちゃんを産むための準備を始めます。母体のホルモン分泌の変化が大きくなることで体調の変化は激しくなり、悪阻(つわり)などにより思うように食事ができないこともあります。通常よりも栄養が摂りづらい状況になるため、栄養を普段以上に意識して取り入れることが大切です。
また、妊娠初期は赤ちゃんが脳や神経、様々な器官を形成する大切な時期です。お母さんが栄養をしっかりと摂ってあげることで、赤ちゃんはスクスクと発育をすることができます。また赤ちゃんに栄養がいくことで、お母さんの身体に必要な栄養素が不足してしまう場合も。妊娠中は必要な栄養素を意識して補給することが大切です。
2.妊娠初期に摂りたい栄養素3つ
妊娠初期に摂りたい栄養素3つを紹介します。
意識して栄養を摂る、といっても何の栄養を摂ったらいいのか迷ってしまいますよね。ここでは特に妊娠初期にしっかりと摂っておきたい栄養素を見ていきましょう。
妊娠初期に摂っておきたい栄養素 |
葉酸、鉄、ビタミンC…など |
では一つずつ詳しく見ていきましょう。
2-1.葉酸
妊娠初期に葉酸をしっかりと摂りたい理由は、葉酸の摂取不足は、胎児の神経管閉塞障害リスク(催奇形性)を高めてしまう恐れがあるからです。
日本産婦人科医会外表奇形調査によると、日本で二分脊椎患者の発生数は減少しておらず、年間500名から600名出生しているとみられています。( 難病情報センター)
前述したとおり、妊娠初期は胎児の器官形成期であり、この時期の葉酸の摂取は胎児の健康な発育にとても大切になります。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、妊娠初期の葉酸の必要量は、通常の食事から240μgに合わせてサプリメントから400μg摂取することが望ましいとされています。
サプリメントから摂取するのが勧められている理由は、食べ物に含まれる葉酸は吸収率にばらつきがあり、どの程度摂れば神経管閉鎖障害の予防になるかはっきりわかっていないためです。妊娠初期の方だけでなく、妊娠の可能性がある女性は妊娠前からの摂取が勧められています。
とは言っても、普段の食事もおろそかにしてはいけません。下に葉酸を含む食べ物をリストアップしていますので、取り入れる際の参考にしてくださいね。
食品 | 食品100g中の葉酸含有量 |
えだまめ | 320µg |
モロヘイヤ | 250µg |
ほうれん草 | 210µg |
きなこ | 250µg |
いちご | 90µg |
2-2.鉄分
鉄の補給は、妊婦さんの鉄欠乏性貧血を防ぐために大切です。
妊娠初期は赤ちゃんの発育、成長の大切な時期です。赤ちゃんは大きくなるにつれ、多くの酸素や栄養を必要とするようになります。赤ちゃんに十分な酸素や栄養を送り届けるために、母体では血液量が増え、血液濃度が薄くなっていきます。このため鉄の必要量が増え、鉄欠乏性貧血を引き起こす一因となります。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、妊娠初期に必要な鉄の量は9.0㎎です。
鉄は不足しやすい栄養素のため、意識して摂取することが望ましいです。下に鉄を多く含む食べ物をリストアップします。食材選びの参考にしてください。
食品 | 食品100g中の鉄分含有量 |
あさり(缶詰・水煮) | 29.7㎎ |
納豆 | 3.3㎎ |
小松菜 | 2.8㎎ |
いわし | 2.1㎎ |
ほうれんそう | 2.0㎎ |
卵 | 1.8㎎ |
2-3.ビタミンC
ビタミンCの摂取は、妊娠期に低下しやすい免疫力の維持に役立ちます。また、ビタミンCには鉄の吸収を促進する働きもあるので意識して摂取することが大切です。
また、ビタミンCが極端に不足することで壊血病を引き起こす可能性があります。壊血病の症状は、疲れやすい、身体がだるい、いらいらする、顔色が悪い、皮下や歯茎からの出血、貧血、筋肉減少、心臓障害、呼吸困難などがあり、赤ちゃんへの影響も考えられます。
こうしたリスクを避けるためにも、ビタミンCは意識して摂りましょう。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、妊娠中のビタミンCの必要量は、1日110㎎とされています。下にビタミンCを多く含む食品をリストアップします。
食品 | 食品100g中のビタミンC含有量 |
赤ピーマン | 170㎎ |
黄ピーマン | 150㎎ |
芽キャベツ | 160㎎ |
アセロラジュース | 120㎎ |
キウイフルーツ | 69㎎ |
いちご | 62㎎ |
ビタミンCは熱に壊れやすい栄養素なので、加熱を必要としないフルーツや、生野菜での摂取をおすすめします。またはじゃが芋やさつま芋に含まれるビタミンCは熱に強いため、芋類からもビタミンCを補給しましょう。
3.不足しがちな栄養素もしっかりと補うことが大切
次に、妊娠中に付加量が決められているものではありませんが、女性が不足しやすい栄養素を紹介します。こちらも意識して取り入れていきましょう。
3-1.カルシウム
カルシウムは、骨や歯の形成に関与している栄養素です。
赤ちゃんは必要な栄養素をお母さんの栄養から補っています。それは骨や歯を形成するカルシウムでも同じく、お母さんの体から移行しています。母体は、カルシウムが不足したら骨を分解してカルシウムを胎児に移行するよう働きかけます。すると、お母さんの骨が弱くなってしまい、骨粗鬆症のリスクを高めてしまいます。
赤ちゃんの骨は、妊娠初期から形成されていきます。赤ちゃんの丈夫な骨の成長、産後のお母さんの骨粗鬆症リスクを軽減するために、カルシウムは妊娠初期からしっかりと摂ることが大切です。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、カルシウムの一日摂取推奨量は、18~49歳の女性で650㎎とされています。下にカルシウムを多く含む食べ物をリストアップしていきます。最近の食事と比べてみて、カルシウムが足りているかどうか確認してみてくださいね。
食品 | 食品100g中のカルシウム含有量 |
プロセスチーズ | 630㎎ |
しらす干し(半乾燥) | 520㎎ |
ししゃも | 330㎎ |
厚揚げ | 240㎎ |
小松菜 | 170㎎ |
牛乳 | 110㎎ |
3-2.食物繊維
食物繊維の摂取は妊娠中の便秘解消や、体重コントロールに役立ちます。妊婦さんに対して特別な付加量を定められている栄養素ではありませんが、目標量をしっかり摂るよう意識しましょう。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、食物繊維の一日摂取目標量は、18~49歳の女性で18g以上とされています。
しかし、厚生労働省の「平成 30 年 国民健康・栄養調査結果」によると、 20代以上の女性の食物繊維平均摂取量は14.7g。充足率はなんと82%、明らかに足りていないことが分かります。普段の生活で不足しがちな食物繊維を目標量とるには、しっかりと意識する必要があるでしょう。下に食物繊維を豊富に含む食べ物をリストアップします。
食品 | 食品100g中の食物繊維含有量 |
おから | 11.5g |
納豆 | 6.7g |
ライ麦パン | 5.6g |
ごぼう | 5.7g |
オクラ | 5.0g |
えだまめ | 5.0g |
4.摂りすぎ注意の栄養と食べ物
ここまでで、妊婦さんに積極的に摂ってほしい栄養素についてお話をしてきました。意識して摂りたい栄養素があるのに加え、妊婦さんは過剰摂取や食べてはいけない食べ物にも気を使う必要があります。
4-1.ビタミンA
ビタミンAの過剰摂取は胎児の催奇形性のリスクを高めてしまう危険性があります。とくに影響を受けやすいとされる、妊娠初期から中期はビタミンAの過剰摂取に注意してください。
野菜などの植物由来のβ-カロテンは問題ないとされていますが、動物由来のレチノール(ビタミンA)は注意する必要があります。妊娠中の必要量は650~780μg程度ですが、これ以上摂らないことが勧められています。
詳しくは「妊婦のビタミンA|摂りすぎが心配!赤ちゃんへの影響と気を付けたい食べ物」の記事で解説しています。
4-2.塩分
妊娠中は塩分の摂り過ぎに注意が必要です。食塩の摂り過ぎはむくみに繋がりやすくなり、足の痛みやだるさに悩まされる方も多くありません。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、一日の食塩摂取目標量は6.5g未満ですが、成人女性の摂取量は9.3gと大幅に超えています。
減塩の工夫は以下の通りです。
・薬味などで香りを活かし調味料を減らす ・出汁を活かした料理で調味料を減らす ・ラーメンなど麺類のつゆは飲み干さない ・お醤油はスプレータイプを用いる |
できる方法から取り入れてみましょう。
詳しくは「濃い味好きの妊婦さん必見!今より塩分2g減らす簡単な方法」の記事で方法を解説しています。
4-3.魚は種類と量に注意が必要
魚は良質な脂とタンパク質を含むため、妊娠中も積極的に摂りたい食材です。しかし、魚は自然界の食物連鎖において水銀をため込む性質をもっています。
この水銀の多量摂取は胎児に影響を与える可能性があるため、魚の食べる量と回数、種類には気を付ける必要があります。
魚の種類と、摂取量に関する詳しい情報は厚生労働省のパンフレットを参考にしてください。
4-4.チーズ、生ハム、生もの
妊娠中は免疫力が下がりやすく、食中毒などにかかるリスクが高まります。以下の食べ物はとくに注意が必要です。
食中毒の原因となる菌や微生物 | 避けるべき食材 |
リステリア菌 | 生ハム・スモークサーモン・肉魚のパテ・ナチュラルチーズなど |
トキソプラズマ原虫 | 馬刺し・鳥刺し・生焼けの肉など |
その他の菌や・ウイルスなど | 刺身・生ガキ・生卵など |
4-5.カフェイン、アルコール
妊娠中にコーヒーや紅茶、緑茶などからカフェインを大量摂取した場合、早産や流産の原因になるとの報告があります。カフェインの摂取目安は、WHOによると1日300mg程度までとされています。
コーヒーや紅茶であれば、1日1~2杯程度にするか、カフェインレスのものを選びましょう。
またアルコールに関しても、アルコールの量や時期に関係なく赤ちゃんの脳萎縮や発育不全につながる可能性が分かっています。妊娠中はアルコールは絶対に避けましょう。
カフェインについては詳しくは「妊婦だけどコーヒーが飲みたい!「1日2杯」のコーヒーを楽しもう」をご覧ください。
5.大切なのは栄養バランスの良い食事
妊婦さんが過不足なく必要な栄養素を摂るための基本は、栄養バランスの良い食事にあります。ここでは、栄養バランスの良い食事=主食、主菜、副菜の揃った食事、と定義します。
5-1.主食、主菜、副菜を揃えた食事を
主食、主菜、副菜(2.3品)を食卓に揃えることで、様々な食材から必要な栄養素を過不足なくまんべんなく補うことが可能となります。
・主食は炭水化物を中心に、エネルギーをしっかりと補給しましょう。 ・主菜は、お肉や卵、お魚などを中心に、身体を作るのに大切なタンパク質を補います。 ・副菜は野菜を中心に数種類の食材を用いることで、ミネラルやビタミンを補うことができます。副菜の食材選びでは、上記で説明した妊婦さん大切な栄養素を含む食品を意識して取り入れましょう。 |
栄養バランスの整え方は「まねするだけで栄養満点レシピ!妊婦さんにおすすめのレシピ11選!」を参考にしてください。
妊娠初期に必要な栄養素とその理由、積極的に摂りたい食べ物についてお伝えしました。ぜひ妊娠初期の食事準備の参考にしてみてくださいね。この記事が、妊娠初期の食事悩みの解決に役立ちましたら幸いです。
【参考・参照】
・厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)<https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html>
・厚生労働省 平成30年 国民健康・栄養調査<https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000635990.pdf>
・日本食品標準成分表2015年版(七訂)