妊娠中は先輩ママや周りの人から「栄養不足に気を付けて、栄養をしっかりと摂ってね」なんて、アドバイスの声をかけられることが多いのではないでしょうか。
でも栄養に関する知識がないと、栄養不足がどうしてダメなのか、赤ちゃんにとって害はあるのか、どうしたら栄養をしっかり摂れるのか、ただただ不安だけが残ってしまいますよね。
そこで今回は、栄養知識がない方でもわかりやすいよう、栄養の必要性や、不足しやすい栄養素と不足による影響、栄養不足を防ぐための食事準備のコツ等についてお話ししていきます。
ここでしっかりと、栄養の大切さや不足しがちな栄養素、不足の対策法について知り、妊娠期の不安を取り除いていきましょう。
1.どうして妊婦さんは栄養が大切なのか
妊娠期は、赤ちゃんの健やかな成長とお母さんの身体を守るために栄養が必要になります。その理由は大きく2つあります。
1-1.ホルモン変化の激しい妊娠中は、体調を崩しやすい
妊娠期は免疫力が低下し、風邪や感染症にかかりやすいなど、なにかと体調を崩しやすい時期です。
妊婦さんの免疫力低下は、妊娠中のホルモンバランスの変化や、つわりなどによる栄養不足によるもの、睡眠不足になりやすかったり、ストレスを感じやすかったりすることで、免疫力が下がりやすい生活になっているためと考えられています。
このように低下しやすい免疫力を維持・向上していくためには、食事から十分に栄養を摂ることが大切です。
特に急激なホルモン変化が起こる妊娠初期は、つわりの影響により、思うように食事がとれなかったり、食が細くなったり等、通常よりも栄養を摂りづらい状況となります。少しでも栄養が摂れるよう、食べられるものの中から工夫していくことが必要です。
1-2.赤ちゃんは母親が摂った栄養で成長する
妊娠期にお母さんが十分な栄養を摂ることで、赤ちゃんは健やかに成長することができます。
胎児はへその緒を通してお母さんから受け取った栄養を用い、お腹の中ですくすくと発育していきます。必要な栄養が不足した場合、赤ちゃんの発育不良に繋がる可能性もあります。
妊娠期間を通してエネルギーが不足した場合、赤ちゃんが小さく生まれてしまう可能性があり、将来糖尿病などの生活習慣病になるリスクが高くなるといわれています。
とくにダイエット意識が高い方は、妊娠中も体重を増やしたくない気持ちから必要以上にカロリー制限をする場合もあり、低出生体重児が増えてきつつあります。現在では産まれてくる赤ちゃんの約10人に1人が低出生体重児です。
母体の栄養状態は赤ちゃんの栄養状態の良し悪しに繋がります。生まれてくる赤ちゃんの健康のためには、お母さんがしっかりと食事から栄養を摂ってあげることが大切になります。
2.不足しやすい栄養素と対処法は?
栄養不足を防ぐためには不足しやすい栄養素を知り、しっかりと補うことが大切です。妊娠期に不足しやすい栄養素は以下の3つがあげられます。
・葉酸 ・鉄分 ・カルシウム |
ここでは、各栄養素が不足することによって起こる影響、また不足の対処法についてお伝えします。
2-1.葉酸
葉酸の不足は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害の発症リスクを高める危険性があります。神経管閉鎖障害により、胎児の脳や脊髄の発育が阻害されてしまうケースがあげられます。
赤ちゃんの神経管が形成される時期は妊娠初期(4~5週頃)であるため、葉酸の摂取は妊娠前から妊娠初期が特に大切となってきます。
「日本人の食事摂取基準2020年版(厚生労働省)」によると、胎児の発育障害のリスクを防ぐためには、サプリメントから一日400µgの葉酸を摂取することが望ましいとされています。さらにサプリメントだけでなく、食事からの葉酸もしっかり摂る必要があります。普段の食事に意識的に葉酸を多く含む食材を取り入れましょう。
葉酸を多く含む食材はこちらです。
食品 | 食品100g中の葉酸含有量 |
えだまめ | 320µg |
モロヘイヤ | 250µg |
ほうれん草 | 210µg |
きなこ | 250µg |
いちご | 90µg |
サプリメントを使う際は、用量を守り、過剰摂取に注意しましょう。
2-2.鉄分
鉄分が不足し貧血となることで、早産や出生時の大量出血のリスクを高めるという報告や、出産後も低出生体重児、赤ちゃんの貧血、母乳分泌不全などとも関連があると報告があります。
妊娠中は鉄分の必要量が増えるため、とくに意識して摂らなければいけない栄養素です。
「日本人の食事摂取基準2020年版(厚生労働省)」によると、18歳~49歳の妊婦さんの鉄分摂取推奨量は妊娠初期で9.0㎎/日、妊娠中期・後期で16.0㎎/日とされています。これだけ多くの鉄分を食事から摂取するためには、鉄分の多く含む食材を意識的に食事に取り入れる必要があります。
鉄分を多く含む食材はこちらです。
食品 | 食品100g中の鉄分含有量 |
あさり(缶詰・水煮) | 29.7㎎ |
納豆 | 3.3㎎ |
小松菜 | 2.8㎎ |
いわし | 2.1㎎ |
ほうれんそう | 2.0㎎ |
卵 | 1.8㎎ |
2-3.カルシウム
カルシウムは赤ちゃんの骨や歯の形成に欠かせない重要な栄養素です。不足することで母親の産後の骨粗鬆症のリスクを高めます。
カルシウムが不足してしまうと、母体は自らの骨からカルシウムを溶かしだして補充し、赤ちゃんに運ぶよう働きます。すると、お母さんの骨のカルシウムが不足し、将来の骨粗鬆症のリスクが高まってしまいます。こうした母体の骨粗鬆症リスクを軽減するためにも、カルシウムは十分に摂取する必要があります。
「日本人の食事摂取基準2020年版(厚生労働省)」によると、18歳~49歳の妊婦さんのカルシウム摂取推奨量は650㎎/日とされています。カルシウムを豊富に含む食材を、普段の食事や間食に積極的に取り入れることでカルシウムを強化していきましょう。
食品 | 食品100g中のカルシウム含有量 |
プロセスチーズ | 630㎎ |
しらす干し(半乾燥) | 520㎎ |
ししゃも | 330㎎ |
厚揚げ | 240㎎ |
小松菜 | 170㎎ |
牛乳 | 110㎎ |
3.栄養を不足させない食事の工夫
では実際に、栄養バランスの良い献立作りを行う手順を紹介します。
調理を行う際は上記で紹介した食材を積極的に取り入れて、栄養の不足ない食事作りを目指しましょう!
3-1.基本は、バランスの良い食事。
バランスの良い食事とは、主食・主菜・副菜が揃った食事のことを指します。大まかなメニューを決める際はこれを意識しましょう。これらを揃えることで、糖質、タンパク質、脂質、ミネラルやビタミンなどの栄養素がバランスよく補うことができます。
副菜はできれば2~3品、少なくても1品は準備したいもの。野菜たっぷりのスープなどで十分です。野菜をたくさんとれるようなメニューを取り入れましょう。
- 主食はお米や麺、パンをメインに糖質を、主菜はお魚や肉、卵などをメインにタンパク質を十分に摂れるメニューにしましょう
- 副菜には数種類の野菜をたくさん取り入れた料理を選ぶことで、ミネラルやビタミンをたっぷり補うことができます
- 副菜に葉酸・鉄分・カルシウムを豊富に含む食材を積極的に用い、不足しがちな栄養素を上手に補いましょう
大まかなメニューが決定した後、次の項目で説明する栄養チェックを行い、食材や分量の微調整、最終的なメニュー決定に移ります。
3-2.献立作成の流れと栄養計算の方法
献立作成の流れは以下の通りです。
実際にきちんと栄養が摂れているかどうかは、スマートフォンのアプリでチェックができます。食事メニューを入力、または写真を撮るだけで自動で栄養価計算をしてくれます。「あすけん」や「カロミル」などは初めての方でも使いやすいでしょう。
献立を考えるときに活用できるだけでなく、毎日食べたものの記録にも使えるので便利です。鉄やカルシウム、葉酸をどのくらい摂れたかも確認できますので、ぜひ試してみてくださいね。
3-3.不足の補給に、栄養ドリンクやサプリメントを賢く活用
どうしても食事で補いきれない栄養素があれば、栄養ドリンクやサプリメントを用いて効率的に目的の栄養素を補給することも可能です。
ただし、栄養ドリンクやサプリメントは特定の栄養素を人工的に強化してあるものであり、過剰摂取になりやすい危険性があります。用法・容量を守り、正しく活用するようにしましょう。
また、栄養ドリンクやサプリメントで気になる点がある場合は、薬剤師さんや医師に相談しましょう。
4.栄養は不足だけでなく、過剰にも注意が必要!
妊婦さんは栄養の不足だけでなく、過剰摂取にも気を付ける必要があります。
・ビタミンA ・糖質 ・塩分 |
これらの栄養素は過剰摂取に注意しましょう。
4-1.ビタミンA
妊娠初期のビタミンA過剰摂取は、赤ちゃんの奇形のリスクを高める原因となります。
ビタミンAはレバーやうなぎ、アンコウの肝に多く含まれますので、これらの食べすぎには注意しましょう。
4-2.糖質
糖質の過剰摂取は、妊娠糖尿病の発症リスクとなることや、体重増加のリスクもあり注意が必要です。
糖質は主食(ご飯・麺・パン)に多く含まれる栄養素です。妊娠中は無性にお腹が空いて、ついついご飯を食べすぎてしまう方も多いことかと思いますが食べすぎには注意しましょう。
主食の適正な摂取量について詳しく知りたい方は、こちら(妊産婦のための食事バランスガイド)を参考にしてください。
4-3.塩分
塩分のとり過ぎは血圧への影響や、むくみの原因となります。
「日本人の食事摂取基準2020年版(厚生労働省)」では、妊婦さんの食塩摂取量の目標量は一日6.5g未満とされています。食事を作る際は普段より薄味を意識しましょう。
減塩調味料の活用は簡単にできる減塩方法なのでおすすめです。
まとめ
妊娠中にしっかりと栄養を摂ることで、赤ちゃんの成長だけでなく、母親の健康を守ることができます。葉酸・鉄分・カルシウムを意識してとり入れ、献立作成の手順を参考に、栄養バランスの良い食事を目指していきましょう。
【参考・参照】
・厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)<https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html>
・妊産婦のための食事バランスガイド 厚生労働省<https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3b02.pdf>