「最近、鉄分不足が気になっているのだけど、どうやって改善すればいいのだろう…?」と悩んでいませんか?
日本では、実に妊婦の4~5人に1人が貧血を発症しているといわれています。しかし、そもそも自分の症状が鉄分不足によって起きているのか、またどのように改善すればいいのか、判断するのは難しいです。
そこで今回は、妊婦の鉄分不足を改善するための流れを4ステップに分けて解説します。
記事の後半では、自分が鉄分不足なのか調べるためのチェックリストも紹介しているので、この記事を参考に貧血の改善方法をいっしょに模索しましょう!
なぜ妊婦は貧血になりやすい?鉄分の摂取量の目安について
妊婦が貧血になりやすい理由は、主に以下の2つが挙げられます。
- お腹の中の赤ちゃんに栄養を届けなくてはならないから
- つわりで食欲が減退して鉄分の摂取量が減ってしまうから
特に大きいとされているのは、1つ目の理由です。
妊娠中、お腹の赤ちゃんはお母さんからもらう栄養をもとに成長していきます。当然、赤ちゃんが大きくなれば必要量も増えていきますから、妊娠時期にあわせて摂取量を増やしていくことが重要です。
ちなみに、鉄分の推奨量は以下の通りです。
妊娠初期 | 妊娠中期 | 妊娠後期 | 授乳期 | |
推奨量 | 9.0㎎ | 16.0㎎ | 16.0㎎ | 9.0㎎ |
日本人の食事摂取基準(2020年版) より作成
しかし、「これだけだと鉄分の必要性がなんとなくしか分からない…」という方もいるでしょうから、妊婦の貧血の症例や鉄分不足が引き起こす症状について確認しましょう。
妊婦が貧血を起こす割合は22.9%!
国民健康・栄養調査をもとに分析した結果、妊婦・授乳婦計718名のうちの22.9%が貧血であったことがわかったという報告もあります。(*1)つまり、妊婦・授乳婦の4~5人に1人は貧血だったというわけけです。
また医薬品メーカーであるゲンナイ製薬株式会社のアンケートによると、妊婦の4割以上が「鉄分不足の症状があった」と解答しています。このことからも、妊婦は極めて鉄分不足の症状が起こりやすいことが分かります。
鉄分不足が引き起こす症状
貧血の主な症状としては、以下のものが挙げられます。
- 集中力の低下
- 頭痛
- 食欲不振
- 疲労感
- めまい
- 息切れ
いずれも女性なら1度は経験したことがある症状ばかりではないでしょうか。
中には「こういった症状なんて慣れっこだから、あんまり気にしていない」という方もいるかもしれませんが、貧血の症状は決して軽視できるものではありません。
貧血は妊婦の免疫力低下や赤ちゃんの低体重や早産を招く可能性があると指摘されているため、しっかりとした対策が必要です。
妊婦の鉄分不足を改善するための4ステップ
鉄分不足を改善するための具体的な流れを確認します。
ステップ2:鉄分が不足していたらまずは食事改善
ステップ3:食事で改善されない方や食欲が湧かない方は別の方法で鉄分補給
ステップ4:それでも改善されない場合は検診で相談を
重要なのは、「鉄分不足が判明したからといって、いきなり栄養機能食品やサプリメントに手を出すべきではない」ということでしょう。
詳しくは後述しますが、知識がない状態で栄養機能食品やサプリメントを使うと、かえって栄養を摂りすぎてしまう恐れがあるのです。
それでは、これらを踏まえたうえで具体的な流れを確認していきましょう。
ステップ1:まずは自覚症状があるか鉄分不足度チェックを使って確認!
鉄分不足の改善を図るためには、まず自分が本当に鉄分不足なのか確かめる必要があります。
具体的には鉄分不足が引き起こす症状で取り上げた症状が起きていないかを思い出してみましょう。
- 集中力の低下
- 頭痛
- 食欲不振
- 疲労感
- めまい
- 息切れ
これらの症状に思い当たる節があるなら、鉄分不足の可能性ありです。
「でも、私はお医者さんじゃないから、自己診断できる自信がない…」「もっと簡単に、鉄分不足かどうかをチェックできないかな?」
そんな方におすすめしたいのが、大手医薬品メーカー大正製薬が作成した『鉄分不足度チェック』です。
これは現役医師監修のもと作成されたチェックリストで、自分がどれほど鉄分不足なのかを合計25の質問から判定してくれます。
所要時間は5分ほど。質問も簡単な内容ばかりなので、実際にあなたの鉄分不足度をチェックしてみてはいかがでしょうか。
ステップ2:最も効果的なのは食事改善!食べ物はあさりがおすすめ
自分が鉄分不足だと分かったら、いきなり栄養機能食品やサプリメントを摂るのではなく、まず食事改善を試してみましょう。
文部化科学省が作成する『日本食品標準成分表』によると、鉄分が豊富に含まれているのは以下の食べ物です。
食品名 鉄分の種類 1食当たりの重量 鉄分の量 1食当たり 100g当たり あさり ヘム鉄 40g 11.9mg 29.7mg 干しえび ヘム鉄 8g 1.2mg 15.1mg カシューナッツ 非ヘム鉄 30g 1.4mg 4.8mg がんもどき 非ヘム鉄 100g 3.6mg 3.6mg コンビーフ ヘム鉄 100g 3.5mg 3.5mg
『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』 を元に作成
表を見ればわかる通り、数ある食べ物の中でも特に鉄分量が多いのはあさりでした。
あさりに含まれているヘム鉄は、がんもどきやカシューナッツに含まれる非ヘム鉄よりも吸収率が高く、鉄分不足の改善に役立ちます。
また、あさりは赤ちゃんの骨や歯を作るカルシウムも含まれているんで、妊婦さんが積極的にとりたい食べ物です。
手軽にあさりの栄養を摂るなら、あさりの水煮缶詰がおすすめです。缶詰を使って、味噌汁やパスタの具にするのがおすすめですよ。
実はNG!鉄分が含まれているけど非推奨な食べ物
鉄分が含まれている食べ物の中には、妊婦にあまり好ましくない成分が含まれているものもあります。それが以下の3つです。
食品名 | 好ましくない成分 | 理由 | 資料 |
豚レバー 鶏レバー | ビタミンA | 過剰摂取は赤ちゃんに奇形を起こす可能性がある | 厚生労働省『妊娠3か月以内又は妊娠を希望する女性におけるビタミンA摂取の留意点などについて』 |
クロマグロ | メチル水銀 | 摂取しすぎると赤ちゃんへ影響を与える可能性がある | 厚生労働省『これからママになるあなたへ』 |
豚レバーや鶏レバーに含まれるビタミンAの量は100g当たり13,000~14,000μgと非常に高く、わずか20g程度食べるだけで耐用上限量をオーバーしてしまいます。
もちろん、ビタミンAは人間の体に必要な栄養素ではありますが、別の食べ物から摂取する機会も多いため、やはり妊娠中は食べるのを控えるべきです。
鉄分の吸収を阻害する栄養素に注意!
鉄分の中でも吸収率の低い「非ヘム鉄」は、食べ合わせによりさらに吸収率に影響があります。
【吸収率を低くしてしまう食べ物】
栄養素 | 主な食べ物(飲み物) | 資料 |
タンニン | コーヒー・ワイン・緑茶・紅茶・番茶・柿 | 厚生労働省『日本人の食事摂取基準』 |
【吸収率を高めてくれる食べ物】
栄養素 | 主な食べ物(飲み物) | 資料 |
ビタミンC | 赤ピーマン・レモン・にがうり・いちご・キウイ | 厚生労働省『日本人の食事摂取基準』 |
動物性タンパク質 | 鶏ささみ・木綿豆腐・卵・牛乳・納豆 | 厚生労働省『日本人の食事摂取基準』 |
とりわけ、動物性タンパク質は赤ちゃんの体作りに関わる重要な栄養素なので、欠かさず摂るよう心がけましょう。
ステップ3:食事で改善されない方や食欲が湧かない方は別の方法で鉄分補給!
鉄分不足に悩む方の中には「食事では鉄分不足が解消されなかった」「そもそも食欲が湧かないから、食べ物で鉄分を摂るのが難しい…」という方もいるはず。そんな方は、以下の3つから鉄分補給してみましょう。
補給方法 | 主な商品 | メリット | デメリット |
飲み物 | プルーンFe 1日分の鉄分 のむヨーグルト | 食欲がなくても鉄分補給できる | コストが高い |
お菓子 | 鉄プラスコラーゲンウエハース | 食べやすいから習慣化しやすい | 過剰摂取のリスクがある |
サプリメント | DHCの健康食品 ヘム鉄 | 食欲がなくても鉄分補給できる | 過剰摂取のリスクがある |
おすすめなのは、飲み物で鉄分が補給できるもの。飲みきりなので、過剰摂取のリスクの心配が少なく済みます。
お菓子やサプリメントでも1日の摂取量を守って取り入れればもちろん安心です。自分に合ったものを探して取り入れるといいでしょう。
ステップ4:それでも改善されない場合は検診で相談を
自分で対策してみても改善が感じられない場合、検診で医師に相談してみましょう。妊婦検診の中で、最低3回は採血による貧血の検査が行われます。
貧血と診断があった場合、食事やサプリメントだけでの改善は難しく、鉄剤などによる治療が適用される場合がほとんどです。妊婦さんの状態によって治療法が異なるため、自己判断せず医師のアドバイスに従いましょう。
まとめ
妊娠中の貧血は自覚症状がないからといって放置していいものではなく、赤ちゃんや妊婦さん自身への健康にもかかわるため、必ず対処しておきたいもの。この記事を参考に、貧血の対策を行いましょう。
【参考・参照】
(*1)Takimoto H,Yoshiike N,Katagiri A, Ishida H, Abe S: Nutritional status of pregnant and lactating women in Japan: a comparison with non-pregnant / non-lactating controls in the National Nutrition Survey. J Obstet Gynaecol Res: 29(2): 96-103, 2003