妊娠すると「何をどれだけ食べればいいの?」「妊婦が食べてはいけない物ってあるの?」と迷ったり不安に感じたりしますよね。
実は、妊婦さんが控えるべき食品は結構あります。知らないまま食べてしまうと健康を害してしまうことも…!また意識して取らないといけない栄養素もあります。
この記事では、元気な赤ちゃんを産むために必要な、妊娠中の食事の注意点を6つに絞って分りやすく説明します。妊娠中にありがちなシーン別の食事の選び方も紹介するので最後までお付き合いください。
■目次
1.妊娠中はなぜ食事に気をつけなければいけないの?
妊娠中はお腹の赤ちゃんのために食事に気を使います。ママの中には「好きな物を思うように食べられない」とストレスを感じる方もいるでしょう。では、なぜ妊娠中の食事には注意が必要なのでしょうか。理由は主に二つあります。
1-1 ママが取り込んだものは悪いものも赤ちゃんに運ばれている
妊娠すると胎盤を通じて休みなく赤ちゃんに栄養が運ばれます。しかし栄養だけでなく、一部の菌、アルコール、カフェインなども赤ちゃんに運ばれ、悪影響を及ぼすこともあります。
妊娠中は良いものも悪いものも赤ちゃんに届いてしまうから食事に注意を払うのは重要なのですね。
1-2 栄養が足りないと出産後の体調不良の原因にも
ママの食事の中に含まれる鉄やカルシウムは優先的に赤ちゃんに運ばれます。それでも不足する場合、赤ちゃんがカルシウム不足になったり、生まれたあとに赤ちゃんが貧血になったりすることもあります。
さらに出産後のママにも影響があります。貧血や、将来の骨粗鬆症のリスクになる可能性も。まさに、ママは「骨身を削って」お腹の中の赤ちゃんを育てているのです。
2.妊娠中の食事はこの6つを押さえれば大丈夫!
ここからは、妊娠中の食事で気を付けることを6つに分けて紹介します。
2-1妊婦さんは食中毒に注意!中心部まで火を通そう!
妊娠中の食事で一番注意が必要なのは「食中毒を予防する」ことです。妊娠する前は、ホテルのバイキングなどで生ハムやレアステーキをいただくこともあったでしょう。しかし妊婦さんにとっては、それらが食中毒の原因になり赤ちゃんに影響が及ぶことがあるのです。
妊婦さんが特に気を付けた方がいいのは「リステリア」と「トキソプラズマ」です。
これらは健康な人が感染しても無症状や軽症で済みますが、妊婦が感染すると赤ちゃんにも感染し、流産や早産の原因になったり、脳への障害などを(*2)起こしたりする危険があります。
リステリアは非加熱の乳製品やチーズ、食肉加工品を食べると感染する場合があります。トキソプラズマは生焼けのお肉から感染の危険が高いです。両方とも十分に加熱してあれば大丈夫です。妊娠中は「中心部まで火を通したものを食べる」ようにしましょう。
◆妊娠中に避けた方がよいもの
食中毒を起こす菌や微生物 | 避けるべき食材 |
リステリア菌 | 生ハム・スモークサーモン・肉魚のパテ ナチュラルチーズなど |
トキソプラズマ原虫 | 馬刺し・鳥刺し・生焼けの肉など |
その他の菌や・ウイルスなど | 刺身・生ガキ・生卵など |
2-2 大型の魚(水銀の多い魚)は食べる量を決めよう
日本は魚をよく食べる国です。特に脂がのったマグロが好きな人もいるのではないでしょうか。しかし大型の魚の脂身にはメチル水銀が濃縮して含まれています。
メチル水銀は胎盤を通り赤ちゃんの脳に蓄積され神経障害や発達障害を起こす可能性があります。
そのため厚生労働省でも水銀を多く含む魚の摂取上限を1週間単位で決めています。詳しくはリンク先のパンフレットをご覧ください。
魚は赤ちゃんの脳の成長に欠かせないDHAが豊富です。サンマやいわしなど小さな魚は摂取制限設けられていないので積極的に食べましょう!
ただ、刺身は食中毒の原因になることがあるため、妊娠中は煮魚や焼き魚にした方がいいでしょう。
水銀が多く摂取上限がある魚(*3) | 特に摂取の制限がない魚 |
キダイ・マカジキ・ユメカサゴ・ミナミマグロ(インドマグロ)・ヨシキリサメ・イシイルカ・クロムツ・キンメダイ・ツチクジラ・メカジキ・ホンマグロ(黒マグロ)・めばちマグロ・マッコウクジラ・エッチュウバイガイ・コビレゴンドウ・バンドウイルカ | キハダ・ビンナガ・ツナ缶・メジマグロ・アジ・鮭・サバ・イワシ・サンマ・カツオ・タイ・ぶりなど |
2-3 飲み物はノンカフェインに変えお酒は我慢
妊娠中にコーヒーや紅茶、緑茶などからカフェインを大量摂取した場合、早産や流産の原因になるとの報告があります。カフェインの摂取目安は、WHOによると1日300mg程度までとされています。(*1)
コーヒーや紅茶であれば、1日1~2杯程度にするか、カフェインレスのものを選びましょう。
普段水分補給で飲むのは麦茶や水などのカフェインが入っていないものがおすすめです。ほかにもカフェインが少ない番茶や玄米茶などは調節しながら飲みましょう。
ハーブティーは子宮収縮やホルモン作用など妊婦さんに適さないものがあります。(*4)比較的安全性の高いローズヒップティーやレモンバームなどのハーブティーを適量(1日2-3杯)にしておきましょう。
妊娠中の飲酒は我慢です。アルコールの量や時期に関係なく赤ちゃんの脳萎縮や発育不全につながる可能性が分かっています。(*5)
◆妊婦さんにおすすめの飲み物
カフェインのある飲み物 | 妊娠中に飲むおすすめのもの |
コーヒー(60mg)・紅茶(30mg) | カフェインレス珈琲や紅茶 たんぽぽコーヒー・玄米コーヒーなど |
玉露(160mg)・煎茶(20mg) 玄米茶と番茶(10mg)・烏龍茶(20mg)ジャスミン(20mg) | 麦茶・ハーブティ(レモンバーム・ローズヒップ・しょうが・柑橘類の果皮・みかんの果皮) |
2-4 たんぱく質・葉酸・鉄分などの栄養素をしっかり取ろう!
妊娠初期はつわりがありますが、食べる量が減っても赤ちゃんへの影響は少ない時期です。ただ、葉酸は意識してとるようにしましょう。
妊娠中期からは胎盤を通して栄養がどんどん赤ちゃんに運ばれていきます。この時期からしっかりととりたいのは、タンパク質、鉄で、葉酸も引き続き必要です。妊婦さんに大切な栄養や鉄の補給方法については、下記の記事も参考にしてください。
妊婦が絶対にとりたい栄養は?妊婦におすすめの食べ物&レシピ8選
今日から実践できる!貧血に悩む妊婦におすすめな鉄分の補給方法4選
カルシウムは妊娠前より摂取量を増やす必要はないですが、普段から摂りにくい栄養素なので妊娠中も意識的にとった方がいいでしょう。
また、カルシウムはビタミンDと一緒にとることで吸収率が高まります。ビタミンDを補給できる鮭、干ししいたけ、きくらげもとるようにしましょう。
◆妊娠中に増やすおすすめ食材
栄養素 | おすすめの食材 |
たんぱく質 | 肉・魚・大豆製品・卵・乳製品 |
葉酸 | ブロッコリー・オクラ・アボカド・菜の花 |
鉄 | 小松菜・ほうれん草・あさり・納豆・カツオ |
カルシウム | 牛乳・チリメンジャコ・ヨーグルト・納豆・切り干し大根・ひじき(※) |
※ひじきはヒ素が含まれるため、週に2回までが目安です。
2-5 中期は+250kcal後期は+450kcal分のカロリーを
妊娠中はカロリーを増やすことも大切です。中期は妊娠前より+250kcal、後期は+450kcalが目安です。いずれもお菓子でカロリーを増やすのではなく、タンパク質や野菜のおかずなど食事で増やすようにしてください。
妊娠前から太っていた、体重が増えすぎてしまった方はカロリーを増やす必要がない場合があります。主治医の指導にしたがってください。
なお、妊婦さんの体型維持の具体的な方法は、この記事にも詳しく書かれています。
体型が気になる妊婦さん必見!妊娠中の体型変化について徹底解説
妊娠期間 | プラスするカロリー |
妊娠初期(~妊娠15週6日まで) | +50kcal |
妊娠中期(妊娠16週から27週6日) | +250kcal |
妊娠後期(妊娠28週から39週ごろ) | +450kcal |
2-6 出汁を効かせた薄味で塩分を少なくしよう!
塩分は妊娠前と妊娠中で必要量は変わらず一日6.5gが目安です。和食が好きな日本人は塩分の摂取量が多く平均9gから10gぐらいは摂取しています。
普段から味の濃い物が好きだった方は一日6.5gの塩分は相当薄味に感じるかもしれません。しかし妊娠中の塩分管理も大切です。出汁を効かせて薄味にするように心がけましょう。
誰でもできる簡単な減塩方法は下記の記事も参考にしてみてください。
3.こんな時どうすれば?シーン別のお食事対策法
妊娠中でも外食はしたいですし、会社の付き合いで飲みにいくこともあるでしょう。最後にシーン別にお食事の選び方や対策について紹介します。
3-1会社の飲み会に参加することに・・何を食べればいい?
会社の宴会でも妊婦さんのお酒はNGです。飲み物は烏龍茶やノンアルコールビールにしておきます。周りの協力を得て禁煙にしてもらえるといいですね。
食事に関しては刺身などの生ものは避け、しっかり火を通したものを選ぶようにしましょう。
揚げ物は居酒屋では少しならOK。他には冬は鍋やおでんの大根、卵などがおすすめ。野菜とお肉の炒め物、野菜の煮びたし、雑炊なども栄養のバランスがとりやすいのでGOODです。
3-2 友達とランチする時に選ぶお店は?
お友達とランチをするときに選ぶお店は、禁煙で清潔でゆったりした場所がいいですね。和風でもイタリアンでもお互いの意見を尊重しながらお店を選べばOKです。
選ぶメニューは食中毒予防のため、刺身などの生ものやレアステーキ、生ハム、スモークサーモン、魚や肉のパテ、溶けるチーズなどを使ったメニューは避けましょう。
◆おすすめメニュー
和食:煮魚定食、焼き魚定食、しゃぶしゃぶ、キムチ鍋、納豆、卵焼き、お浸し
洋食:牛や豚のヒレ肉のソテー(中まで火が通ったもの)、魚介のパスタなど
3-3 外食でしょっぱい物を食べてしまった時はどうすればいい?
外食は味の濃い物が多いので、半日分の塩分を取っていた、なんてこともあり得ます。その場合は野菜や果物などカリウム多く含む食材を食べると塩分の排出を助けてくれます。また、夜は塩分控えめにするなどの対策をとりましょう。
※カリウムの効果や摂取方法は「今日から健康のために活用できる!カリウムの3つの効果」もご覧ください。
3-4 安上がりに済ませたいときの食材の選び方
安上がりで栄養豊富なお食事にするには、食材を買って調理するのが一番です。野菜や魚は旬のものが栄養価が高く値段も安いのでおすすめ。
お肉は切り落とし、魚は缶詰を利用すれば手間がなく安くできます。安売りで購入して作り置きを、買い物リストを作って無駄な物を買わないようにするのも節約になります。
生協やネットスーパーなどの宅配を利用すれば、スーパーで「安いから」と必要のないものを買ったり、お菓子をつられて買ったりすることが減るでしょう。
献立作りに悩んだときは、この記事を参考にレパートリーを増やしていきましょう!
まねするだけで栄養満点レシピ!妊婦さんにおすすめのレシピ11選!
3-4-1 添加物は避けた方が良い?
すぐに食べられる惣菜や加工食品は、食品衛生上の理由から調理の工程が多くなりそれだけ栄養素が少なくなっていたり添加物が使われたりすることがあります。
ただ、現在は企業努力による冷凍技術の発達などで添加物を抑えて栄養価もさほど変わらないものも登場しています。
添加物は例えば食中毒防止のため使った方がかえって安全な側面もあり、必ずしも「悪」ではありません。家庭での調理を基本にしながら加工食品も登場させるスタンスでいきましょう。
4.赤ちゃんとママにやさしくて美味しいお食事で妊娠ライフを楽しもう!
妊娠すると行動が制限され不自由な事もあると思います。食事も大好きな食べ物を控えるなどストレスに感じることもありますね。
でも10ヶ月間の辛抱です。旦那さんや両親など周りの人にたくさん協力してもらい、お腹の赤ちゃんとママのために美味しくてやさしい食事をとるようにしましょう!
【参考文献】
(*1)農林水産省 カフェインの過剰摂取について<https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html>
(*2)内閣府 食品安全委員会【読み物版】 妊娠時に特に注意すること その2<https://www.fsc.go.jp/e-mailmagazine/mailmagazine_h2801_r2.html>
(*3)厚生労働省 これからママになるあなたへ<https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/100601-1.pdf>
(*4)国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 妊娠中のハーブ製品の自己判断による摂取に注意 (Ver.150605)<https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail3009.html>
(*5)公益社団法人 日本産婦人科医会 10 妊娠中の飲酒について<https://www.jaog.or.jp/lecture/10-%E5%A6%8A%E5%A8%A0%E4%B8%AD%E3%81%AE%E9%A3%B2%E9%85%92%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/>